Spicy Lover



 ソニックが元気ないのよね。どっかで疲れる冒険でもやってんのかしら。
 見かけたら声かけてあげてね。
 今度また極甘シュークリーム作ってあげるって言っておいて。
 もっちろん、シャドウも一緒に食べにきてね!



 一気にまくし立ててエミーが跳ねるように駆けてゆく。
 久し振りのオフにふらりと街に出てみれば、出会う顔見知りが次々と「ソニックが変だ」と告げてゆく。
 だからボクにどうしろというのだろう。
 確かに、ナックルズが言っていた「タピオカ入りココナッツミルクをカブ飲みした」とか、ルージュが言っていた「特大チョコクリーム練乳イチゴ超甘抹茶アイスパフェを奢ってやった」とか、尋常ではないけれど。

 溜息ひとつ。
 何故かボクには彼がいそうな場所がわかる。
 真白な石タイルが敷き詰められた公園、噴水近くのベンチに、青空から落ちた一滴の青が、故郷を見つめるがごとくぼんやりと空を見ている。

「何をしている」
「…hey, Shadow. 久し振りな気がするな」
「確かに妙だな」

 ベンチに深く腰掛けたまま挨拶など、普段の彼ではありえない。
 無気力というヤツか。
 甘いものばかり食べてるという話だが、食欲がないというわけでもない。
 病気か、見えない場所を怪我でもしたか?拒否されるまえに、ささっとソニックの身体に触れて、体温や皮膚の感触を確かめる。
 すると。

 ごっごごー。

 腹に触れてる時に、空腹を訴える音が響く。
 どうしたというのだ。腹が減っているのなら、こんなところでぼんやりしていなくても!

「公園の入り口にチリドッグの屋台があった。買ってくる」
「だ、だ、めだ、シャドウ!あの屋台は、ダメなんだ…!」

 すがるようにボクにまとわりついて、地を這うソニック。☆rz' こんな感じで。
 少々大袈裟だが、芝居という雰囲気ではない。

「キミの好物で、しかもあの屋台が最高だと言ってただろう?」
「…それが、最近、屋台のオヤジがバイトを雇ってさ…そいつが作るチリドッグが……う、ううっ」
「口に合わなかったのか。…泣くことはないだろう!?」
「この際だから、バイト君が成長するまでチリドッグ断ちをして、次に食べるチリドッグを最高の味だと思えるように…してたんだ。でも、もう、限界、かも」

 納得した。
 バカバカし過ぎる。

「わかった。ボクも協力してやろう。明治屋へ寄って極上クリームとフルーツセットを買う。昨日、マリア直伝のカラメルプリンとカスタードケーキを仕込んでおいた。もうそろそろ食べごろだ」

 ソニックを助け起こして、眼のふちに溜まった涙を指でぬぐってやる。
 その悲しそうな目はどこの悲劇のヒロインだと思いっきりツッコみたい。
 あまりのバカバカしさに、ボクも調子に乗って、ひとつだけキスを貰う。

「ああそうだ。パン屋でドッグパンも買って帰ろう。いいチョリソーがあるんだが。辛党じゃないボクでも辛旨かったな。サルサソースにパラペーニョを刻んで上からたっぷり…」
「シャドウ!!シャドウ、あ、愛してるー!!!」

 ギュウギュウ抱きついてくるソニックを、やれやれという気分で抱き返してやった。
 キミが愛してるのはチリドッグじゃないのか?
 というツッコミは今は心にしまっておこう。

 好きなものを断ってガマンして、というのはわからないでもないから。
 ボクが久しぶりにソニックに会えて嬉しい気持ちと、きっと似ているから。







くだらないまま、おわり。






「明治屋(MEIDI-YA)」って食材選ぶの燃えますな!
最近行ってないなあ。

2009.05.02


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