バンクーバー/選手村



 明日の為に眠らなければならない。

 解っていても。
 目を閉じれば鮮やかな青空に飛び出してゆく青。




「Shadow・・・are you sleeping?」

 額に触れようとする手を、寸前で捕まえた。
 急に腕を引かれたというのに、驚いたそぶりもない。

「キミの部屋はここじゃない。・・・失せろ」
「人目が気になるか。選手村だから?」
「コンディションを乱して競技に差し支えたくはない」
「所詮は遊びだ、とか言ってるクセに」

 腕を投げるように放したのに、もっと悪戯っぽくベッドに潜り込もうとする。
 ここで眠ると言うなら、ボクが彼の部屋で寝ればいい話だ。
 ため息をついて毛布を抜けようとすると、体の上に乗る勢いで抑えつけられた。

「やめろ」
「あのさ、やめろとか、ダメだ、とか、言われるともっとやりたくなるんだ」
「馬鹿なことを」

 降ってくるキスを抵抗せずに受けていると、視界には青い針のトゲが揺れる。
 この青が、バンクーバーの空に溶ける瞬間が美しかった。

「お前の・・・ショートトラック500が速くて・・・嫉妬したぜ?」
「当然だ。上に乗るな。降りろ」

 素直に従いベッドの端に、遠慮がちに丸くなる青いハリネズミ。
 嫉妬や不安は、互いに同じものを持っている。

 仕方がない。

 ボクも、彼の隣に丸くなる。
 ふたりで眠ることが、いつしか安心になっているのだから、仕方がない。

 明日も、ベストを尽くす為に。










おみやげやさんを見ていたら、ブティックの前でソニックとシャドウが出会ったよ。 とっても楽しそうにお話してたよ。とっても楽しそうに!!!

2009.11.09


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