ほのか


 優しい人だとは思わなかった。
 風のように飄々としているのは生き残る為のすべ。
 そうしなければとっくの昔に死んでしまってたから。
 優しさ、愛しさ、そういう感情を残していては生きられない。
 そんな人だと思ってた。
 なのに、その手が優しいなんて、知らなかった。

 ほのかに、背に残る彼の温もり。

「もとはと言えば、俺が君に無理矢理艦長を押し付けたんだけど…」
「できないと思ったら、最初から引き受けたりしません。気になさらないでください」
「そーだよなぁ。ダメだと思ったら俺も初めのうちに指揮権を取り上げただろう」
「…認めてくださっている、と?」

 ほのかに、風が動きだす予感。

「この艦は長生きしてるよ、俺が今まで乗艦してきた中で」
「少佐とキラ君が命懸けで守ってくださるからです」
「違う。そういうのじゃない。…この艦は絶対沈まない、そんな気がする。艦長がキミであるウチは、ね」

 優しい声を聞かせないでください。
 優しい言葉をかけないでください。
 あなたは風のように、いつかは私から去っていく人なのですから。

 ほのかに、芽生えた感情を、どうすれば忘れられますか?



End




「やめてください少佐、セクハラです」の後です。
今更!?
ムウマリュ考察をしたら、ついつい書きたくなっちゃった。てへ(滝汗)
2003/11/12 UP


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