月虹 2.0

























 互いに深く絡む舌、呼吸も奪い合う。
 頭の中が甘く痺れて、体が崩れ落ちそうになるのを、ソーマの腕が支えてくれた。

「ソー マ?」

 ぼくを膝で立たせて、軽くついばむキスをして、それから、金色の髪が下の方へ降りていく。
 ソーマの指がぼくの服の中、背中、脇あたりを這って、くすぐったさを広げて熱を集めていく。腰まで滑って、戸惑いなくぼくのズボンを引き下ろした。
 そこは、かしずくようなソーマの、息が当たって痛いほど。

「いいか?」
「うん、…でも、」

 ぼくを見上げる瞳に欲情がちらついて、ぞくぞくする。
 ちらりと覗いた舌が、先端に触れ、くびれを探り、ぞろりと舐めあげる。
 ぼくの問いかけは宙に浮く。
 滴り落ちる雫をていねいに舐め取る音が、どきどきする鼓動よりも高く響く。

「ん…、きもち、いいよ、ソーマぁ…」

 しっとり濡れた唇が、ぼくをそのまま包み込む。
 中で、くすぐられて、吸い上げられて、どんどんふくらんでいく。
 金の髪が前に後ろに揺れ、ソーマの咽がこくりと動くだけで達してしまいそうになって、懸命に気をそらす。
 ふと、ソーマの足が崩れそうになってることに気付いて、重そうなコートを外して払う。現れたのは白い尻と膝の辺りでかたまったズボンと。
 ぼくと大差ない恰好。
 けど、決定的に違う。

「ソーマ、自分でしてる?」

 唇でぼくをむさぼって、指で受け入れる場所を。
 唇と同じ動きで指を動かして、深く咥え込んで、水音で吐息を消して。

 耐え切れないよ。

 張り詰めるぼくに応えるようにきつく吸うから、そのまま放つ。
 全部、ソーマの口腔に出てしまってから、脱力した。
 荒い息のままぺたりと座り込むと、ソーマの額に滲んだ汗が月光にきらきら光った。

「どうして…?急ぎすぎじゃない?」
「うん、ごめん。…待ちきれない」

 顔を見られたくないのか、ぼくの肩にこつんと額を乗せる。息が詰まって苦しいの?
 ソーマは指の戯れをやめられない。
 ぼくが、追いかけてそこに触れると、ああ、と、悲鳴に近い吐息。
 ぼくの指もそこに行きたがる。呼吸を合わせて、吐くタイミングでゆっくりと、ソーマの指に沿わせて深く沈める。
 押し広げるように動かして、力を奪って柔らかく解してあげる。傷つけないように。

「だいじょうぶ?」
「…ん、やっぱり、おまえじゃないと、ダメだな」
「それって、他の人ともしたって意味?」

 答えるかわりにくすくす笑う。

「デューク?」
「わかってるんなら聞くな」
「…よかった?」
「ちっとも」
「よかった」

 指をそっと引き抜くと、すがるようにソーマは身を振るわせた。
 服を全部剥ぎ取ると、月明かりに浮かび上がる白い躯。
 冷たい土の上に横たえて、腕に鎖骨あたりに胸に腹に、次々と花を散らしていく。ふたつの尖りを舌先で転がすと、ソーマの指が、爪を立ててぼくの髪に絡む。

「きもちいい?…痛い?」
「い、いたくても、いい…、は……、好きにして、いいからっ…おまえの」

 ぼくの焦らすクセを知ってるから、だよね。
 もう、ソーマのものも堅く充血してて、先端から蜜を溢れさせている。

「いいよ。いかせてあげる」

 ソーマみたいにうまくできないけど、真似上手になれば喜んでくれるかな。
 舐めたり、咥えたりして、口の中に蜜と唾液がいっぱいになって、蜜が零れ落ちる。根元からしごいている手があっという間にベタベタになる。

「…あっ…はぁっ…も、…もう、いい!」

 痙攣が始まる。

「ポポ、もういいっ!…ぅああっ……」

 逃がしたくなかった。ぼくも、ソーマを飲んでみたかった。
 けど。

「う…けほっ!こほっ!…なんでっ!?」
「ふ…ぅ…無理、するからだ」
「何の味かな?…うーん、青い実のどんぐり?」
「そんなもの、食べたことあるのか?」
「無いけど。きっとそんな味。ちょっと、苦い…」

 息を整えたソーマが、ぼくを引き寄せて、またキス。ぼくの舌に残った青い味を洗ってくれる。
 夜気は随分冷えてきたのに、ソーマの躯は熱を持ったまま。薄い膜みたいな汗も、柔らかく温かい。

 唇を離す。糸が落ちる。

「…ポポ……」

 ぼくを見つめる瞳は、切実だった。
 足を開いて、ぼくを迎えてくれる。ひくひく震えてるそこに、もう指はいらない。
 先端が触れて、ソーマの吐息が艶を増した。

「…ふっ…う、待ってた…ずっと…」
「ぼくと、したかった?」
「おく…まで、いれろっ」
「ちから抜いて…。そぉ、溶けそうなくらい、熱いよ」
「はぁ…っ……お前、大きくなった?」
「だとしたら、ソーマのせいだよ」

 一番奥まで進んで、少し戻って、優しく突く。また戻って、突いて、次第に強く。

「…あっ、ああっ!…うっんっ!…はっ、はあっ!も、…もっと」
「もっと?」
「うっ…んっ!!…もっ…」

 しどけなく、快楽に沈んでいくソーマをもっと見ていたいから、焦らそうかと思ったけど。

「つながってる…、ほら、見てソーマ…ねっ…んんっ!」
「ぁああっ!…は、やぁっ…!!ふかっ…いいっ!」
「ぜんぶっ…ぼくをあげるっから!……はぁっ…つぁっ!!」

 堪えきれずに漏れる嬌声に、ぼくも夢中になる。

「ソーマぁ…ぼく、もういっていい?」
「う…う、んっ!!は、…はやくっ」
「中、でもいい?」
「ふぁ……んっ…ポ、ポ」

 答えの代わりに、きゅっと締め付けられる。
 とても心地よくて。
 放つ熱がソーマにしみこんでいく。
 追いかけて、ぼくたちの間にあるソーマのものからも、熱い飛沫がはじけた。






 疲れた。
 力が抜けて、ソーマの上に被さって寝転がる。
 重なって、乱した息が少しずつ整って、早鐘みたいな心音も少しずつ元にもどる。

「ありがと」
「何言ってるの?ソーマ」
「可笑しいか?」
「大好きって、言って」

 すぅっと目を閉じて、笑う。
 言葉ではなかなかくれない気持ち。だけど、心はいつもぼくの傍にいてくれる。
 大切な…。

「もうすぐ輝きの森だな」
「うん」
「お前も、俺も、光にならない。絶対」
「うん…全部終わったら、また、しようね?」

 クスッと笑って、ぼくの髪を梳いてくれる。
 少し濡れてきてるのは、汗かな、夜露かな。

 ふわふわした時間。
 ほんの少し、言葉を閉ざしてると、ソーマはまた遠い目になってる。

「ソーマ、また月を見てるでしょ?」
「お前、簡単だなぁ…」
「何が」

 ソーマの瞳の中に映る月は、虹を纏ってきれいだった。
 これからぼくが見る月は、いつでもソーマの瞳の中の月がいい。

「…もう一回、する?」
「…する」

 唇を寄せると、瞳の中の月はぼくに代わった。




おわり。















無駄にがんばった!ような気がする!!
発電。ビビビビビビ。(変な人>自分)

読んでくださってありがとうございます。
さびしんぼうなので、
「読んでやったぞ」拍手でも押してくだされば狂喜乱舞します。

2006.06.12


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