私が欲しかったものはいったいなんだったんだろう。
いつか聞いた愛の言葉を、もう一度だけ聞きたかった。

デューク、あなただけだった。
幼い頃から、蝶とだけに心を通わせていた私は、森の民は奇異の目を向けた。
あなただけが、私を恐れなかった。
あなただけが、私を抱きしめてくれた。

デュークは強かった。
旅をしていたときも、私を守り、森の民を守っていた。
もっと強い力を得る為に、私の力を欲していたことも、知っていた。
けれど、そんなことはどうでもよかった。
ただ、愛していると言ってくれたから。


ソーマ、おまえだけなんだよ。
私たちが森の民として生き、僅かな幸福を支えてくれた存在。
おまえだけが、私の愛を望んでくれた。
おまえだけが、私の腕に飛び込んでくれた。

ソーマは優しかった。
デュークがいなくなっても、その理由を聞きたがりはしなかった。
おかあさんのそばにはぼくがいるから。
涙をこらえて、笑ってたっけね。

おまえが笑顔を失くしたのは、私のせいだね。
母親らしいこと、何もしてやれなくて、ごめんね。


本当のことを知りたくなかった。
どんなに一緒に時を過ごしても、あの頃には帰れない。

私たちは、もう家族じゃなくなった。




23.真実




それでも、チョークは幸せだったと。

2006.04.13


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