幹をぎゅっと抱きしめると、脈打つ音がする。
太陽が昇る前、空が真っ白になるとき、コナラの林は甘酸っぱい匂いが立ち込める。
「樹液、見つかりそう?」
「うん。この森はまだ元気だよ」
歩きながら、下草を切っておく。若い木はちょっとムリして曲げておく。
美味しい樹液がたくさん出るように。
けど、ここには世話をする森の民がいない。虫も少ない。
森は、森の民と虫たちの帰りを待っている。
すこし前を歩いてるソーマは、セランと一緒にアザミの棘についた朝露を集めてる。
「ソーマは蝶みたい」
「え?どうして?」
「美味しい水をよく知ってるから」
セランは甘くて花粉の多い花を見つけるのが上手。バラクキバチのタマゴから生まれたから?
ソーマは水を探すのが上手。風を読むのも上手。確かに蝶みたい。
じゃあ、ぼくは?
やっぱり、あれかな?
瘤の多いクヌギを見つけた。
抱きしめてみると、力強く脈打つ音が聞こえる。
「この上にいっぱい樹液が出てるよ。採ってくるね」
「ポポは」
「カブトムシみたい?」
手を差し伸べると、パムはにっこり笑ってぼくに掴まった。
14.樹液
カブトムシは夜に樹液飲むんだってば。
ポポはまだまだちっちゃいから朝の樹液。(笑)
2006.04.03
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