ランスロット:シャドウ
パーシヴァル:ブレイズ
ガウェイン:ナックルズ
ガラハッド:シルバー ランスロットの子で円卓の最後の椅子を埋めた騎士。彼が円卓の騎士に叙されてから王国は次第に傾き始める。





Nightless Knights



 ささやかな宴の最中に、風の騎士殿は眠気を催したと、召使に伴われ早々に席を外した。
 酒が合わなかったということもないだろう。ガウェインなど幼い姫君方と陽気に歌いだしている。

 小さな砦は戦略的にも価値は薄く、黄泉の騎士団に隠れて休息を取るにはもってこいの場所だ。
 かつてランスロットが国中を旅した時、呪われた怪物に襲われていたこの砦を救った縁で、今もよしなにしてもらっているそうだ。

 ワインをグラスに注ぎ、しかし口をつけるでもなく、温かな喧噪を眺める。

「退屈そうだな、パーシヴァル」

 酔気がぱっと散る。
 武人の出で立ちはそのままに、だが、冑を外してその表情まで見せることは、彼にしては珍しい。

「いや。この穏やかな場所に身を置いているのが、たいそう不思議な気分なのだ。殺気漂わぬランスロット殿を拝見するのも久方振りだ」

 空いたグラスに深紅の液体を注ぎ尊敬する黒衣の騎士に渡すと、思わず見惚れるような所作でそれを飲み干す。

「相変わらずお強い。今宵またあなたの英雄譚をお聞かせ願えますか?」
「貴卿が聞きたいのは僕の話ではなく、風の騎士の話だろう?振られたな」
「それはお互い様だろう」

 ランスロットの真似をして杯を空けようとするが、一息に飲むには私には多すぎた。半分を超えたあたりで、酒精の強さに咽喉が焼けてむせてしまった。なのに、ランスロットは私のグラスに酒を注ぎ足し、自らも杯を重ねる。
 自棄酒か、無礼を酔いのせいにするためか。彼はどれほど飲んでも酔いを纏うことがないのだけれど。

「あの騎士に想いは伝えぬのか」

 そらきた。口元に笑みを浮かべてしまう。
 色恋沙汰にも百戦錬磨なランスロットのこと。隠していても意味はない。
 宴の席だ、忘れて貰える。

「別の世界の方だ。いずれはここを去られる」
「高潔だな、卿は」

 そう、私に色恋などあり得ない。
 この想いは忠義ではないとわかっていても。

「ランスロット殿やガウェイン殿と同じ円卓に席を置けるのは、私が騎士だから。ソニック殿も同じだ」
「騎士でなければ、届けられる想いもあるだろうに」
「そうだな…いや、違う。それでも私は、共に剣を取る騎士でありたい」

 恋することを許される姫であったとしたら、死地に飛びこんでゆく風の騎士に焦がれ、狂い死んでしまうだろう。
 ならば、想いを封じても、近くお傍に居たい。それができるならば、私は騎士で構わない。

「同じことを言ったヤツがいたな」
「フフッ…。ガラハッド卿は御息災か」
「今ならば、アレの言葉の真意も貴卿に届いていると思うのだが」

 胸の奥に燈る炎に手を当て、頷く。
 私のソニックへの想いと、ガラハッドが私に向けてくれる想いは同じもの。
 ランスロットは普段ガラハッドを酷く無下に扱うのに、時に私にこんな話を向けてくる。その想いもまたいとおしい。

「ならば、ガラハッド卿には私の高潔に付き合ってもらおう」

 これが私の恋の形なのだ。
 酒杯に口をつける。そのまますっと咽喉を滑り落ちるものは、先ほどよりも甘く柔らかいものに変わっていた。

 杯を干して再び宴に目を向けると、ガウェインと踊っていた幼姫が小さなあくびを漏らしたので、歌は終わりになったようだ。
 ざわざわと皆が酒や食事に戻る中、つぅ、と私とガウェインの視線が合った。すると、彼は小ぶりな酒樽を掴んで、駈けるように私たちの元へ来た。

「おい、お前ら!今からソニックの部屋に突撃カマすから一緒に来い!」
「ソニック殿は既にお休みだと…」
「オレはアイツの話を聞きてーんだよ!ランスロットの話は聞き飽きたからな」
「ガウェインだけで行けばいいだろう?」
「…お前もアイツの話を聞きたいクセに」

 沈黙したランスロットの首根っこを掴んで引き摺る。引き摺られながらランスロットは私の手首を掴む。
 ガウェインは騎士二人を引き摺って、客室のドアが並ぶ廊下で叫んだ。

「どこだあ!風の騎士ー!出てきやがれ!」
「ひとりで勝手に先に寝るなど、新米騎士には許されぬぞ!ヒヨッコ・ザ・ヘッジホッグ!」
「ひ、ひよっこ?」

 自棄気味に追従するランスロットにも驚いた。
 けれど、時にはこんな穏やかな円卓の騎士も悪くない。
 程無く、すぐ近くのドアが勢いよく開く。

「うるせぇ!ひよっこって言うな!」

 そんな科白と青い衝撃が、私たち3人の騎士を同時に打った。






おわり。






ブレイズさんは暗黒の騎士が「はじめまして」です。
よくわからんのですが、こんな感じ?<ムービー見てなんとなく

中世暗黒時代の騎士さま方は、冒険話が大好きです。
ランスロットなど、語る話のために冒険に行くという本末転倒ップリ。

ソニキャラはみんな未成年ですが、円卓の騎士はみんなオッサンなので、こんな話になりました。未成年お酒飲んじゃダメですよ♪

2009.03.18


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