知ってる?
格納庫で機体の整備をしていると、広い床面で談笑する声が聞こえてくる。
ちらりと目線を向けると、マリューが明るい人好きのする笑顔でミリアリアと話している。
マリューは少しだけこちらに視線を投げて、軽く手を振って格納庫を出て行った。
彼女に最初から用事なんて無かったんだろう。わざわざこちらに寄っただけ、らしい。
小さな甘えが嬉しい。
「フラガ少佐!緊急携帯備品のチェックに来ました」
「おう、ご苦労さん!」
ミリアリアからファーストエイドキットや食料等が入った新しいパックを受け取って、コクピットの中にあった古いものと交換する。
整備の連中も気にしていたんだが、なかなか交換できずにいたのだ。
細やかな配慮は、マリューやミリアリア、女性の方が向いている。
備品箱を受け取ったミリアリアは、ムウの前でニコニコ笑っている。どうやら新たなおしゃべりの対象にされてしまったらしい。
「何だ?古い携帯食料のつまみ食いなら付き合ってやるぞ?」
「そーんなことしませんよーだ!」
「じゃあ、俺が食う」
菓子感覚でビーフ味の染みたスティックをパクつきながら、油断してたミリアリアの口の中にひとかけら放り込んでやる。
コイツは結構美味いのだ。
これで共犯。
「少佐…ムウさんて、ホントに子供っぽいですよねぇ」
「あ、マリューがそんなことを言ってたんだ。ひどいなぁ」
「ノロケですよ?困ったなんて言ってても、ちっとも困ったように聞こえませんもの」
クスリと笑うミリアリア。
わざわざ俺のノロケも聞いてくれるらしい。
女の子はこーゆー話題が本当に好きだな…。
「マリューさん、ムウさんと…えっと…仲良くなってから、すごくキレイになりましたよねー。あ、元からおキレイでしたけど、もっと、笑顔が輝いてるっていうのかなぁ〜」
「よく笑うようになったよな、確かに」
「それだけじゃなくて、お肌もキレイになりましたよねー!化粧品なんかは前と何も変えてないって言ってたのに…私負けちゃいそうですよー」
慌てて食べかけのスティックを落としそうになって焦る。こんなところで落としたら、掃除が大変だ。
…その、彼女の肌に関しては、別の、思い当たる節がある。
「女の子は恋するとキレイになるっていうのは、好きな人にキレイに見られたいからお化粧なんかにもチカラが入っちゃうからだと思ってたんですけどねー、マリューさんは違うって言うんですよー」
「…で…、マリューは何て言ったの?」
「好きだから、だけじゃなくて、好かれてるから、ですって!もう、聞いてる私が照れちゃってるのに、マリューさんてばとってもキレイに笑ってるんですよー!」
安心していい話なのに。
少し複雑。
…ミリアリアに妬いてどうするんだ。
「その時のマリューを見たかったなー」
「休憩時間はいつでも一緒なのに、もっとマリューさんを独り占めしたいんですかー?」
「うん。俺は欲張りなの」
ミリアリアがちょっと引いてる。
おっと、凄んじまったか?
気を抜いて、スティックの残りを一気に口に入れると、ミリアリアがクスクス笑い出す。
「ムウさんとマリューさん、どっちの方が好きがいっぱいなんだろうって考えてたんです。最初は、どちらも一緒くらいかなーって思ってたんですけど…」
まーた、女の子らしいことを考えるなぁ。
「俺の方がマリューのこと好きでしょ?」
「はい。多分…」
恋を悟ってるのはマリューだけど。
きっと、俺の方が理屈抜きだ。
「おーい、こっちのパックの交換まだかよー?」
隣のバスターからディアッカが不機嫌そうな顔を見せる。
「お嬢ちゃん、坊主が妬いてるぜ」
「いいんですっじゃなくて関係ありません!私は、ムウさんみたいにマリューさんを愛する人がリソウなんですからっ」
「…教育すれば?」
「面倒です」
無碍に言い放つミリアリアにムウが笑ってゴミになった携帯食料のパックを持たせる。
「あ、前言撤回!ひどーい!」
「ほらほら、あっちにも行ってやれよ」
ミリアリアの不機嫌そうな顔が少し緩む。
痴話喧嘩にしか聞こえない2人の声を聞きながら、調整を終える。
なあ。
知ってるか?マリュー。
俺は、おまえのことが本当に好きなんだぞ。
何が何でも、おまえを守るから。
この機体で。
end
ご近所様でMMDM(ムウマリュとディアミリのカプスキー)に感化されちゃった〜
リハビリですなぁ(涙)
なんだかわけわかりません。ごめんなさい。
2004/02/15 UP
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