このお話は、
栞お父さん、虎太郎お母さん、長男朔也、次男一真、三男始、四男睦月
という農場一家のパラレルもイイトコなヤツです。
ま、許してやろうという心の広い方だけドウゾ。









食事前



 リビングで栞お父さんが資料を大きく広げてパソコンに入力中。
 横目でコタお母さんは「そういうことは自室でやってほしいなぁ〜」と訴えるが多分言っても聞いてもらえないだろう。
 諦めて、茹で上がったジャガイモに塩コショウしてマッシュする。



 玄関前にバイクの音。家の前で速度を落とし、静かに停止するのはレッドランバス。

「ただいま」

 一声かけて、上階の部屋へ行って、またすぐに降りてくる。

「おかえり、朔也くん」
「ただいま、栞父さん。コタお母さん、ご飯は?」
「まだ。あと少し待って」

 キッチンの様子をチラリと眺めて、あと少し〜をどれほどと解釈したのだろうか。冷蔵庫をあけて牛乳瓶を取り出した。

「あ、こら!食事前に!」
「一本だけ」

 いる?と牛乳瓶を差し出すが、コタお母さんはいらない〜と首を横に振る。
 脇に挟んだファイルを開いて文字を追う朔也。シゴトなら部屋でやればいいのに〜と思うが、やっぱりコタお母さんは多分言っても聞いても(ry



 また外からバイクの音。今度は勢い良く帰ってきて、玄関前でドリフトさせて止まったのはブルースペイダー。

「っとにもう、バイクの扱いが荒いなぁ」

 栞お父さんが軽くアタマを抱えてる。

「ただいまー!!」
「お帰り、一真くん。職安はどうだったの?」
「うーん、それがなかなか〜〜。で、メシは?」
「まだ。もうすぐできるから、せめてバイクのグローブ取れば?」

 一真もへへっと笑いながら冷蔵庫を開ける。取り出したのはオロC。

「…食事前だって言ってるのに!」

 ぅえ?とヘンな声を出して一真がリビングを見ると、ごっくんごっくん牛乳飲んでる兄がいる。

「で?一真くん、就職どうなの?」

 改めて栞お父さんが聞く。

「まあイザとなったら奥の手があるっつーか。スクラップ屋関係のヤツ?」
「それよりもお前、彼女と遊んでやってんのか?」
「朔也にーちゃんに言われたかないよ。小夜子さんにプロポーズしないの?」
「あのなぁ、オトナにはオトナの事情ってヤツが」

 単に朔也の言葉が足りないだけだ。というツッコミを栞お父さんとコタお母さんはため息の中に閉じ込めた。



 またまたバイクの音がする。今度も急停止だが、一真のときほどの雑さは無い。改造イッパイのシャドーチェイサー。
 バタンと玄関の開く音がする。

「お帰り」
「お帰りなさい、始」

 栞お父さんとコタお母さんが言った後で始はちょこんと頭を下げた。
 部屋に行って、メットを置いて戻ってきて、始もチラリとキッチンを眺める。

「まだだよー。ご飯」

 始は無言でポケットに手を突っ込んで、カウンターに何かを置いた。

「なんだそれ?」

 聞いた一真にもそれを指弾で飛ばす。隣にいた朔也と栞お父さんにも。

「クルミ?」
「バイト先で貰った」

 一瞬にっこりと始が笑った。それだけで全部が伝わってしまうこの家。
 ああ、いとこの天音ちゃんに貰ったのね…。
 バキバキとリビングに音が響く。

「ああっ!コラコラ!!食事前だって言ってるのにー!」

 指で潰したクルミを食べてる朔也、一真、始、そして栞お父さん。まるで小動物の館。



 バウバウ爆音を響かせて戻ってきたバイクはグリンクローバー。最近乗り始めたばかりで楽しみまくっている。

「ただいまー!」

 玄関に部活の道具を置き去りにしてリビングに飛び込んでくる睦月。

「おかえり。睦月くん」
「ただいま、って今日俺が最後?みんな社会人なのに帰って来るの早いって」

 正直すぎるツッコミに、リビングの全員が顔を見合わせる。

「コタお母さん、ごはんは?」
「まだ。もう少し待ってくれる?」
「じゃあ手伝うよ。あと何?サラダと汁物?」

 てきぱきとコタお母さんを手伝う睦月を眺めて、栞お父さんがひと言。

「睦月はマメでいい子だな。…それに比べてお前達は…一体誰に似たんだか」

 アンタだよ!というツッコミ感情がリビングに満ちる。が、家長に逆らう気の無い長男、次男、三男。
 そして、睦月の彼女の望美ちゃんは、なんとなく栞お父さんに似てるということも言い出せない長男、次男、三男。



「あと1分で夕食開始!みんな、栞お父さんのパソコン周り片付けて!」

 コタお母さんが命じて慌ただしくなるリビング。



 美味しい晩ご飯はみんなで食べる、というのが白井一家のきまりごと。



しまい。




おほほほ。ついにやったわ!おバカ一家!

2004.11.17


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