ぬくぬく
今日はありがとうね、ゆっくりおやすみ。
フラウさんの潜めた声が聞こえて扉が閉まった。
また、母さんを思い出す。
あったかくて、きもちいい、陽だまりみたいな場所。
眠れそうにないわけじゃなかったけど、急に雲が出てその場所が日陰になったみたいな寂しさが溢れて、ポポはとうとう起き上がった。
壊れた屋根の隙間から流れる光が見えて、ため息まで漏れてしまう。
「いろいろあって疲れてるはずだ。明日発つんだろ?」
隣のベッドから、やけにはっきりした声がする。全然眠そうじゃない。
「お母さんって、みんな同じなのかな?優しくて、あったかくて」
「・・・俺には、よくわからないから」
ソーマには懐かしくなるような、切なくなるような、そんな思いが無い。
だからといって、ポポのため息が甘えだと突き放すこともできなかった。
「考えてた。俺も、かあさんのこと。どんな人だったか」
考えないとわからない愛情、そんなのもつらい。
ポポの胸をまたすかすかした日陰の気分が通り過ぎた。
あたたかい場所が恋しかった。
「ソーマ、一緒に寝よ」
「え?な、何言って・・・」
ソーマが抵抗する間も無く、ポポはソーマのベッドに乗り込んできて、毛布も半分占領してしまった。
「あったかい、ソーマ」
「おまえな」
「お母さんみたいにあったかいよ」
ポポにぎゅっと抱きしめられて、一瞬緊張したけれど次第にソーマの力が抜けていく。
他人の温もりが心地よいなんて、ソーマは初めて知った気分だった。
「俺がお母さんだったら、おまえの言うあったかいお母さんがわからないだろ?」
「じゃあ、ぼくがお父さん」
よくわからない。
けど、なんとなくソーマは笑ってしまい、ポポも一緒に笑った。
同じ温もりの中にいたら、やっとふたりにも緩いまどろみが訪れた。
先に、ソーマの意識が落ちて、ポポも追いかけながら、ふと思い出した。
「父さんが母さんにしてた、よく眠れるおまじない」
ポポは口付けひとつ、掠め取った。
おーしーまーい。
同衾!どうきんっ!!
無抵抗!!(笑)
2006.04.20
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