melt
マズーリのヴィレッジで、ダークガイアの神殿まで続くサバンナの話を子どもたちが話してくれた。
ゾウの群れを操る方法。
キリンの集まる木。
パイソンの捕らえ方。
今年のライオンの子どもがどこで育っているか。
「サバンナにはトラはいないんだっけ?」
「トラ? どうして、ソニック」
「昔、サバンナに住むトラの絵本を読んだことがあってさ」
興味津津な子どもたちとチップに、ソニックはそのお話を語った。
新しい服、傘、靴を買ってもらった少年がトラに出会ってしまい、食べられないように、それらをトラに与えてしまう。
丸裸になって泣いていると、トラは戦利品を奪い合って木の周りをぐるぐるぐるぐる走り出した。
そのすきに少年は自分の持ち物を取り返した。
トラは溶けてバターになってしまい、少年と家族がホットケーキにして食べてしまう。
「大きな木なら、神殿の近くにもあるよね、ソニック」
「ああ、あったな。トラップにひっかかるとぐるぐる回っちまう」
「ソニックも溶けてバターになっちゃう?」
「そうなったら、チップがホットケーキにして食っちまうか?」
チップとソニック、マズーリの子どもたちも、一斉に笑った。
翌日。
昼ごろ、ソニックの姿が見えなくなった。
ヴィレッジの子どもたちと、カーケオの実を集めて遊んでたチップが、ソニックを探して神殿の近くまでやってくると。
さわさわと揺れる大きな木の前に、ソニックの靴と、靴下と、手袋が落ちていた。
「チ、チップは、ソニックを食べてないよ!?」
ビックリして小さな羽根を羽ばたかせ、ヴィレッジへ飛んで行ってしまった。
その巨木の上。
寄り添ってうごめく、青と黒。
乾季のサバンナなのに、互いに離れる唇から洩れる呼気と身体から染み出す汗で、水たまりができてしまいそうだ。
「今のは何だ?」
「さーてね。オレが溶けて無くなっちまったと思ったんじゃないか」
「ふん。ある意味、間違ってはいないな」
直射日光がふたりを焼いて、溶けあう場所の熱も上がりっぱなしだ。
神殿の極秘調査に来たシャドウがソニックを見つけ、木の周りを追いかけっこしたのはソニックの遊びの延長だった。
今は、もうそんなことも言ってられないけれど。
「シャド…お前も靴と靴下と手袋、落とせよ」
「懐かしいお伽だな。溶けたキミはボクが食べていいんだろうか?」
また、木がざわざわと揺れた。
風もないのに。
おわる
セレクターは■!!(かなりしくじった)
2009.07.29
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