このお話は、
栞お父さん、虎太郎お母さん、長男朔也、次男一真、三男始、四男睦月
という農場一家のパラレルもイイトコなヤツです。
ま、許してやろうという心の広い方だけドウゾ。
テストザネイション
「ただいまー!!」
「ただ・・・」
次男一真と長男朔也が帰宅して玄関ドアをくぐったところで、リビングから響く歓声に互いに顔を見合わせた。
「・・・何やってんの?」
「あ、おかえりー!今みんなでiQテストやってたんだよ」
いつもニコニコ顔のコタお母さんがオレンジ色のシートを帰ってきた二人に見せた。
「おかしい!ゼッタイおかしい!」
「おかしくなんかないって!俺いっちばん!!」
栞お父さんは燃え上がりそうなほどシートをにらみつけていて、四男睦月がえんぴつを指先でくるくる回しながらはしゃいでいる。
「iQテストってアタマの良し悪しがわかるのかな?」
「必ずしもそうじゃない、一真。毎年変化するってヤツだな」
「へぇ〜俺もやってみたかったな〜」
栞お父さんが一真の言葉にピクリと反応する。
「一真もやろう!朔也も!」
「「え!?」」
「そう言うと思ってビデオ撮ってたんだ〜」
睦月が二人をテレビの真正面のソファに並んで座らせて、ピコピコリモコンを操作する。
栞お父さんの手には、ブランク解答用紙。
「マジ?するの??」
地雷踏んで焦りまくってる一真と、くっだらねー!とばかりに睦月からえんぴつを奪った朔也。
♪ちゃ〜〜ちゃららららっ
鳴り響く番組テーマ曲。
イキナリ始まる問題、CM飛ばされるので絶え間なく回答していくことになる二人・・・。
4〜6問ずつの回答が終わると、栞お父さん・コタお母さん・睦月が、朔也と一真の解答用紙を覗き込んできゃーきゃー騒ぐ。
「こら睦月、お前の点数教えろよ」
たまらず一真が一番立場の弱い弟にツッコミ。
「全部終わるまで言いたくない。」
「なんで!?」
「俺の点数聞いたら、兄さんたちショック受けるよ?」
「ということは120位だろ?高校生なら当たり前だな」
朔也の冷静なツッコミに今度は睦月が黙り込む番。
家の前にバイクが止まる音がして、この家の三男が帰って来る。
リビングの扉を開いて入ってきた始が、部屋の真ん中でオレンジ色の紙を手に手に集まった家族を見て一瞬怯んだ。
「ふ。くだらない」
万年反抗期の始なので、それくらいの暴言は当たり前なのだが、その前に見せた一瞬の焦りを父母はともかく兄弟たちは見逃すわけがない。
「くだらないってナンだよ?お前も天音ちゃんと一緒にやったんだろ?」
コタお母さんが言い返すと始は激しくガンを飛ばす。
そう。昼間バイトに出かけた後、姪っ子天音からの電話を受けたコタお母さんは、天音が「始さんと一緒にやるんだー♪」と言っていたのを忘れるわけがない。
「始の点数は後で天音ちゃんに確認すればいいでしょ。始は言いたくないようだし」
栞お父さんがスッパリ切り捨てると、始は天井を振り仰いで悔しさをかみ締めた。
「…来年は、必ず……!!」
涙が見えなかったのが不思議なほどだ。始はヨレヨレになってリビングを去っていった。
続けて続けて解答を重ねて最後の問題も終わりになって、とうとう答え合わせタイム。
「わかんねーよこんなの!」
「うへあっ!すご!」
「ちっ早とちりしたか」
「うわ、よく覚えてたねー」
「この手のモンダイは得意なんだぜっ」
「普段もそれくらい覚えてたらねぇ」
「そうだったのか…」
「え?え?これ解けたらスゴいの?」
なんだかんだギャーギャー騒ぎつつ、答え合わせも終了。
「ま、負けた…」
がっくりしてる睦月の肩を得意気に叩く朔也。とりあえず東大生並みのiQは取れた。
その隣で「うっそー!?うそだろー?」と騒いでるのは一真。僅かの差で睦月に負けたのが悔しくて、変わるわけの無い解答用紙をギンギン睨み付けている。栞お父さんそっくりの行動だったりする。
一真と同じレベルだった栞お父さんが安心してホッとため息をついた。
コタお母さんは姪っ子のところへ電話をかけてみる。
『もう、聞いてよ!始さんたらすっごく優しいの!!私と一緒にこんなモンダイわからないって点数も付き合ってくれたのよ!』
始は11歳の天音と同じ点数…だったらしい。そして天音が平均的iQだったとすると、はたちすぎの始のiQは相当に低いと予想できる。
確かに始はこういうテストの要領は悪い。けれども一度感触を掴めば二度と間違えることが無い。
さっきリベンジを誓ってた始のことだから…。
「来年俺のライバルになりそうなのは始か」
小さく朔也が呟くと、一真と睦月が速攻「俺がライバルになる!」と騒ぎ出す。
iQとは脳内仕事量を数値化してみたもの。
数値は一定ではなく進歩もすれば後退もする。
脳の個性を垣間見ることができるモノサシのひとつ。
しまい。
オチてないけど終わりです。
ごめんなさーい。
私が書いてて楽しいのです♪おほほほ!
2004.11.17
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