神秘かもしれない


「ねえ、胸に触ってもいい?」
「どうしてそーゆーこと聞くの?」
「一応、断ってから…」

 後ろから抱きすくめられたと思ったら、その手はすぐに軍服の上から私の胸をまさぐってくる。強くも弱くもなく、おおきな手のひらで包むように…。

「イヤって言っても触るクセに…」
「イヤなの?」
「…イヤじゃ…ないけど、私はもうブリッジに上がらなきゃ…」
「うん。解かってる…」

 ムウは小さく笑って、襟元から静かにファスナーを下ろしてゆく。
 開いた隙間に手のひらを差し入れて、優しく揉まれる。
 シャツの上からなのに、手のひらの熱を感じてしまって、上がる息を押さえ込む。

「俺の胸――」
「俺の、じゃありませんっ!私の胸ですっ!」
「同じだよ…。いいなぁ〜これ。俺、大好き」
「胸が?」
「うん」

 いつの間にか揉む手が止まり、後ろから軽く抱きしめる強さで、ムウの手のひらで優しく包まれる。
 その表情は私の背中にぴたりと貼りついていて見えないけれど、声音はとても嬉しそうで。
 子供のような無邪気さに、私はほんの少し呆れてしまう。

「胸だけが好きなの?」
「違うよ。マリューの胸が好きなの」
「オトコはみんなマザコンって、俗に言うのと同じ?」
「うーん…それはどうかなぁ?近いような遠いような」

 またムウの手が動く。
 けれど、身体を求めてくるときとは違う。
 本当に優しく慈しむように触っているだけ。

「あーでも、やっぱマザコンかもね。マリューの胸、触ってると…落ち着くし」
「落ち着くって…私の胸は精神安定剤ですか?」
「そうだねぇ。今の俺の、一番の癒し」

 もう一度、胸を包むように抱いて、その力が少し強くなる。

「はい、終わり。ありがと、マリュー」

 満足したのか、急にムウの手が離れる。
 あんまりいきなり終わったので、物足りないような寂しさに囚われてしまう。
 と、そんな私の顔を覗き込んだムウが、それまでとは別種の満足そうな笑みを浮かべてる。

「なぁに?感じて乳首勃っちゃった?」
「・・・・・・・違いますっ!バカ!」

 ムウは、あははと笑って、私の頬と耳元に小さくキスをする。

「もう、急いでブリッジに行かなくちゃ…。あなたはちゃんと点滴受けに行くんですよ」
「解かってるって、子供じゃあるまいし。…信用ないなぁ〜俺って」
「終わったら、ブリッジに上がってください」
「え、行っていいの?」
「ノイマン君と交替してあげてください。…艦内をあちこちウロウロされるよりはずっとマシだもの」

 立ち上がりながら、軍服の乱れを正す。
 ムウは俯きながら頭を掻いて、そんなに信用ないのかなぁなんて拗ねたように呟いてる。

「ホントは私もあなたと一緒にいたいだけ」

 小さく言うと、ムウの瞳が驚いたように開く。

 さあ、今からブリッジ。
 気持ちを切り替えて。

 艦長室のドアを開ける前に、一度振り返ると。
 ムウがニコニコ笑ってる。

「マリュー」
「はい」
「また胸貸してね」

 また胸ですか!?なんて思うより先に。
 笑ってしまう。
 可笑しくってたまらない。

「私の胸でよければ喜んで」


end



エロくなーい!(笑)
根性なし!>自分

2003/09/14 UP


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