「なんで、笑ってるの?」
「おまえが泣いてるからだ」
やさしい微笑み。風に誘われて、つぼみがふくらむように。
今まで、何度も君の笑顔を見たけれど、今までとは違う。
「おまえは泣いてばかりだな。それを弱いからだと思ってた。けど、違うんだな」
「ぼくは弱いよ。みんなが助けてくれるから、今まで旅してこられたんだ」
また笑う。今度のはいつもの、ぼくの見当違いをバカにする声だ。
ムッとする。最後の涙がこぼれて、波が引いていく。
ぽすぽす。頭を軽く叩かれた。「ごめん」と言いながら。
ともだちなんだから、子供扱いしないで欲しいのに、手が温かくて止める気にならない。
「おまえは泣いていいんだ。雨みたいに、土にしみて花を咲かせる、そんな涙だ」
ああ、わかった、種が芽吹くときと同じだ。
ぼくの涙がきみの笑顔を咲かせてる。でもそれは同じ意味だ。
「一緒に泣いてくれないの?」
「ばか。収拾つかないだろ」
悲しくて、淋しくて、辛くて、苦しくて、悔しくて、
一緒に泣くかわりに、笑ってくれる?
「おまえは弱くない。仲間がいる。おれも最後まで一緒に行く」
「うん。みんなが一緒なら、ぼくも強くなれる」
そっと、肩にもたれてみると、静かな静かな呼吸に、別の涙が溢れてくる。
ぼくらは生きてる。
「泣きむし」
微笑みをともなうつぶやきが落ちた。
24.泣きむし
ソーマが自分以外の誰かの為に笑えたら。
2006.08.10
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