やわらか



 ソニックに連れられ異界へ繋がる虚空を抜ければ、そこには石造りの城塞と、剣と魔法の世界があった。

 長い髪に大きな杖、足もとまで包み込むローブの女性が「おかえりなさいませ」とソニックに一礼する。
 まるでこの世界に、彼が絶対必要なパーツのように扱っていて、気に入らない。

「なんだ、また異界の者を連れてきたのか」
「その方がパーシヴァルにとっちゃ気が楽になるだろうと思ってさ」

 随分下の方から話しかけられたと思ったら、なんと剣がひとりでに動いて喋っている。
 これも魔法の力なんだろうか。
 それにしても案内も無しに、複雑な城の中を迷うことなく歩いているソニックは、確かに何度もこの場所に訪れていて世界に馴染んでいるのだろう。
 このような世界にとって、私は異分子以外の何でもないのだけれど。
 塔をひとつ上がり、ソニックが足を止めたのは大きな扉の前。
 こつこつ、と軽く、甲高い音のノックをする。

「パーシヴァル」
「…ソニック殿…今は、お会いしたくありません」

 中から聞こえてきた声に驚いた。まるで私の声ではないか。
 目を丸くしていると、ソニックは肩をすくめて苦笑する。

「慰めてやってほしいヤツってのはこの中にいる。ブレイズに似て頑固なところがあってさ、オレがこっちにいる間は絶対顔を合わせないとか言い出して、困ってるんだ」

 もう一度ノックをして、ソニックが扉を押した。カギはかかっていなかった。
 金属の軋む音がして、部屋の中の気配が動く。
 ブレイズはそっと扉の隙間から部屋の中に忍び込んだ。
 豪奢な長椅子の上に小さく膝を折りたたんで座っているのは、まるで鏡映し。

「何をしにきた、異界の者。私はそなたを必要としていない」

 拒絶。けれど、全く語気に勢いがない。死んでしまっているよう。
 考える。
 この世界はソニックを必要としている。
 そんな世界に私がいたら?
 どこにも行かせたくないと思うだろう。それを言う勇気もないくせに。

「ならば、私がソニックを元の世界へ連れ帰り、私だけのものにしてしまっても構わないのか」

 鏡映しの私が顔を上げた。
 その瞳に、ようやく炎がともる。

「そなたも、それを言う勇気などないくせに」

 どちらからともなく手を差し伸べ、鏡同士を抱きしめあう。
 やわらかな痛みに触れて、癒しあうように。

 結局私たちに、風を捕まえることなどできないのだから。






おわり。







カプとお題をくじ引きして、それを30分で料理しましょう企画。

まさかの同キャラカプですわww
根底にソニックがいるのがどうしようもないところ。


2009.09.03


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