プラントに入港したエターナル。
 中破したまま、使用できる火器も無い。なのに、即座にザフト軍の守備部隊に囲まれた。
 クサナギのカガリやアークエンジェルのキラは「納得できない」等と憤っているかもしれないが、この措置はしごく当然だろう。
 バルトフェルドの部隊はエターナルを盗み、ラクスはフリーダムを盗み、自分はジャスティスに搭乗したままザフトを離反した。
 皆、咎を受けることを承知で今まで行動してきたのだから。


「ルイーズ・ライトナーです。お久しぶりですね、アスラン・ザラ」

 父、パトリックと同年代の最高評議会議員、柔和な印象の女性で、以前査問会の席で顔を合わせたことがある。彼女の他には面識が無いが、政府機関の制服組やザフト軍の関係者も数名いる。

「あなたのこと、あなたの父のこと、ご友人のこと。主観を交えても構いません。できるだけ多くを語ってください」
「主観を…?客観的に、ではないのですか?」
「全てを正確に知りたいのは事実ですが、それよりもあなたを理解しなくてはなりませんからね」

 優しい目で老婦人が笑う。

 …理解しあう。
 父とは、今までそんな余裕も無かった。
 もしも、あの時、いくらそう思っても、もう二度とは戻らない。

「父は、私がザフトに入隊すると決めた時、とても喜びました。精鋭としてクルーゼ隊に配された時も。不甲斐ないと思っていた息子が母の仇を討つためにようやく立ち上がったと。…思えば、父はずっと母の影を追っていたのだと、ようやく自分にも理解できます」

 それほどまでに、愛していたのだと。全てを滅ぼしても構わないと思うほど。

「何故止められなかったのだろうかと。息子である私が、何故できなかったのかと、今も、悔やんでいます」
「それは、私たちも同じです」

 ライトナー女史がまっすぐに自分を見据えている。
 ああ、彼女も。
 父を友人と思っていてくれたのだ。シーゲル・クラインと共に。

「フリーダムのパイロット、キラとは旧知の友人です。一度、袂を分かちましたが、彼と、彼の友人、オーブのウズミ氏の言葉を聞き、彼らの追う理想を共に見たいと、ザフトを離れました。この戦争の根を断ちたい、そう願いました」
「父を裏切ることになっても?」
「はい。…ウズミ氏の中に、理想の父、理想の指導者像を見て、私も父を説得しようと試みたのですが…」

 そうだ。
 あの時、説得できなかった。
 けれど、あの時自分のことでいっぱいだったのは父だけではない。自分もそうなのだ。
 すれ違ってばかりだった。

「ご友人、ディアッカ・エルスマンとイザーク・ジュールのことは?」
「ディアッカもザフトを離反しましたが、私とは違い…もっとバランスよくいろんな物事を理解しているのではないでしょうか。ナチュラルのこと、コーディネイターへの偏見のこと。私は“人を理解する”という点で、彼には信頼を置いています」

 ディアッカはそういう奴だ。いつも視点を後ろに置ける。きっと俺のこともディアッカは俺よりもよく知っているだろう。

「イザークにも苦悩があると思います。ジュール議員も父と同じ主戦派で、彼も…プラントを守るために強硬な手段をとろうとする母親を止められなかったのですから。けれど、彼には母親と和解して欲しいと願っています。ディアッカも同じですが」
「エルスマン議員も、息子が戻ってこないと知って、ナチュラルに対し強硬になってしまいました。アマルフィ議員も。皆、少しずつ歯車が狂ってしまったのですね」

 ライトナー女史の声が少し震えた。
 彼女も深く後悔しているのだろう。

「何もかもが遅すぎるということはありません。今からでもできるだけ取り戻して行きましょう、アスラン」
「はい」
「これから、あなたはどうしたいですか?ザフトへは戻れないかも知れませんが、プラントはあなたを受け入れますよ」

 これから…。

 プラントの復興に尽くすか。
 オーブへ赴き、地球の復興に尽くすか。

 まだ、決められない…。



中途半端にend−.



アスラン、査問会です。
本当の軍法会議ならもっと厳しいでしょうけれど。種だから甘めに。(笑)
ライトナーさんて人は資料集から評議会議員を拾ってきましたが
どんな人だかはサッパリわかんない。

2003/10/19 UP


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