※
騎士の国はホグワーツの国!と思ったトコからどどどっと書いたネタ。
He is WEREHOG
ガシャン
天窓が割れて、砕けたガラスが室内に降り注ぐ。
読んでいた薬に関する魔道書から目を離し、黒く淀んだ空を見据える。
青い風が見えた、と思った瞬間、青は部屋の中に飛び込んでくる。
「good-evening,Shadow」
「…全く。何度あの窓に修復の呪文をかけさせるつもりだ、君は」
怒っても反省の色など全くない。それどころかニコニコと笑っていたりする。
何をしにきたか、などと聞く必要もない。
今夜は満月。空には重い雲が広がってはいるけれど。
「襲いに来たのさ。スリザリンの監督生を」
「いいだろう。君など所詮僕の犬だと教えてやろう」
互いに羽織ったローブの隙間へ指を滑らせる。生身の温かな体に触れながら抱擁と挑むようなキス。
靴の下でガラスのカケラが細かく砕けてゆく。
侵入者のローブをはぎ取ろうとして、その手を抑えられる。
「何故だ、ソニック。今更隠すものでもないだろう」
「今夜は、見せたくない。明かりも全部消してくれ」
手あたり次第に本を投げつけ、燭台もランプも全部消してしまう。本当に真っ暗になって、こんな深すぎる闇では何もできないと、僕は杖の先に明かりを灯す。
手の中には、まだいつもどおりの青い針鼠がいる。
「僕はたとえ君が狼に変身しようとも、変わらずに愛せると誓えるが」
杖灯りのまぶしさに目を細めているのか、別の理由か。
(侵入者自身は心底幸せを噛みしめていたのだが、それは部屋の主には伝わらず。)
ふわりと預けられていた体重が軽くなる。
彼の視線は、入ってきた天窓へ移っていた。追うと、雲の色がうす青に光って見えた。空が晴れ始めている。
「sorry,ここまでだ」
「禁じられた森へ行くのか」
「俺はお前に正体を見られたくないからな。…もう、二度と」
頬に軽く触れるキスを残して、入ってきた時同様、文字通り風のようにその姿は天窓の外に消えた。
「see you」
それだけ言うと、もう気配もない。彼の箒の技術は魔法学校1,2を争うからだ。急ぎ、森へ向かって飛んだのだろう。
いつだってそうだ。
満月の夜、こんな風に会いに来るのは別れの予感を打ち消す為に。
そして引き留められないのは、僕が未だ彼の秘密を支え切れないからだ。
叫びの部屋で、彼は自らを鎖につないでいた。
月の光を浴びて姿を変え、狂っていた。
危険を承知で、狼になった彼に会いに行ったのだ。
思い上がりだった。僕が抱きしめてやれば正気に戻ると。
情けない話だ。
気付けば朝、僕も彼も傷だらけで、ボロ雑巾のようになっていた。
僕を抱きしめて泣く彼に、かけてやる言葉も出てこなかった。
ダークガイアの呪いを解くその秘密を、僕はまだ見つけられない。
青白い月光がしんと静まった部屋に満ちる。
溜息を一つ落として、僕は壊された灯りたちに修復の呪文をかけてゆく。
最後に天窓に魔法をかけようとして、耳を澄ます。
狼の遠吠えが聞きたくて。
おしまい。
ソニックはグリフィンドールのクィディッチチームでシーカーなんだよ♪
2009.01.29
--- ブラウザ・BACKでお戻りください。 ---