この話はSEED-de-芸能界パラレルです!
そーゆーの苦手な人はbackで戻ってくださいな。






隠し切れない恋


 モデルから女優に転向したマリュー・ラミアスと、同じ事務所所属のこちらはアイドルユニット「メビウス」から転向の俳優ムウは以前から何かと噂が絶えない。
 共演したドラマ、「いっとけ艦長!2」クランクアップの打ち上げの翌朝、共にマリューの部屋から出てくるのを写真雑誌「週刊ブルーコスモス」にスクープされてしまう。
 北大西洋連邦事務所の社長、サザーランドは再三にわたり2人に別れるように言ってきたが、今度のスキャンダルでとうとうキレてしまい、ムウにカリフォルニアでの飛行機操縦のドキュメントDVD撮影を命じる。

 カリフォルニアへの出発が夕方に迫ったその日、ムウはマリューが現在収録中のドラマ撮影のスタジオに紛れ込み、彼女を待っていた。
 が、スタジオ入りの前に、事務所が用意した記者会見が予定されている。サザーランドはそこでマリューにムウとの関係を否定させようと企んでいたのだ!

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 前日からの寝不足を懸命にメイクで隠し、ため息をつきながら足取り重く記者会見場へ向かうマリュー。
 俯き加減で歩いていると、いきなり腕が引かれて何者かに空き部屋になっていた楽屋に連れ込まれてしまう。突然の出来事に叫ぼうとして、口元が大きな手のひらでふさがれる。その手のひらは、彼女がよく知っている人のもの…。
 隣の楽屋から漏れる明かりだけの薄暗い部屋で、目深に帽子を被ったその人を見てマリューは愕然とした。

「どうして……? あなた…飛行機の時間が、カリフォルニアはどうされるんですか!?」
「そんなの、どうでもいいんだよ!」
「どうでもって、事務所が…」

 言いかけたマリューの唇を強引にムウが塞ぐ。
 余裕の無い、荒々しい口付けに身をよじって抵抗しても抱きしめられた腕の力は緩まない。
 やがて、強い波にマリューも呑まれた。

「…どうするんだよ、記者会見」
「どうって…社長が別れなければ」
「仕事干すって言ってんだろ?そんで、マリューはまだ仕事がしたい。それは知ってる」

 耳元で囁き合っていると、マリューの泣き出しそうな瞳に気付いて、フッとムウが笑う。

「いいよ、俺は。どっちでも」

 さらりと言ってのけたムウに、マリューの表情が一段と硬くなった。

「どういう意味?私たち、終わってもいいの?」
「マリューは、どうしたいの?」
「…嫌」
「俺も、嫌」

 マリューの張り詰めていた気が緩む。
 安心して体から力が抜けていくのを、ムウは今度はもたれかからせるように優しく抱き寄せた。

− マリューさぁん!…あれぇ?どこ行っちゃったのかなぁ −
− 楽屋は空でしたよ。まさか会見から逃げたってコトは? −
− あの人に限ってソレは無いでしょー?どこか休憩スペースでも探してみるか −

 ドア一枚隔てた廊下から、ドラマのAD、パルとチャンドラの声が聞こえる。
 見つかってはいけないと息を詰めるマリューの頬に、耳に、軽くキスが落とされる。

「俺、事務所変えてもいいし、この業界にいられなくなっても構わない。これは俺の勝手だから、マリューは気にせず会見で関係を否定すればいい」
「本当に、勝手ね」
「AD、呼んでるぜ。もう行かなきゃならないだろう」
「あなたは、…これからどうするの?」
「んー、とりあえず、この二つ先にエターナルのラクス嬢の楽屋があったから、こっそり事情を話して君の会見でも見てるさ」
「…その後、カリフォルニアに飛ぶのね?」
「飛ばないよ」
「飛んで。…遠くに離れても、私たちは…」

 言葉が続かず、その代わりにマリューからの口付け。
 薄闇の中で、薫るような微笑を残して、マリューはそっとムウから離れた。

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 人の気配が途絶えてから、マリューはひとり会見場へ向かう為に通路に出た。
 途中、曲がり角に置かれている姿見に自分の顔を写す。
 少し薄くなった口紅を人差し指で直していると、さっき自分の楽屋を出たときとは全く違う表情をしていることに気付く。

 彼に会えたこと、抱きしめてくれたことが、こんなに嬉しいなんて。

「こんなところにいらしたのですか!?皆探していたのですよ?」

 振り返ると、マネージャーのナタルが厳しい口調でマリューに近づき、数枚のFAX紙を差し出した。

「今日の記者会見で予想される質問と、その回答です。社長からも厳しくお言葉がありました。…くれぐれも」
「ありがとう、ナタル」

 FAXに書かれた文字をサラリと読み取って、それをナタルに返す。
 そのマリューの笑みがあまりに凪いでいていたので、ナタルには安心するよりもさらなる不安が湧き、声をひそめて厳しく言い募る。

「私は、社長に命じられたからFAXの通りにしろ、というつもりではありません。ですが、この通りにした方があなたの為です。これ以上あなたを傷つけるのなら、…フラガ氏のことも許せません」
「解かってるわ。みんな、私を守ってくれようとしているのよね?」
「解かってらっしゃいません。あなたは甘すぎるのです」

 実際、ナタルは数ヶ月前までのムウの軽薄さを知り尽くしている。何度も合コンに誘われて、たくさんの女の子、時にはナタルまで軽く口説いていたのだから。
 なのに、マリューとの噂が業界内で密かに囁かれた頃からは、人が変わったように大人しくなったのだ。
 古くからの彼の友人であり、彼の元マネージャーのノイマンからは、「歌でやってた頃みたいに真面目になった」と茶化すように聞いていたのだが。
 それでも、ナタルには、このまま女優を続けていけば必ずアカデミー賞の女優賞は間違いないだろうマリューの経歴が、ムウによって傷つけられるのが許せない。

「ナタル…私、お芝居するの好きよ。社長は厳しい人だけれど、嫌いではないの。あなたのことも、共演してくれる俳優さんもみんな好き。…でもね」
「でも?」
「…行きましょう。これ以上記者会見の時間を遅らせることはできないわ」

 いきなり、言葉を切って歩き始めたマリューに、ナタルは悔しさで一杯の視線を送ることしかできなかった。

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 ADを装ったムウが、エターナル・カンパニーの新人歌手、ラクス・クラインの楽屋を訪れると、ラクスはすぐにムウを見抜いて笑って楽屋内に手招いた。
 ラクスの隣には、彼女の親友でアクションもイケる新人女優、カガリ・ユラ・アスハの姿もあった。

「お嬢様方ご機嫌麗しゅう、突然の乱入にお優しくしてくださって、ありがとう、感謝するよ」
「フラガ!キラを何とかしろよっ!お前の後輩だろう?」
「早速ソレかよ、カガリお嬢ちゃん。てか、アイツ、お前の弟だろ?」
「事務所が違うんだよ!…前からフレイはヤバいって言ってたのに、コロっと引っかかりやがって…」
「まあまあ、カガリ様。キラはそのうちわたくしが必ずモノにいたしますので♪」

 ニッコリ笑いながらトンデモなことを言うラクス嬢に、一瞬呑まれるふたり。
 彼女には敵わない…と思う瞬間である。

「フラガ様。エターナルのバルトフェルド社長も、ラミアス様とのこと、気にかけてましたわ」
「あー、アイツ、元気にやってるのか?」

 適当に話題を変えようとするムウ。
 バルトフェルドは俳優に転向した辺りで数々のドラマの役を争った相手だったりするが、4年前にアクション映画の撮影中に爆発事故に巻き込まれ、相手役だったアイシャを庇って重傷を負った。それからは俳優業からは引退し、プロダクションを立ち上げ、小さくとも大型の新人を出す有名事務所の社長になっている。

「フラガ様が本気で恋をする女性が現れたことを、奇跡だと申しておりました」
「…あのなぁ…」

 照れ隠しになりきらず、苦笑するムウ。
 部屋の片隅に置かれた小さなテレビのスイッチをONにした。

「で?どうなんだよ?マリューさんはこれから否定の会見するんだろう?」
「おふたりとも、人気がありますから…事務所は必死ですわね」

 テレビに映し出されているのは、生放送中のワイドショー。
 週刊誌に載ったムウとマリューの写真をバックに、かつて共演した役者のコメントなどを紹介していると、場面は3人がいる楽屋と同じフロアにある大会議室、記者会見場に変わる。

『マリュー・ラミアスさんがいらっしゃいました。落ち着いたアイボリー・ホワイトのスーツに赤いスカーフ…表情は…笑っています、笑顔です』

 レポーターが押し殺した声で彼女の様子を伝えていく。

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 次々と焚かれるまぶしいフラッシュに、彼女は艶然と笑って応えている。
 椅子を引かれてマリューが座ると、彼女は正面にあるカメラを真直ぐに見つめた。
 そして、その先にいて彼女を見つめているはずのムウの為だけに、ふわりと微笑んだ。

 瞬間の笑顔に、彼女を見ていた会見場の記者たち、モニターの向こうの視聴者、皆が暖かな気持ちになった。

 しばらくは当たり障りの無い、来期からのドラマや出演の決まっている舞台の質問が続き、「これからは挙手の上でご自由に質問をしてください」と司会が述べると、一斉に記者たちの手が上がる。

「先日クランクアップされた、いっとけ!艦長2の共演者についてお聞きしたいのですが〜」

 会見場の隅にいるナタルに一瞬緊張が走る。
 彼女の隣には、急ぎ駆けつけたプロダクション社長、サザーランドの姿もある。
 「FAXは渡したんだろうな?」
 小さくナタルに耳打ちして彼女が小さく頷くと、サザーランドも満足そうに割れたアゴを撫でた。

「ドラマの中でマリューさんを庇って非業の死を遂げたムウ・ラ・フラガ氏ですが、マリューさんの中での彼の死についてお聞きしてもよろしいですか?」
「悲しいシーンでした。けれど、最終回のエンディングでお気づきになった方もいらっしゃるのではないでしょうか?脚本の友澤先生はまだまだ面白くなる展開をご用意してくださってます」
「続編もありえる、ということでしょうか?そのときにはまたフラガ氏との共演を望まれますか?」
「ええ。お芝居も、アドリブもお上手で大変やりやすい俳優さんですから」
「お芝居以外でも、共演なさってるというお噂がありますが?」

 キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!
 会見場全体に強い緊張が走る。
 僅かな戸惑いも逃すまいと、また一斉にカメラのフラッシュがマリューを照らす。

「彼は…、ムウは共演者で、友人で、親しくしてはいますが、日常はドラマのようには…」

 やや俯き加減でそこまで言ってから、マリューが押し黙ってしまう。
 ほんの数秒、だが、マリューとムウにとっては永遠のような長さだった。

「…ダメですね」

 そう言って、マリューは困ったように笑ってみせた。瞳には薄く涙が溜まっている。

「私は、お芝居は上手だと言われるのですが、普段の自分を演じることは…とても苦手なんです」

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 会見の映像を見ていたムウが、スッと立ち上がりラクスの楽屋を出る為に、ドアノブに手をかける。

「お、おい、フラガ!どこ行くんだよ?まさか」
「…ここでお姫さまの所へ行かなくちゃ、王子失格でしょ?」
「キャー!頑張ってくださいませ、フラガ様!」

 混乱を心配するカガリと、全てをすっ飛ばして嬉しそうなラクスに、ムウは指先だけで感謝の礼をして、楽屋を飛び出した。
 向かう先は、どよめきの漏れる大会議室、マリューの記者会見場。

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「さっきの発言を取り消せぇ!マリュー・ラミアス!全ては芝居だと、そう言え!」

 激昂するサザーランド社長を、マリューはただ申し訳ないと思いつつも、自分の発言を取り消す気にはなれなかった。
 サザーランドの隣で、何故だと叫びだしそうなナタルにも、申し訳なさで一杯になる。
 けれども。

「私はムウ・ラ・フラガを俳優としてではなく、ひとりの男性として、愛しています。できれば誰にも知られずにいられればと思っていましたが、写真誌に見つかっちゃいましたし。隠すことも、ウソをつくことも、これ以上はできません」

 きっぱりと、マリューが言い切った。
 こんな会見をして、ムウは怒るだろうか?呆れるだろうか?私のことを飽いてしまうかもしれない。
 それでも、もう自分を止めることができなかった。
 俯いた拍子に、マリューの瞳から涙が零れ落ちた。

 ごめんなさい、ムウ。

 会見場の戸口から驚いた声が上がる。一斉にそちらを向いた記者たちからも歓声に似た声。
 マリューも、目元をハンカチで押さえて、つられるように戸口へ視線を向けた。

「…ウソ…でしょ?」

 サザーランドとナタルが必死に止めようとしている男。その頭から深めに被った帽子が滑り落ちた。
 金色のまぶしい髪の人の、青い目がマリューを捕らえた。
 堪らず、立ち上がったマリューは、一歩、また一歩と、ムウに近寄る。
 ムウも、社長とナタルを群がろうとする記者たちの方へ突き飛ばし、そのスキにマリューに近寄る。

「“キミを守りに来たよ。僕の全てを賭けて”」
「ドラマのセリフね。その後、あなた死んじゃったのに」
「あれぇ?死んだと思った?ちゃんと最終回まで見たでしょう、マリューさん。…けどさぁ、今はドラマじゃないよね」
「ええ。全てを賭けて、私を守ってくれるの?」
「そのために、ここに来たんだ」

 どちらともなく手を差し伸べて、優しい抱擁。

「こんな会見しちゃってさ…先のこと、もっと考えろよ」
「あら、あなただって、同じことを言ってたでしょう?」
「…マリュー。愛してる」

 そして、長い長いキス。
 幸せなビッグカップルの誕生。

 次々に焚かれるカメラのフラッシュで真っ白なワイドショーの映像は、同時に数局のワイドショーで、当然全国放送でお茶の間に配信された。


−ムウとマリューのウレシハズカシ記者会見の巻、劇終−



次・回・予・告!
結局説得されまくったサザーランド社長は、ふたりを認める為の条件として、新人歌手であるキラ・ヤマトの荒れた生活を更正させること、というワケワカラン課題をだしてきたの。
とりあえず、キラもアメリカでレコーディング中だというコトなので、ムウの仕事ついでにカリフォルニアに飛ぶムウとマリュー。
なかなか慣れてくれないキラ。でもね、マリューのドラマ収録のスケジュールも待ってはくれなくて、帰国まであと数時間となり…。
次回、「キラフレ・ムウマリュ、不埒なのはどっち!?

これはムウマリュなのかなぁ?(予告の声:ミリアリア・ハウ)



本当に、end.-



↑の文章の転載、同パロディの三次創作はフリーです。
転載・三次創作の報告は不要ですが、知らせてくださったら意気揚々とお伺いさせていただきます。



上の話は、空と焔の記憶:飛羅宗さまのチャットで湧いたネタが元となっています。
いつも本当にお世話になっていますvvv
なので、モトモト私もネタを頂いた分際でございます。(汗)
チャットで一緒に遊んでくださった皆様には、「設定が違うじゃないの!?」とか怒られてしまいそうです。
すんません。好き放題やってしまいました。

自分で書いてて、本当に楽しかった芸能ネタなので、あの時ご一緒してくださった方も、
チャットの内容なんてしらないよう〜(死んで来い>自分)って皆様も、
ご一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。このネタでー。

2003/10/28 UP


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