願っても届かないのなら、自分で手に入れるしかなかった。




覚醒





「何を考えてるの?」
「ギラファ、のことを」
「ムシキングとどっちが勝つのか、って?」

 深夜、仲間たちが眠る頃になると、ソーマがテントを抜け出してポポが後を追う。
 ただ追いかけているわけではなく、ソーマが重いため息を落としたり考え込んでいるのがポポにはたまらなくなるから。
 なんとかソーマの力になりたいと思っても、いつも何も言えず仕舞い。

「ぼくって、無力だよね」
「おまえには証の力とムシキングがいるだろう?」
「ぼくの力じゃないよ」
「おまえの力だ」

 ポポは力を肯定されて、照れ笑いをこぼす。そのままソーマに軽く口付けた。

「旅の途中で光になりそうになったら」
「きっとムシキングが助けてくれるよ」
「おまえがそう願うから、だろう」

 ポポの指がソーマの服の内側に侵入する。最初の冷たさに耐えると、くすぐったさよりも痺れる甘さにソーマは息を詰める。
 流されたくないのか、流された方が楽なのか、自分でもよくわからないまま。

「俺が願えば、おまえのことも手に入るのか」
「ソーマが願うんだったら、ね」
「じゃあそんなのいらない。おまえなんて、ギラファに切り裂かれてしまえばいい」

 願うだけで手に入るものなんて、やっぱりいらない。
 憎まれ口にソーマの身体を弄う指先が、胸の小石をきつく潰す。

「ギラファのこと、言わないで。もう忘れてよ」
「ポポ、おまえ、妬いてる?」
「寒くないように、コートに入れて。ね?」

 愛し方も甘え方も、ポポがくれる分しか知らない。
 願えば際限なく与えてくれるとわかっていても、手にしてしまうのが恐かった。

「性質が悪い」

 ギラファよりも。
 言いかけた言葉を、ソーマはポポの唇に移した。




おわる。



だんだんらぶらぶになってきました。

2006.04.27


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