ストライクがスカイグラスパー2号機に向かって静かに海からあがる。
カガリの頭上では、フラガのスカイグラスパーが小さな無人島を3回ほど旋回して、滑るように着水。同じく2号機の隣に寄り添うように止まる。
「ごめんっ!また壊しちまった」
カガリを見つけたムウが急いで陸に向かって駆ける。
「マードック曹長に、また怒られるよなぁ〜」
緊張感無く言うカガリに、ムウは苛立ちを隠さない。
「お嬢ちゃん、ケガは無いんだな?」
「ああ、ピンピンしてるよ。私の運の強さが…」
いきなりムウのゲンコツがカガリの脳天を直撃。
「いっっってぇぇ!!!なにすんだよっ!」
キラがストライクから降りてくる。
「少佐!…見つかったからもういいじゃないですか」
「ボーズにも礼を言っておけ!昨日からずっとお嬢ちゃんをさがしてたんだぞ!」
「え…あ、すまなかった」
「いや、そんな。ちゃんと休みながら探してたし…」
「そーゆー問題じゃないんだよ!」
怒鳴ったところで、ムウの怒りは峠を越えたらしく、ひとつ息を吐いてゆっくり話し出す。
「2人とも…ちゃんと戦争を見てきたんだろう?大切なものを何度も無くしてきたんだろう?」
キラとカガリと、互いを見合って、そして視線を落とす。
「自分の命を大切にしろと言ってるんだ」
おとなしくなった2人の頭をムウはクシャッと撫でる。
また戦闘が始まれば、カガリは無理だがキラには必ず参加してもらわなければならない。
本当は、こんな子供に戦争なんてさせたくないのに。
「おいボーズ、憶えとけ。お前には力がある。だからお前にしか頼めない。オレに何かあったら、みんなを頼むぞ」
「少佐!?何言ってんですか!」
「お嬢ちゃん、証人だ」
何の為に戦うのか。
それは自分の目の前で人が死ぬのが嫌だから。そんな個人的な理由。
同じ思いがあるのなら、2人には理解できるはずだろう。
「オレが生きているうちは…守ってやる」
いかんいかん、神妙になってしまった。
ムウが軽く2人の肩を小突いて、いつも通り柔らかく笑って。
「よっしゃ。帰るぞ!」
2003/03/18 UP
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