(注:31話前に書いた予想ショート)




「ムウ・ラ・フラガ、帰投した。このまま艦内の点検補修に当たる」
『了解しました』

ブリッジから答える声は、チャンドラのもの。
通常管制のミリアリアはもうすでにその場所にはいないのだろう。

今、この艦に乗っている戦闘機は俺の、壊れかけたスカイグラスパー1号機。
MSは投降してきたザフト兵が乗っていたG、バスターのみ。
格納庫だけを見渡せば、自分の艦ではないような気がする。

「どういう状況だ?」
「どうもこうも。閉鎖した隔壁の先は使い物になりませんし、消火だけで今まで手一杯で」
「そうか。それでもとりあえず艦が安定して飛べるくらいにまでは応急修理を急ごう」
「ハードはこっちで面倒みますんで、ソフトのチェックは少佐に頼みますよ」
マードック曹長が、小さくため息をついてぼやく。
「坊主がいりゃぁ…早いんですがね」
「そうだな。どこで油を売ってるんだかな」
言ってる自分が白々しい。でも言わずにはいられない。

「早くこの空域を離脱するべきだ。この艦はもう戦えない」
「ヤマト少尉とケーニヒ二等兵の捜索は!?」
「できない、無理だ」
彼女が望んでいる言葉は、こんなものでは無い。
判っていても、こんなことしか言えない自分に内心腹が立つ。
だが、今は現実を優先させなければならない。
「彼女に…子供達には何と言えば…」
「解かりきったことだろう?言ったはずだ。それに、彼らにも覚悟があるはずだ」
「でも」
「でもじゃない。君の仕事だ、ラミアス少佐。無理なら代わる」
俯いた彼女の肩が震える。何もできない自分を再確認する。
「わかり、ました」
「悔やむのは後だ。俺たちにはやらなければならないことがある」


唐突に無くなった無線の反応。
空の爆炎と、地上の爆炎。

生存の可能性は限りなくゼロに近い。


捕虜となった少年兵は、出会ったときからやけに饒舌だ。
他人の神経を逆なでする言葉を選んで口にする。
頭のいい子だ。単に賢いという意味ではない。
生きることを知っている。単に生存するという意味ではない。
「イージスはPS-DOWNの後、ストライクを道連れに自爆した」
告げると、彼は外れた調子で笑う。
「俺たちの望みが叶ったってワケだ。これで仲間の仇が取れたぜ。イージスも散ったってコトはヤツも死んだかな?ついでに俺も殺す?あっははは!」
捕虜は殺せないのを知っていて言うのだから。
つい、俺は笑ってしまう。
表情を見逃さなかった少年兵が不機嫌そうに押し黙る。
「何でもいいから、生きろよ。おまえは」
「バカじゃないの?敵を生かせておけば、またあんた達を殺しに来るかもしれないんだぜ?」
来ないかもしれない。
先のことなんて誰もわからない。
「生憎ここは戦場じゃないんでね。それにお前の罪を裁くのは俺たちじゃない」
「罪ねぇ〜。あんた本気で言ってんの?それ」
「一応。立場上」
「…言われなくても、生きてやるさ。生き抜いてやる。俺はこんなところでは死なない」
俯いてようやく静かになった少年兵の独房から出る。


吸い込む空気は重く湿っていて、心地よく肺に届く。
生きているということは、生きなくてはならないということ。
後悔は、全てが終わってから。


End


性懲りもなくPHASE-31予想ショート。
PHASE-30の少佐がカッコよすぎたー!ステキー!!ステキすぎーー!!
軍人ドリー夢発動!
ディアッカが楽しみですねぇ〜。ずっと少佐と戦ってたんだもんねー♪

2003/05/04 UP


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