Titan Knight
−いらっしゃい−
そう、いつも聞こえるハズの声が今日は無かった。
代わりにそこにいたのは、冑を外した太陽の騎士。
「ソニックじゃねーか。ココの店主は留守だぜ?」
「へえ、珍しいな。鉱山で見つけた石の鑑定頼みたかったのに」
カウンターに黒光りする小石を並べていると、ガウェインは小馬鹿にしたように笑う。
「絶対ただの石ころだ」
「水晶谷で拾ったんだぜ!…って、ガウェインが鍛冶屋にいるって珍しいよな」
「おまえなぁ。このブラックスミスの店がどういうモンかわかってんのか?キャメロットで一番の鍛冶屋ってゆーことは、この国で一番の鍛冶屋ってことだぜ」
「Oh, I see! 納得した」
確かに。あの容貌なら「この世界イチの鍛冶屋」で間違いがない。
「しかし妙だな。店主が留守なら表の看板くらい閉じていくんじゃないか?」
「あ、おい!」
ガウェインの制止を聞き流しつつ、カウンターの中にもぐりこむ。内側の低い壁に行儀よく並んだ武具の中に、磨きあげられたガウェインの双剣ガラティンもある。
「お客さん、聖剣はもっと大事に扱ってくださいね」
「ほほう。国王辞めて鍛冶屋に転職かよ」
カウンターごしに剣の受け渡しをしつつ軽口をたたき合う。
すると。
店の奥の工房へと続く開きっぱなしの戸口からすうっと冷たい風が動いて、二人の長いトゲを小さく揺らした。
普段の工房から漏れる空気は炉の熱で熱いはずだ。
目線を合わせて、直後、ソニックが工房へ飛び込み、一瞬遅れてガウェインも続く。
「な、…どーなってんだ!?」
二人は、大穴の空いた天井から降り注ぐキャメロットの陽光に目を細めた。
改めて工房を見まわす。主の几帳面な性格を表すように、鍛冶の素材が棚に並んでいる。剣やガントレット、スコップにツルハシまで。装飾だけではない意味を持つ宝石の類も美しく磨かれている。
けれど。何かが足りない。もっとたくさん、鑑定してもらってたはず。
「これは…外からの攻撃じゃないな。工房の中から何かが飛び出したって感じだ。これくらいの大きさの…?」
壊れた屋根を調べていたガウェインが、何か大きなものを抱えるようなしぐさをする。
「何かが飛び出すったって、ロケットじゃあるまいし…。って、ああっ!呪われたシリーズが無い!」
部屋中をもう一度ぐるりと見渡す。黄泉の騎士と戦うと時々手に入る呪われたロングソードやら冑やらその他モロモロ、かなりの量を鑑定してもらってた。店主の性格的に、鍛冶に使えないものでも綺麗に整頓されているはずだ。なのに、工房にはひとつもそれは残っていない。
「じゃ、ナニか?鍛冶屋は呪われた武具で"ろけっと"ってヤツを作って飛んでったってことか?」
「ロケットかどうかはわかんねえけど…。なあ、武具についた呪いってどうやって祓うんだ?」
「武具ぐらいなら、昇りたての朝日を当てるっていうのが一般的だな」
朝日の当たる場所…。貴婦人の湖や西の森は、朝霧が立ち込める。鉱山の街は谷にあるから地平線から望める朝日は無いだろう。この工房はキャメロットの城壁の内側だから、騎士になって歩哨にでも上がらない限り最初の朝日は拝めない。
ならば、緑の草原。
「タイタニックプレーン…ストーンヘンジか」
「鍛冶屋が石の遺跡へ行ったってのか?…飛んで?」
「あの鍛冶屋なら、飛んで行ってもおかしくない…と思う」
いや、きっと飛んで行った。
床を蹴って屋根の大穴から工房の外へ飛び出す。できるだけ高く飛んで、城壁の向こうに見えたのは、湾の先、若草色に輝く土地。
「おいこらっ!オレ様も一緒に行ってやるから待てー!」
一瞬遅れて、ガウェインが続く。
「とりゃっ!はあっ!たあっ!」
「もっと確実に倒さんか!いつまでもヒヨッコかあ?」
「んなこと言ったって、数が多すぎる!」
草原からは黄泉の騎士が湧いて出る。
中世暗黒時代と呼ばれるこの世界よりずっと以前から、この場所が戦いの舞台になってたことの証。
それでも緑の大地を求めて民は集まる。牧草地帯としては十分な場所なのだ。
…争いさえなければ。
「囲まれたぞ、ソニック!」
正面の槍兵にまごつく間に、重装兵が鎧の重みを知らない高さまでジャンプした。
ガードが間に合わない!
「どけぇ!ワイルドメテオ!」
弧を描いてガウェインの双剣が舞う。数十の黄泉の騎士が、一瞬にして浄化の光に消えてゆく。
「すげー。その技面白いな!オレにも教えろよ」
「コラ!私を投げるツモリか!?」
カリバーンとの漫才にも慣れてきたガウェインは遠慮なく笑ってから、吹き抜ける草原の風を嗅ぐようにあたりを見回す。
「多い、よな。数日前にも来たけど、これほどじゃなかった」
「何か異変が、って、やっぱ鍛冶屋かあ?」
「鍛冶屋も心配だが、民も気になる。集落へ寄る」
今度はガウェインがわずかに先に立って走る。途中、何度も黄泉の騎士に遭遇したが、二人がかりで全て一掃する。残さず倒してしまえば、しばらくは出てこないはずなのだ。
不思議な石柱が貼りつく斜面の影に、やはり古代の人の手で作られた洞窟があり、そこへ飛びこむやいなや隠れていた子供が「騎士様!」と声を上げた。
「とまあ、この場合の騎士様ってのは、オレじゃないんだよなあ」
「仕方ないだろう。お前と円卓の騎士では比較にならん。…ん?」
集落の民と話しているガウェインから離れてカリバーンとぼやきあっていると、何故か人々の視線が自分に集中している。
疑問を口にする前に、ガウェインの朗々とした声が、洞窟中に響いた。
「こちらは風の騎士ソニック。円卓の騎士、そしてこの国の民の上に立つお方だ。以後、見知りおけ」
「ちょ、待てガウェイン!」
膝をついたガウェインに倣って、集落の民も次々と膝をつく。こういうのは馴れない。絶対馴れない。
たじろいで、一歩下がったところで、ガウェインの肩が小刻みに震えているのが見えた。
わ、笑ってる!?
「やめろ!ガウェインの石頭バカ!」
「んだとぉ!?石頭って言うなバカ!」
バカの応酬に子供らが爆笑している間に、二人で洞窟の集落を飛び出した。
ガウェインが笑ってたのも、みんな気付いてたようだし、結局王の威厳もあったもんじゃない。面倒なイタズラにため息を落としそうになって、
「鍛冶屋の行方が分かった」
剣を抜いたガウェインが指した方角は、落ちかけた陽の反対側。ここよりさらに北東。
やはり石舞台か。
その日の朝のこと。何かよくわからない金属でできた円筒形のカタマリが草原に降ってきた。
山羊たちはその時点で危険を察知して逃げたらしいが、山羊飼いは降ってきたカタマリが気になってしばらく見てたそうな。
すると中から子狐の影が飛び出して、カチンカチンとカタマリを叩くと巨大な騎士の形に変わった。ボコボコと地面から黄泉の騎士が湧きだして、巨大なヤツの周りに群がった…とこまでは見たという。
「それが、砦の停車場に行ったらしーぜ」
「確かあそこは無人だろ?」
「結界の石碑より向こうはトロールに渡してやったけどな」
すっかり日暮れて、蒼黒い夜空に浮かぶ白い月が草原に硬質な影を作る。
剣を振るうたび、蛍光を散らして大蜘蛛が消える。
あとひとつ、斜面を下れば砦に着く。
「めんどくせぇ」
「ぼやくな」
即ツッコミのカリバーンにため息しか出ない。
砦なんかぶっ壊して、罪人を運ぶ車も燃やすか壊すかしてしまえばいい。そう何度か提案したのに、円卓の騎士たちもマリーナも首を縦に振らなかった。この国を亜人種から守るために砦は絶対に必要らしい。車を壊すことは了承があったけれど、今はキャメロット近くの復興て手一杯で、工兵を回せない。
なので、無人のまま放置された砦の車は、黄泉の騎士で溢れかえっているに違いない。
「ん?変だな。ヤツらがいないぞ?」
カリバーンを支えに急斜面を滑り降りて、砦の影の闇に目を凝らす。
ガウェインの指摘の意味がわかる。いつもなら停車場の前には10体ほどの黄泉の騎士がいる。はず、なのに、今夜はすでに誰かが一掃してしまったように、何も湧いてこない。
慎重にあたりを調べてみると、草を丸くなぎ倒した跡が点々と砦の奥へ続いている。
「ミステリーサークルじゃないよな。足跡か、やっぱり」
「こんなデカいの、一体何の足跡だってんだ。…お、うおおおお!?」
驚愕の声を上げるガウェインが見つめる先、月明かりにもくっきり見えたのは、巨大な護送車のめちゃくちゃに壊れた残骸。ソニックやガウェインが黄泉の騎士と戦った程度ではほとんど壊れることはなかった堅牢な構造物だったのに。他にトロールが捕らわれていた大きな檻もくしゃくしゃに丸まって転がっている。
唖然と立ち止まった二人に、今度は重い金属が擦れ合うような音が直撃する。続いて、ずずん、ずずん、と地震を伴う破壊音。
丸い足跡をたどって再び走ると、探すまでもなく…。
「いたぞ、ソニック」
「おいおい…あんなのと戦えないぞ、カリバーン」
小山ほどのサイズの巨人が護送車を揺らしている。余程の力で掴んでいるのか、ガタガタ動かすと中央部分から歪んで、ついにはへし折れてしまった。
あんなのと戦闘になるのは、非常にマズい気がする。
「ん? あれは…ブラックスミス!」
…なのに、状況は簡単には収まらない予感。
ガウェインが巨人に向かって飛び出した。確かに巨人の鼻先に鍛冶屋がいる。
「おいコラ待て、ガウェイン!あんなデカいヤツを一体どーするツモリだ!?」
「オレが知るかよ!とにかくアイツを小突いて隙を作る!ソニックは鍛冶屋を助けてやってくれ!」
それだけ言うと、ガウェインはガラティンを振りまわして巨人の足元をコツコツ叩いている。…いや、ちゃんと戦ってるんだが、あまりの大きさの差に戯れているようにしか見えない。
鍛冶屋は、というと、巨人の頭付近で何かわあわあ叫んでるようだが、もう少し近寄らないと何を言ってるのかサッパリだ。
「行くしかないか」
「鍛冶屋が邪悪な魔法に操られてなければいいがな」
「ヤなこと言うなよ、聖剣さま」
瓦礫になった護送車を駆け上がる。
横倒しになった車輪を掴んで速度に勢いをつけ、崩れた牢獄を足場に飛び越え、鉄条網をバネ代わりに踏みつけ、着地点に巨人の頭を定めて、高く高く舞い上がる。
ふと、さっきのカリバーンの一言が気になって、大声で呼びかけた。
「鍛冶屋ー!おまえ、何やってんだ!?」
「あ、騎士さま!いらっしゃい!じゃなくてこんばんは、ですね」
2本の尾で器用に空を飛ぶ鍛冶屋は、やっぱりいつもの鍛冶屋で、操られている雰囲気などなさそうだ。
そうでなければ…元の世界の彼なら…?
「もしかして、この巨人はお前が操ってるのか?」
「操るってほど細かな命令は出せないんですが…。そうだ、お願いです、ガウェイン様を止めてください!」
はるか下方、巨人の大足に踏み潰されそうになるのを必死で逃げて、懸命にコツコツ攻撃してるガウェインがいる。ここから見てもやっぱりどうにも焼け石に水状態。
「このコは攻撃された相手の力を吸収してしまうんです!このままだとガウェイン様も」
「Really!? そいつはちょっとマズいな」
「攻撃をやめれば、このコも動きを止めます!」
「All right! 後でちゃんと理由を聞かせろよ!」
「信じるのか!?」
カリバーンの慎重な忠告は無視。まあ、止まるというなら、止めなければ、ガウェインもかなりヤバそうだ。
ふと、新技を思いついて、剣の柄を握ったままブンブン振りまわす。
「ま、まさか、・・・」
「そのまさか、さ! いっけー!ワイルドカリバーン!」
「なーげーるーなーぁぁぁ・・・」
カリバーンの悲鳴は、石頭との衝突音…カーン!と響いた…で消え、巨人もガウェインを踏みつぶそうとあげた足を静かに草むらへ下した。
「…残念。カリバーンは飛んで戻ってこないか」
「あ…あはは。ありがとうございます。風の騎士さま」
鍛冶屋がにっこり笑って、草原へ飛んで降りてゆく。
危険は無い様子だ。巨人のなめらかな甲冑の線を滑り降りて、鍛冶屋の隣に立つ。
「お騒がせして申し訳ございませんでした。夜明けが近くなりましたので石の遺跡へ向かいながら、お話いたしましょう」
鍛冶屋がお辞儀をすると、同じように、巨人も腰を折るように頭を下げた。
「ボクが小さな頃、マーリン様から呪いの話を聞きました。呪いというものは願いにとてもよく似たものだから、恐れずにその声に耳を傾けなさいって」
「マーリンって言うと、マリーナのじいさん、だっけ?」
「すごいジジイだったぞ。遠くの山からでっけー石を魔法で飛ばしてきて、あの遺跡を作っちまった」
「Great!! って、二人ともマーリンのことは知ってるのか」
トロール並みに育った鍛冶屋の巨人の肩に乗って運ばれる。月明かりに光る草原にミステリーサークルの足跡をつけながら。
黄泉の騎士は殆ど出ない。現れても、この巨人がふっと手で撫でると吸い取って消えてしまう。
「最近、工房に呪いのかかった武具が増えてきて、少しずつ祓ってたんだけど間に合わなくて、いっそのことボクの願いをその武具にかけてみようかなって試してみたんだ」
「そりゃ呪いの上からさらに呪いをかけたよーなモンだろが」
「もう、ガウェインは黙っててよ」
「…仲良し」
目を丸くしてツッコミを入れると、照れ笑いする鍛冶屋の頭をガウェインが軽く小突く。
「ガキの頃、同じ片田舎にいたんだよ。鍛冶屋としちゃあ腕がいいから、オレ様がキャメロットに連れていってやったんだ!」
「幼馴染みたいなモンか。…ガウェインがブラックスミスはこの国で一番の鍛冶屋だって言ってたぞ」
「ホント?風の騎士さま」
「だー!言うなバカソニック!つーか、コイツのこと騎士サマなんて呼ばなくていいぞ!」
頬を真っ赤にして怒るガウェインに、褒められるとすごくうれしそうな鍛冶屋と。
似てるようで、違う、でも同じくらい大切な仲間同士になれる。
胸の奥に痛いような熱いような想いが湧いて、それを悟られないように笑顔で振り払う。
「そんで?この巨人にかけた願いって何なんだ?」
「それは、風の騎士ソニック、あなたの願いと同じです」
鍛冶屋は左手を胸に当てて軽く礼をする。ここが揺れる巨人の肩の上でなければ膝をついたかもしれない。
「ボクはだたの鍛冶屋だけど、ボクに剣を預けてくれる騎士のひととなりのことはよくわかるよ。ソニック、あなたは今まで会った誰よりも、生きてゆくことに執着してる。その想いを呪われた武具、死と絶望で存在してるモノにかけてみたんだ」
「正反対の性質をかけて、相殺したってコトか?」
「そのとおり!」
いとも簡単そうに言うけれど、こんなことができる鍛冶屋はブラックスミスただ一人だろう。
「武具についた呪いって死んでしまった人の絶望から生まれてるからね。呪いを願いに変じてみると、生きることになるのかなーって思ったんだ。武具を鍛冶打ちながら、闇の力を祓うのではなく、聖なる力を得てもう一度生きたくないかな?って願ったんだ」
「確かにコイツからは邪気がしないな」
「ガウェインはよく確かめないで攻撃したじゃない」
「デカさに驚いたんだよ!オマエが捕まってるみたいに見えたし」
「最初は小さかったんだよ!ひと抱えくらいだったかな。最終的には石の遺跡で朝日に当てなきゃいけなかったから、移動用に推進装置をつけてみたら大ジャンプしちゃったんだ、この子」
「やっぱりロケットだったのか…」
キャメロットにある鍛冶屋の屋根を突き破って、この草原まで飛んできたんだ。この物語の世界でそんなの作れるの?とも思うけど、 この鍛冶屋なら作ってても全然不思議じゃない気がする。
「なんでこんな山みたいにデカくなったんだよ」
「生きたいって願うこの子の力かな?黄泉の騎士に攻撃されると呪われた力を吸い取っちゃうんだ。まだ小さいうちは草原の黄泉の騎士を刺激しちゃって、逃げ回るうちに砦に入っちゃって、そしたらだんだん大きくなっちゃって、こんな風に」
「砦の護送車を壊したのはオマエがコイツに頼んでくれたんだろう? Thanks!」
「あはは。ちょっと前にカリバーンがボヤいてたのを聞いちゃったからね」
ずずん、ずずん、と響いていた巨人の足音が、ごん、と硬いものを踏んで止まった。
草原の真ん中、はるかな昔から霊的な力が集まるスポットに、円く組み上げられた不思議な石柱群。
夜明け前の薄明かりに、黒々とその姿を現した。
巨人は三人を肩から下ろし、東に向けて膝をついた。まるで、騎士のように。
「もうすぐお別れだね」
こんな、大きな、巨きな、願いを作り上げた鍛冶屋は、つとめて明るい声で言う。
満足だろう。けれど、痛みのない別れなんて、どこにもない。
右から太陽の騎士、左からは風の騎士が、小柄な鍛冶屋を支えて、立つ。
「朝になると消えてしまうもの、か」
ガウェインがぽつり呟く。
蒼の空、地平線近くに朱がにじみだす。
「消えない」
強く、確信を込めて、ソニックが告げる。
「願いは消えない。そうだろ?」
「うん。そうだね」
全ての邪気を払う、朝の閃光が草原を駆け抜けた。
巨人は、銀色の光になって空へ昇っていった。
「いらっしゃい」
「よぅ!これ、頼むぜ!」
カウンターの上にズラリと並べられた小石に、店主は思わず苦笑する。
「鑑定だよね。どこで拾ってきたの?」
「Crystal Cave! 白っぽいのより黒い方がイイモノがあるんだろ?」
光に透かしてみたり、ルーペで拡大してみたり、ひとつずつ手に取って丁寧に鑑定してゆく。というか、持ち込み主の期待度が高くて、適当な鑑定はできない。
しばらくして、できたのは二つの山。
「黒雲母と角閃石だね」
「それってどーゆー価値があるんだ?」
「小石だ、ただの小石!!」
見物していたガウェインがゲラゲラ笑う。がっくり崩れるソニックを鍛冶屋が明るく励ます。
「竜眼石は滅多に出ないんだけど、地道に探せばきっと見つかるよ」
奥の工房を覗いてガウェインが唸る。大きく開いていた穴はきれいな円形に加工され、外側からフタをされた状態になってる。
「工房の屋根はアレでいいのか?」
「うん。また飛び出しちゃうかもしれないからね」
「お前、懲りないなあ。また石の遺跡まで飛ぶのかよ」
「あ、石の遺跡で見つけたヤツもあったんだ!」
新たな鑑定物の発見に元気を取り戻したソニックが、ゴソゴソと出してきたのは銀色のかたまり。
ごとん、と重たげな音に、鍛冶屋が興味深く覗きこむ。
「どーせ小石並みの何かの破片だろ?」
「絶対、珍しい金属だって!」
カウンターの前で頭を突き合わせる二人の騎士を前に、店主ブラックスミスが瞳を輝かせた。
これならきっと、この二人に似合うモノができる…。
おわり。
途中までガウェインかっこよかったんだけどなあ。笑
2009.04.13
--- ブラウザ・BACKでお戻りください。 ---