彼がSWAにいなかった理由〜シャドウ編
数か月ぶりの休暇に帰路を急いでいると、家のドアまであとわずかというところでソニックが転がっていた。
驚いて立ち止まると、くたりと力の抜けたその体を抱き起こす。
呼吸は深く正常、傷は擦過傷程度のものが顔や手足に数か所。
走って走って走り疲れて、走りながら気を失って転倒、というところか。
あと20メートル意識が保っていられれば…せめてドアの内側で倒れていて欲しかった。
肩に腕をまわして抱え上げ、家に入ってすぐのソファーに転がした。よほど眠りが深いのか、目覚める気配がない。けれど、怪我の具合を見れば、かなりの時間さっきの場所で倒れていたのがわかる。
タオルを熱めの湯に浸して強く絞り、泥と埃に汚れた顔を拭いてやると、やっとぱちりと目を開く。
「WaWa! What!? Why??」
「それはこっちのセリフだ。おとなしくしていろ」
一瞬、ソニックは身を固くしたが、余程疲れているのかすぐに全身を弛緩させる。何度かタオルを代えて全身を拭き上げてゆくと、腕に見慣れないリングがあることに気付いた。それが何なのか気にはなったが、軽く触れるだけにしておいた。
次第に目が覚めてきたのか、ソニックはもの言いたそうにしている。こちらから促すようなことはしない。放っておけばせっかちな方から喋り出す。
「なあシャドウ、今まで何してたわけ?」
「今まで、とは何のことだ」
「この星が割れちまってから、元に戻るまでの間!」
イライラと眉間のしわを深くしているソニックだが、ふんと鼻で笑ってやる。
「キミがドクターと遊んでくると言って出掛けたのではなかったのか。ボクが集めていたカオスエメラルドも一緒に持っていった。そうだろう?」
「Wow...そうだったっけ?」
「とぼける気か?」
必死で目をそらそうとするソニック。
「宇宙に上がった先で何が起こったのかは大体見当がつくが、その結果、星が割れてしまったとしても、それはキミの責任だ」
「だから、俺のこと探そうともしなかった?」
「カオスエメラルドの反応も消えてしまって、探す手段もなくなった。それにボクが何かを手伝う必要は感じなかったな。なにしろ、カオスエメラルドを持たないボクは、その力も使えない。ただの究極生命体だ。ただの。よく覚えておけ、ソニック」
一気に畳み掛けると、ソニックの耳がゆっくり前に垂れ下がる。少しは反省しているようだ。
「キミは気楽に冒険を続けていたようだが?」
「気楽ってほどでもなかったけどな。夜には姿が変わったりしてさ」
「夜、か。GUNが、いや、ボクが、夜の現象にどれほど手を焼いたか、キミは知る由もないだろう。毎夜、毎夜、暴動だったんだぞ」
あの星が割れた日以来、夜になると多くの人間が性格を変えた。GUNという組織の性質上、他人を傷つけたトラウマで泣き叫ぶ程度ならまだよかった、刹那的に綱紀が緩んで命令系統はガタガタ、上層部へのクーデターやら、悲嘆が突き抜けて集団自殺やら、さまざまな事変を未遂で食い止める為に夜ごとに奔走していた。
星が元の姿に戻りようやく人々も落着きを取り戻して、やっと帰ってきたというのに。
元凶のソニックが家の前で転がっているなんて、どういう冗談だ。
「おかげでここ数か月、夜の間に休息をとれたことは一度もない。すっかり夜型生活だ。これもキミが責任を取ってくれるんだろうな?」
怒気を滲ませながら言い放ち、ソファーに押しつけるようにしてキスをする。乾いたくちびるを舐めるだけで薄く色がつく。
「何故すぐにボクのところへ来なかった? 確かにカオスエメラルドを持たないボクはキミにとって無力かもしれない。でも、キミは」
腕の中の身体を抱きしめて、その背に触れて、細い首筋を滑り、頭のトゲも梳いてやる。官能を呼ぶようなやり方ではなく、ひとつずつ、指に当たる感触を確かめる。
「Sorry... 夜のオレは、ちょっとシャドウには見せたくなくてさ」
「壊れた星から生まれた闇…キミはその一番近くまで行った、そうだろう?」
「平気だった。光がいつもそばにいたからな」
ソニックは腕のリングを撫でる。いとおしそうに、想い出を懐かしむように、笑う。
チラチラと視線をボクに向けるのは、明らかな挑発。でもまだ乗ってやらない。
一番危険な場所でずっと戦い続けていたはずだ。
そのリングと?あるいはそのリングの持ち主と。
「それは、光の形見か」
表情が一変した。
ピンと糸を張ったような緊張、口元には笑みを湛えたまま、瞳は戦いを挑むように。でも、その緑の色に水膜が張ったのを見逃せなかった。
何故か、ボクの胸も、痛む。
「キミがここへ何をしに来たのか、理解した」
今度はやさしく口づける。舌先で突けば簡単にソニックの口腔へ侵入できる。口の中は熱く乾いていたけれど、癒すように舌を絡めれば徐々に甘い唾液で満ちてくる。それをソニックはこくりと飲み下す。
口を離すと互いの舌から銀の糸が繋がって、ぷつりと切れた。
挑発的に胸を、足を開いて、普段の姿からは想像もできないような艶をかもしだす。
「シャドウとえっちなことがしたくて来たんだ」
違う。泣きたくてここへ来た。声をあげて、泣くために。それを誤魔化すために。
「それならボクがやりたいことと同じだ」
今まで普通の顔をして、GUNで激務をしていたことが信じられないくらい飢えていた。
ソニックの白い短毛が覆う下腹をなでまわすと、雄の印が浮き上がる。ケモノが咬みつくように、ボクはそれを口に含む。
深いため息が聞こえた。
まだ腹をまさぐっていた手を少し上に向けて胸のあたりを探ると、やわらかな毛の中に小さく引っかかるものを見つけ、それを何度も指先でつぶす。
「yeah, Shadow... それ、きもちいーぜ…」
ボクの口の中にあるものも質量を増す。脈打ちながらこぼれる蜜を指ですくって、後穴に触れる。
「硬いな。誰ともしなかったのか」
「そんなヨユーどこにあるんだよ…んん…、痛くするなよ」
「努力する」
蜜とボクの唾液を混ぜて指を湿らせ、少しずつ奥へ潜る。快楽に忠実な身体は、行為が久し振りであってもすぐに勘を取り戻し、身を委ねてくる。
ソニックの胸をいじっていた手をはずし、ボク自身の雄に触れる。もう、自分でも驚くほど、怒張して震えている。
「すまない、ソニック。いれる」
「ん、謝るなよ。いれていい、から、そのかわり」
「優しくする」
「No. 違う、いっぱい、イかせろ」
わかった、と返事をするのももどかしい。ぐいと秘部を開かせると、後ろに覗く尖った尾も待ちわびるように背に反ってゆく。
指で解すうちに赤く熟れたそこに、ボクは自分の屹立を押し当てた。濡れた呼吸に合わせて、中へ割り入らせる。
「シャド…おまえ、大きすぎ…るう!」
軽口を封じるように、前立腺の裏側をかすめて一気に奥へ突き入れた。
苦しげな呻きも、ソニックを飾る艶にしか思えない。ガタガタとソファーを揺らして、ソニックの中を犯してゆく。
「ぁは、あああ、も、もっと、きつ、いぁああっ」
「きついのか、ソニック」
こくこくと頷くけれど、手加減なしに責め続けると、やがて痛みから快感を拾って、嬌声を上げ始める。
口元はだらしなく開いて唾液をこぼし、細く開いた瞳には水膜が掛かっている。
「シャドウ、シャ、あ、イ、イキそ…」
「そう、か。じゃあ、こう、しよう」
キツめに中の善がる部分を突いてやると、何度目かにソニックの身体が硬く緊張する。その瞬間、高く天を向いた雄の根元をぐっと握りしめた。
行き場をなくした力が出口を求めて暴れ出す。困惑にこれ以上なく頬を赤くしたソニックが身をよじって逃げようとする。
「やめ、押さえるなあっ!」
「この方が何度でもイケるんだろう?」
「ば、かやろ!あ、あああああ!」
叫び声と一緒に、やっと涙が一筋落ちた。もっと、流せ。
暴れる身体を押さえつける。片足だけを高く上げさせてさらに深く突き入れる。
「い、いま、イッたから、止まれ!止まってくれ」
「ダメだ。ボクもキミも出してない」
「ぃやっ、うぅ…!!!! シャ、シャドウ…!ま、た、くる…!!!たすけ」
根元を押えたまま、突き上げを繰り返すと、その絶頂に終わりは来ない。目隠しされたまま激しくうねる波に流されて、 高い位置から突き落とされ続ける、そんな感覚。
ソニックの中もきゅうと締まる。ボクの芯に痛いほどの快感を与えてくれる。
「あ、ああーー!!…うぅ、くるっち、まいそー…っは、あ、くぅっ…!」
ボクから溢れる体液が中をうるおして結合を楽にする。互いの呼気もぬるく交わる。
嬌声もかすれるほどの快楽を与えたくて、ことさらゆっくり動くと、落差の不安に切なさがにじみ出す。
誰にも、本当はボクにも見せたくはない不安を、涙と一緒に押し流してしまえばいい。
「ボクはずっとそばにいる」
「シャ…ド…」
「いつでも、存在を確かめさせてやる」
ソニックは何度も瞬きをして涙で見えない目を洗う。もう、何も追いつかない。
無意識にボクの腕を、腕にある制御装置に触れて、何か言う。
いやだ、と言っている。
幻のようにボクを見ている。
限界だ、キミもボクも。
抑えていた指の戒めを解いてやると、ソニックの先端からも熱い涙があふれてくる。後ろの秘口まで涙水はこぼれて、つながりはさらに潤滑になった。ガツガツとむさぼるように、深い場所をえぐる。何度も、強く。
「ソニック、…ソニック! ボクはここにいる、必ずっ!変わらず、キミのそばに!」
「ああああーーっ、あ、ャド…ウゥ…! う、んんっ……!!」
もう悲鳴も上がらない。
ボクが熱いソニックに包まれながら、欲望を吐き出すのと同時に、トクトクと、ソニックからも熱いものが滴り落ちた。
とろん、と溶けるようにソニックが沈む。
失神してゆくキミに、あいしているとつぶやくのは、無駄なことだろうか。
今度こそ、ソニックは完全に熟睡してしまった。後処理ともう一度身体をきれいに拭いて、ベッドで寝かせてやる。
あどけない寝顔は見ていて飽きることがない。
自分でもあきれるほどソニックを見つめていると、無邪気な寝返りでそっぽを向かれてしまったので、ボクもシャワーを浴びて身綺麗にした。
ドライタオルの繊維をハリに引っかけないよう身体に滑らせつつ、キッチンの冷蔵庫を開けると…当然だが何もない。かろうじて、ずいぶん前に買っていたジンジャーエールが1本、未開封で残っていた。
開栓して一口飲む。冷たい炭酸のあと、ジンジャーの風味がのどを温める。
カサリと部屋の気配が動いた。ベッドの上でソニックがあくびと伸びをしている。
「ソニック」
名を呼んで、手の中の瓶を放り投げる。ぱし、と音を立てて、それはソニックの手に収まった。
「Thanks! て、バカ!炭酸投げるヤツがあるかよっ!」
くつくつと笑い、噴き出す泡に苦労しながら残りを飲み干す。
「シャドウ、さっき、の、アレから何もしてねえの?」
「意識のない人形とセックスするのは好きじゃない」
ベッドへ歩み寄ると、ボクにぎゅうと抱きついてくる。
「シャドウはオレのことよくわかってるんだけどさ、オレも結構シャドウのことわかってると思うぜ?」
ソニックはまだ楽しそうに笑っている。
「な、シャドウ、淋しかった?」
続きそうなおしゃべりをキスでふさぐ。
…当たり前だ、そんなこと。
眠れなかった夜の責任は、まだまだ取ってもらう。
おわり。
や、やっちまった…!
ナコの話がとってもサワヤカ〜〜♪だったのに、なぜ??
あ。
擬音語(ぴちゃぴちゃとか、ぐちゃぐちゃとか、ネトネトとか?)
を書いてないのはわざとです。
きっと行間に書いてありますから読み取ってください。笑
2009.02.14
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