思わず見惚れてしまったんだ。
 空を舞うその姿に。

「珍しいな。ウィルがバスケの試合を見てるなんて」
「チームコーチの友達が出てるんだろ? なんだ、ベルブリッジ負けてんじゃん」

 サッカーのチームメイトたちと一緒に覗き込んだ小さな液晶画面には、ローカルテレビ局が中継しているバスケの試合。
 確か大学のリーグ戦で、この中の数名がプロチームにスカウトされるという噂。
 その中にひとり、大きな体というほどではないのに、素晴らしく滞空時間の長い選手がいる。

「この人、も、プロに行くのかな?」
「え? コイツって歌手と噂になったヤツだろ?」

 あ、それは聞いたことがある。
 C.シンクレアとデビューのときから付き合ってるとかって。
 いや、それが問題なんじゃなくて、いやいや、アイドル独り占めはモンダイだと思うけれど。

「また飛んだ」
「すげーな」

 感嘆の声、それは当然だろう。
 でも。
 ウィルには別種の興奮が湧き上がる。

 彼、E.エドワーズは空を飛べる。僕と同じように。




2008.06.05