水を撒く。
 明るい日差しを受け、キラキラ光る小さな花たち。
 高原のゆるやかな風を受けて、長い茎をゆらゆら揺らす。

 今日はソニックの誕生日。
 私には、何もできないけれど。



+ + + ラベンダー + + +



 以前、小さなウサギの少女が、私の頭に花冠を乗せてくれた。
 シロツメクサで作られた、ティアラのように小さな、でも美しい冠。

「何故、これを私に?」

 そう尋ねると、彼女は彼女の友達のチャオと手をつないでくるくる回って。

「だいすきなひとにあげるんです!」

 それがさも当然と笑う。

「ソニックさんにもあげてきました!とっても似合ってたんですよ!」

 なんだか可笑しかった。
 あのソニックがどんな顔で花冠を頭に乗せたのだろう。
 そして、切なくなった。
 同じ花冠を戴きながら、一日でしおれてしまう。

 それでも、ひとときでも、彼が王で、私が女王であれたのが、うれしかった。




 高原に花の苗を植えた。たくさん、たくさん、植えた。
 それに水を撒いて、大切に育てた。
 手を貸してくれようとした者は多かったが、この花は私が育てたかったのだ。

 今、一面に広がる、紫。

 ざざあ、と強い風が吹いた。
 私は振り返らずに、花に水を撒き続ける。

「皇女さまの趣味が土いじりになったってウワサを聞いたんだけど、本当だったんだ」
「花束をプレゼントしてくれる相手がいないのでな」

 軽口をたたき合って、互いに笑う。
 私は水を撒く手を止めて、程よく花が咲いたそのひとつをぷちんと千切って、風の主に差しだした。

「誕生日だというのに、これくらいしか渡せるものがない」

 彼の手が、小さな紫を私の手からさらってゆく。

「Thanks, Blaze! ...amazing...Amazing!」

 甘い香りの中を駆けてゆく。
 風が吹いて、あたり一面の紫がいっせいに揺れた。

 そうだ、私は、紫色の草原を駆ける彼の姿が見たかったのだ。
 私には花を育てることしかできないけれど。

 せめて、この景色をソニック・ザ・ヘッジホッグへ。






おしまい





my脳内ソニックは狡い男ですよwwwww
何気ない態度ですが、実は大喜びです。嬉しいに決まってる。
紫の中にソニックを閉じ込めたブレイズも結構な独占欲ですよね。
こんな、駆け引きっぽい話が大好きです♪

2009.06.23


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