「おい、ちょっと、待てよ!」

 駆ける速度が落ちる。
 それでも、立ち止まろうとしない。
 どこにも所在が無い俺は、ただついていくしかない。
 すぐ後ろを歩いているのに、振り返ろうとしない。
 俺も、ただついていくだけで、隣に並ぼうなんて思わなかった。

 着いた場所はアークエンジェルの格納庫。
 ようやく、立ち止まる。
 俺は目の前の戦闘機が気になって、俯いたままの彼女を置いてそれに近づいた。

「これが、スカイグラスパー?」

 確かめようとして振り返ると、彼女は何故か驚いたような顔をしている。
 青と白の戦闘機、間違いないだろう。

「へぇ。こんな飛行機だったんだ」

 モビルスーツと比べると、あまりにも小さい。
 こんな脆そうな機体で、立ち向かおうと思うか?普通。

「トールが守ってくれるって、言ったの」

 泣いてはいない。怒ってもいない。
 静か過ぎる。

「私が、不安そうにしてたから。キラがいないとき。だから、きっとトールは」
「お前を守るために、これに乗ったのか」
「そうよ。私も…、私がトールを死なせたのよ」

 静か過ぎて痛い。
 泣いてはいない。涙も出ない。
 悔やんでも、悔やんでも取り戻せない。

 殺したのはアスランだろう?
 なのに、死に追いやったのはお前なのか?

「違う」

 本当に馬鹿な、ナチュラルの女。
 甘すぎる。
 優しすぎる。

 お前がそんなだから、そいつも守りたいと思ったんだろう?

「俺が、守ってやるから。この艦と、お前と」

 憤るかと思った。違った。
 痛いほど、静かに哂う。
 俺を哂ってる?それともお前自身を?

「トールの代わりなんて、私、いらないから」


end



いきなり振られてしまいました。ディアッカ。(笑)
振られて上等!
トールの代わりじゃなくて。
ディアッカを好きになって欲しいから、ここで終わりです。

2003/07/11 UP


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