ECHO



途中から夢だと気付いてた。
でも止められなくて、みんながいなくなっちゃうのが震えるほど恐くて、最後にソーマが消えてからも、ぼくは闇に残る光の粒を呆然と追いかけていた。

「ポポ」

肩を揺すられ、潜めた声が届く。
汗が一気に体を冷やして、ぎゅん、と現実の薄闇に戻ってきた。

「大丈夫か?」
「…ありがと、ソーマ。また変な夢、見ちゃった」

この間もちょっと言ったから、きっと憶えてるよね。
みんながいなくなって、ぼく一人ぼっちになって。

「オレはどこにも行かないって言っただろ?」
「うん」

乾いた布が降ってくる。
額と首筋の汗を拭いてそのままぼぉっとしていると、ソーマは自分の鞄から水筒を取り出した。

「水」
「うん。・・・飲ませて、ソーマ」

甘えてみると、ソーマはちょっとだけ怒った顔をして、それから水筒の水を口に含んだ。
薄闇が、ソーマの影でまた暗くなる。
温かな唇、温かな水、ぼくの口に入ってくる。
そっと、舌先を伸ばしてソーマの唇に触れると、ソーマの舌は少し迷ってからぼくに絡んだ。

ソーマのキスは言葉よりもずっと正直。
まるで勝ち負けを決めなきゃいけないみたいに絡むくせに、ぼくが絡むと急に優しくなる。
ぼくのこと、好き?

「…ん…ポポ、おまえ…どうして」
「…いやだ。もっと」

離れたくなくて、ソーマの首に腕を絡める。
ソーマの力が弱くなって、体重が心地よく胸にかかる。

「おまえの考えてることなんて、わかってるんだ」

湿った吐息が嬉しかった。
ぼくは、ソーマの、ピアスのついてない方の耳に優しく歯を立てた。

「オレはどこにもいかない。おまえを一人ぼっちにはしない」

こぼれて落ちる涙を、ソーマが唇でそっとすくってくれた。




おしまい。



ポポはソーマが好きでしゃーないんですわ。
そんで意地悪すんの。ガキっぽ。(笑)

2006.04.17


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