穏やかな日差し、高い空、心地よい風。
 何もかも忘れて、ただ笑って旅が続けられたら。




失楽園





 ひととき眠って、ぽっかり浮き上がるように目覚めると、太陽の位置はそんなに変わっていなかった。
 パムもセランもチビキングもよく眠っている。
 その向こうにいたはずのポポの姿が無く、ソーマはドキリとする。
 ひとりでどこかへ行ってしまうなんて。誰かに連れ去られたのかも。
 騒ぐ胸を押さえて、ポポの姿を探した。
 草むら、花陰、そして、

 ぱしゃん

 水音は透明な池から聞こえた。そっと覗くと探していた赤い頭。

「ここにいたのか」
「わっ!・・・ソーマ、覗き?」
「そんなわけないだろ」

 ポポがクスクス笑う。泳ぐのも随分上手くなった。
 細く小さな身体に溢れる生命力。ソーマはぼんやりと見惚れていた。

「ソーマ、一緒に泳ごう」

 ばしゃん。
 ポポが思いっきり水を跳ねかすと、ソーマの服はびしょぬれ。

「おまえ、やりすぎ・・・」
「ごめんっ!でも、服が乾くまで」

 仕方がない、苦笑に似たため息を漏らして、ソーマは濡れた服を風にさらした。
 水に飛び込むと、ポポが嬉しそうについてくる。
 しばらく他愛もなく遊んで、池の真ん中にぽつんと残った蓮の葉に上がる。

「疲れた?」
「全然。ポポ、背中に傷がある」
「ああ、どうりでなんだかヒリヒリすると思ってた・・・ってソーマ!?」

 薄い皮膚が剥けた赤い筋をソーマが舐めた。

「昨日、ソーマが引っかいた痕だよ。そして、こっちはぼくがつけた痕」

 腕に残った赤い鬱血の上にポポがキスを落とす。
 情事の名残に新しい熱が燈る。

「する?」

 あまりに直接的なソーマの誘いに、ポポが目を瞬かせる。
 その驚きはソーマを満足させた。

「うそ。夢みたい」
「嫌なら夢で終わっても構わないぞ」
「違うって。現実の方がいい」

 じゃれてもつれているうちに、蓮の花影に倒れこんだ。

「今みたいな時がずっと続くんなら、俺の全部、おまえにやる」
「うん。大好き、ソーマ」



 本当は、予感があったのだ。
 ふたりは楽園にいられないのだ、と。




おわる。



とうとう落ちました。あはははー。(滝汗)
タイトル同名の小説も映画もドラマもよんでませーんみてませーん。

2006.04.28


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