無知
「信じられない」
灼熱の炎が城を包みながらも、震えが止まらない。
城壁はすでに半分が崩れ、今も低い地鳴りを伴う振動が足もとから這いあがってくる。
何が、彼を、王を、狂わせたのか。
剣を握りしめ生存者を捜す。
けれど、瓦礫ばかりのかつての庭には、潰れた遺体や肉片ばかりが転がっており、正常な死、戦いがあったとは到底思えない。
「…パーシヴァ…」
僅かに聞こえた呼び声。
白い石畳に魔方陣が薄い燐光で浮かび、王宮魔術師のマリーナが姿を現した。
彼女も、満身創痍の出で立ちだった。
魔法が途切れると糸の切れたマリオネットのようにぐったりと地に伏せる。
「マリーナ、これはどういうことだ。これではまるで…」
「前のアーサー王と同じ…です」
地底から闇を呼び寄せ、その黄泉の力が解放された。
それを封じるために、彼はカリバーンと共に挑んだのだ。
「王は、敗れました。自らを制する力を闇に奪われたのです」
白い竜巻が瓦礫を巻き上げ始めた。
赤い稲妻が未だ残る塔に次々と落ちてゆく。
パーシヴァルが見上げた空を、黒い槍が引き裂いてゆく。
「王よ! ソニック殿! 私は信じない! あなたはこの国を滅ぼす者ではなかったはずだ!」
パーシヴァルの叫びが届いたのだろう。
黒い槍が上空にぴたりと止まる。
いつもの、優しく、慈悲に満ちた、自由の王は、昏い闇を背負って、パーシヴァルを見下ろしている。
「私は知っている。あなたが、どれほど人を、民を、仲間を愛しておられるか」
「残念だ。パーシヴァル」
空から降ってきた言葉は、生きている者の心を凍りつかせた。
「オレの、真実なんて、誰も」
笑っている。けれど、こんな悲しい微笑みをパーシヴァルは今まで見たことがなかった。
消えてゆく意識の中、パーシヴァルは思い知る。
死して、王のそばに侍ることで、王が癒されるのであればそれでいい。
真実の孤独は、彼が背負っている。
知らずにいた。
知らずに…。
おわり。
カプとお題をくじ引きして、それを30分で料理しましょう企画。
前後とか、他の騎士とか、どうなってるんでしょうかね。?
考えてませんおww
2009.09.03
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