約束を交わしたあの日は昨日のことのように思い出すことができる。
琥珀の中に入った小さな甲虫は、必ず我らの種子をもう一度ソラへと運ぶ。

「我らは故郷の星を忘れない」

証を握りしめ、友が去る。

「我らはこの星に故郷を彩ろう」

船の技術者たちは後に遺跡と呼ばれるものを数多作り出す。

「我らは仮初めの命が十分に輝きを取り戻すのを見守ろう」

船の娘は我らの目となり、耳となり、感覚になった。

「私はここに残ろう。我らの願いが届くときまでこの船を守ろう」

この星に散った友は、幾度も光に変わり、幾度も誕生した。
けれど、ここでは故郷以上の進化を、我らは遂げることができない。

そして、永劫かと思われる時を過ごし、船は旅立ちを迎えようとしている。
証を継ぐ者は、あの日の約束を憶えてはいなかった。
証を持つ者は、あの日の約束を叶えようとはしない。

導く者よ、私の、我が友の嘆きが聞こえぬか。
森の守護者よ、我らの願いを導きたまえ。



12.導き



アダーさまも大好きだ!!

2006.04.01


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