クサナギとアークエンジェルはザフト軍による厳しい臨検を受けていた。
 戦闘停止状態とはいえ…エターナルはザフト軍からの脱走艦であり、それと行動を共にしていたのだから、当然といえば当然だろう。
 エターナルはすでにザフト軍に抑えられ、乗艦者全員が拘禁された。


 クサナギは一番初めにその監視が緩められた。中立国であったオーブの残り火。ラクスがヤキン・ドゥーエに送ったメッセージを憶えていた者も多く、中立から和平を望む国の者として、その扱いは丁重になった。
 だが、軟禁状態が解かれたわけではない。

「私が探しに行く。ザフトにもプラントにもちゃんと話をつけて」
「カガリ様、お気持ちはわかりますが今は…」

 ストライク・ルージュの前で整備兵たちとカガリがもみ合っているという報告を受けて、エリカ・シモンズが慌てて静止する。
 放っておけば本気でクサナギから飛び出しかねない。
 クサナギの格納庫、ストライク・ルージュの他には7機のアストレイと4人のパイロットしかいない。
 大切な仲間が戻っていなかった。

 絶望的な状況。
 それでも。
 それでも。

「あいつ等…だって、待ってるかもしれないのに!」
「ええ、待っているでしょう。ですが、あの子達が待っているのはあなたの助けだけでは無いでしょう?」

 エリカが優しく諭す。
「約束なさったんでしょう?あの子達と」

 エリカの笑顔から、カガリは顔を背けた。
 睫毛の先から散っていく水分を止めることができずに。

「ウズミ様とお約束なさったこと。希望の火を絶やさないこと。必ずオーブを守ること」
「解かっている…。でも、あいつ等も一緒だ!一人ぼっちの国なんていらない!」
「カガリ様はここで火を護らなければなりませんわ。でなければ、あの子達は帰る場所を見失ってしまいますもの」

 燈台のように。
 人々を導く標となるように。

「ですから、今は動かずに。カガリ様にはお辛いことでしょうが、今はプラントと地球を繋ぐ細い細い道の、灯りであってください」

 すべきことは山のようにあるのだ。
 実際、アークエンジェルのマリュー・ラミアスは厳しい状況の中、すでに地球軍とのコンタクトに成功したという。

 カガリがすべきこと。
 ナチュラルとコーディネイターを繋いでいけたらいいと、そう願う。

「あの子達は大丈夫です。今頃どこかの救命艇に拾われているかもしれませんわ。カガリ様の悪運の強さですもの。きっとあの子達も救われてます」
「そーだよな…。うん。きっと、無事だよな…」

 涙を払って、カガリが見上げる先には、幸運と奇跡を呼ぶ紅い機体。
 エリカがカガリの肩を軽く叩く。

「アサギもジュリもマユラも、きっと戻ります。そして、カガリ様と一緒に」
「うん…。一緒に、もう一度オーブへ帰ろう」



end



クサナギ、カガリ・エリカ編。
3人娘も絶対帰って来るんじゃー!くっそう!
探しに行きたいのはエリカも同じ。
絶望的でも、生きてることを信じてやれるのは彼女だけです。
信じて待つ。大人だから。

2003/10/19 UP


--- SS index ---