「ソーマさまとセランはおんなじですね」

故郷の村を出て、まっすぐ前だけを見つめています。
ソーマの肩につかまりながら、涙の理由を考えてたらそう思いました。

「違うよ、セラン。セランはひとりなんかじゃない」
「同じです。羽の生えた森の民なんてわたしひとりです」
「じゃあ、きっとオレにもそのうち羽が生えるかもな。黒いのが」
「アゲハみたいな羽ならキレイですね」

やっと少しだけ、笑ってくれました。

特別な子供。
特別な扱い。
愛されていることはわかります。
けれど、それはとても淋しいことです。

「帰れない。あそこには、もう」

愛していたからこそ、愛されていたからこそ。

「ほんとうの、オレの居場所はどこにある?」

太陽がオーロラに揺らめいて、往く道さえもわかりません。
セランもソーマさまと一緒に、行ってもいいですか?

涙の理由は大切にしまっておきます。




07.大切



セランちゃんもソーマさまもひとりぼっち。

2006.03.27


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