ハピバスデ、アスラン。


「アスラン、もうすぐ誕生日なんだって?」

 エターナルで会議の後、休憩室で適当に食事を摂りながらカガリが前の席に座るアスランに言った。
 カガリは隣に座るキラと目を合わせて、クスクスと笑う。

「いつも年上ぶって偉そうにしてるのに、私よりも誕生日が後だったのか」
「…それ、キラもいつも言うよな」
「僕のほうが年上だもん。アスランの誕生日まではね」

 キラとカガリが得意そうに笑う。
 日付にこだわったところで、性格の幼さは隠せないだろうにと、アスランは小さくため息をつく。

「でさ。何か欲しいものとか無い?」
「別に…」
「遠慮するなよ」
「してないよ。それに、戦争中で補給も無いのに、欲しい物なんて手に入らないだろ?だから…」

 そこまで言うと、キラは何かを考え込むように黙った。自分の世界に入ったなー、と判る。
 カガリは…キツイ目でアスランを睨みつけている。

「だから?」
「…え?だ、だから、その気持ちだけで十分だ…って…」
「イヤだ!」

 手のひらをテーブルに叩きつけて、カガリが立ち上がる。
 えらい剣幕で怒ってる…が、カガリの感情の起伏ではこれも普通の怒りなのだ、ということに慣れたハズのアスランも少々退いてしまう。

「な、何でだよ?その気持ちが嬉しいから、十分なんだが…」
「気持ちはいつでも贈ってるぞ!私はおまえに『贈り物』がしたいんだ!」

 あまりにストレートな物言いに、キラ以外のエターナルのクルーたちが足音を忍ばせて休憩室を離れていく。
 そこに…。

「まあ、皆様おそろいで、何かお話中だったのでしょうか?」

 ふんわりとピンクのお姫サマ、ラクス登場。
 カガリの機嫌が急浮上して、ラクスに大きく手招きする。

「あ、イイトコに来た!あのさぁ、ラクス。アスランの誕生日って今まで何か贈ってた?」
「まあっアスランのお誕生日はもうすぐでしたわね!私はいつもマイクロユニットのハロを頂いてましたので、そのお返しに、と、『吉●お笑い100連発!』のディスクを…」
「「な、何それ!?」」

 カガリとキラが見事にハモり、アスランが小さく頭を抱える。
 AD世紀の名作劇場だとラクスがアスランの誕生日毎に渡したディスク…。

「アスランは普段から心から笑ったことが少ないように思われましたので」

 ラクスがニッコリ笑う。
 え、そうだったの?とアスランが騙されそうになる。
 が、実は気遣いもアレだが、ラクスが秘蔵鑑賞アイテムでアスランを笑いの世界に引き込もうとしていたというのも本気だったりするので、やっぱり騙されてはならない。
 …アスランが作るハロの口調はどんどんお笑いに染まっていったのだが。

「参考になりまして?」
「う、うん。そうだな…アスランに笑いを…」

 真剣に悩み出すカガリに、アスランが苦笑して応えた。

「笑いなら、いつもカガリが贈ってくれてるからいらないよ」

 その言葉にラクスがクスリと笑った。
 確かに、ラクスが贈ったお笑いよりも、カガリと一緒に過ごしているときのアスランの笑顔の方が以前よりもずっと輝いているのだから。




 10月29日。

 アスランはカガリから誕生日プレゼントとして工具箱を受け取った。
 オーブのモルゲンレーテで推奨されていた、東アジア共和国の工業製品で、クサナギの整備クルーが予備として収集していた工具コレクションを頼み込んで譲ってもらったのだ。
 工具はナチュラルが作った物だが、精度の高さはプラント製品にも及ばない。

「すごいな…木製グリップなんて初めてだ」
「アスランはマイクロユニットを作るだろう?その時にでも使ってほしい」
「ああ。ああ、ありがとう、カガリ!」

 アスランの頭の中はすでに次に作りたいマイクロユニットでいっぱいになってきた。

 好きな人が好きなものに熱中するのを見るのって、幸せだよなー。
 カガリも、キラキラと輝くアスランの瞳を見ていると幸せになってきて、とてもとても満足だった。


 ちなみに。
 その後、キラが渡したプレゼントはハロ製作キットで、ラクスからは『恋人と一緒に観よう!●本お笑いヒットパレート999連発!』のディスクだった。


End





アスラン、お誕生日おめでとー♪
こんなプレゼントですが喜んでもらえるんでしょーか?(笑)

2003/10/27 UP


--- SS index ---