「事情聴取」1
明日はレジスタンスの連中と買出しに行くことになった。
ザフトの拠点だってのに、連邦軍の装備やらオーブ(モルゲンレーテ)の商品が買えるというのはねぇ。
ぼったくられるんだろうな。
そんなことを考えながらスカイグラスパーの調整を終える。
「キラ!キラったら!」
格納庫を出ようとした時、ストライクのコクピットあたりから女の子の声が聞こえる。
「ねえ、食器下げるわよ」
おいおい、どういうこった?
急いで上がると、コクピットを覗き込んでる…フレイ・アルスター2等兵がいる。
「おーい。そこで何やってんだ?…って?」
側まで寄って中を覗くと、キラが熟睡してる。
「…なあ、これって…」
「キラは私たちを守るために、ここで寝てるんです!」
そう言った女の子の目がとても複雑な感情を表してることに気付く。
悪戯が見つかって逆恨みしてるような…というか。
ま、そんな視線ぐらいでたじろぐコトはないが。
「おい、ボーズ!起きろよ」
肩を軽く揺すっても、目覚める気配は無い。
ふと思いついて、コクピット内のアラームを小さく鳴らしてみる。
ピーッピーッピーッ。
その電子音にキラがビクッと反応する。
「目、覚めたか?」
「少佐!?…この音…なんだ、ただのアラーム…」
キラはアラームを止めて、再び毛布を引き寄せて眠ろうとする。
「こら、こんな所で寝るな!きちんと割り当てられてる部屋へ行け」
薄く開いたキラの目にも反抗的な色がある。
「アークエンジェルが攻撃を受けたら…すぐに僕が出られるように…」
「何のために、ブリッジが深夜も交代で作業してるんだかわかってるか?索敵くらいやってる」
「でも、それは完全ですか!?」
「あのなぁ…」
言い返そうとして、その心情に気付く。
不安なのだと。
「乗員が戦闘配備に着くかどうかは艦長が判断することで、オマエが決めることじゃない。艦長の指示が信頼できないというのなら、それも仕方ないが?」
しばらくの沈黙。
先に視線をそらしたのはキラだった。
「…わかりました」
「よーし。出ろ出ろ、こんな狭い場所」
フレイ・アルスター2等兵が俺を見る目は最後までちょっと恐かったが、何故かキラにベッタリとくっついて、居住スペースへ向かって歩き出す。
まるで恋人同士のように。
だが、少しおかしい。
普通、こんな所で恋人が寝てたら、部屋に引っ張っていくと思うんだが、彼女は容認しているようだった。
改めて空になったストライクのコクピットを覗くと、ドリンクパックや固形食糧のゴミが散乱してたり。
「…おいおい、ここで寝泊りしてたのかぁ?ま、気持ちはわからないでもないけどな」
それにしたって、他のヘリオポリスからの友人達はキラの泊り込みをどう思ってるのだろうか?
あの娘はともかく、何故他の友人が止めない?
2003/03/29 UP
--- SS index ---