愛と冒険の闇遺跡


ある夜。
ロッカの食堂にて。
みんな食事も終えて、部屋に戻る者あり、残ってノンビリしてる者あり。
…なにやら考え込んでるエヴァン。

「どーしたのよ、エヴァンくん?恋の悩みだったらおねーさんに」
「言えるかよ!」
カーマインの茶々に即ツッコミ。
「なんだ、恋では無いのか。では何を悩んでいるのだ?」
ジェイドの前置きに一瞬コケる。
「悩むってほどでも無いけど。明日、ひとりで闇遺跡に行ってみようと思ってさ」
「…また危険なことを!私も連れてゆけば良いだろう!」
「釣り、やりたいくせに…」
「う……違う!釣りなどどうでも…」
「みんなに遠慮してるってワケ?なんだかなー」
カーマインもちょっと不機嫌に。エヴァンはちょっと笑ってしまう。
「そんなのじゃないさ。装備さえ整えれば一人でも行けるんじゃないって思わないか?危ないと思ったら、すぐに帰ってくるさ」
遊びに行くような口調のエヴァンに、カーマインが呆れたようなため息を漏らす。
「…ジアステ風に、いっぱし冒険者みたいな口きくじゃない。ま、いいわ。好きにすれば」
「おいっカーマイン!そんなことを言うと、この猪突無鉄砲者がますます調子に乗るではないか!」
「あのなぁ…」
「仕方ないでしょ?まだまだ冒険したいオコサマなんだから。その代わり!装備のチェックくらいは私たちにさせなさいよ」

てなわけで。
3人でエヴァンの装備品と、闇遺跡のデータ…特にゼノス・リー戦をチェックしてみる。
「物理攻撃はなんとか防げるわよね。エヴァンはプリズンに似た技持ってるし」
「問題なのは魔法攻撃なんだ。ギガヴァニッシュは困るし、シャキラは痛いし」
「マジカルシールドはどうだ?効果時間を延長するアイテムがあっただろう?」
「効果切れの間にギガヴァニッシュやられたら終わりよ。クリスタル3対エヴァン1だもの。ビューネで行動力上げてもねぇ…」
しばし考え込む3人。
「効果切れないアイテムって無かったっけ?ほら、魔法効果無効の…」
「あったな…確かそんなものが。だがそれは…」
「いい!それいいアイディアよ!!どうせ精霊系防具持ってくんなら、スキルのフルアーマーも持っていくんでしょ?」
「へ?…あ、ああ。で?その魔法効果無効のアイテムってなんだったっけ?」
「あたしがそろえてア・ゲ・ル!ふふっ一人で行かせるのはもったいないわねぇ〜♪」
「…悪趣味」
「ジェイドさん?笑いながらそういう言い方はやめましょうね〜」
「だ、だから…そのアイテムは何だよ?」
不安を訴えるエヴァンを尻目に、カーマインとジェイドの装備品相談は続くのであった…。

朝〜。
ナゼか軽くて大きな道具袋。
「冷凍実験室の前で、必ず着替えるのよ〜!」
「私もその姿が見られないのは非常に残念だ!無事で戻って来い!」
カーマインとジェイドが笑顔で見送って、エヴァンは一人、闇遺跡へ。

みんなはそれぞれ好き勝手なことをやってます。
ブランドルは訓練のために剣を振るって…いるとジャマになるので、星辰の門の前で、ウェンディちゃんに贈る詩を考えながら、やっぱり剣を振るっている。
するとそこに。
「ブランドル軍曹ではないか。任務外の時にも訓練を欠かさないとは、見上げたものだな」
「ク、ク、ク、クロイツ中佐殿!?」
実は詩を考えてたなんて言えないので、ひたすら恐縮するブランドル。
「ところで、エヴァンのヤツはどこだ?村には居ないようだが」
「エヴァンなら…今日は一人で闇遺跡へ行きました」
「ほほぅ。冒険ゴッコにしては大胆だな。オレも行ってみるとしようか」
「お、お供しましょうか?」
「ヤツ一人で行ける場所など、オレ一人なら目をつぶってでも行けるハズだ。共などいらぬ!」
ふはははは〜と笑いながら、クロイツは星辰の門の中へと入ってゆく。
その姿を見送りながら、ふと疑問に思うブランドル。
「中佐殿…何しにきたんだ?」

闇遺跡のエヴァン。
精霊の剣を持ち、スキルのオールラウンダーと修羅の魂はMAX値、次元の靴でコンボ討ちまくり。
数が多い時にはスパークボルトや天魔竜陣剣でサクサクっとかたをつけて。
「結構楽に進めるな。これならゼノス・リーもイケるかな?」
エンシャントギアの工場を抜け、搬出口のモンスターも一掃して、いよいよ冷凍実験室へ。
道具袋には今まで遭遇したモンスターが落としたアイテムで一杯。
回復アイテムはこの後のゼノス・リー戦で使うとして〜と荷物を整理。
「そういや、何に着替えろって?」
イチバン下に埋もれた白い布。ぐぐぐーっと引っ張り出す。長い…。
「な、なんだよ!?コレ!」
純白のドレスです。
装備すると魔法効果(自分・敵共通)が無効に。
通常女性向け装備だけど、スキル・フルアーマー装備時は無関係〜
「…くっそう、あいつら!……でも、仕方ないか」
しぶしぶ精霊の鎧から純白のドレスへ着替えるエヴァン。
さすが魔法のかかったアイテムだけに、なぜかピッタリフィットする。
スカート裾も長いが、歩いても走っても足に絡まない。サヤサヤと布の擦れる音がする。
エヴァンの周囲に白い光の輪がクルクルと回っている。
「ふーん。結構キレイで面白そう…女の子が喜びそうな服だな。ま、誰も見てないし…」
荷物袋に回復アイテムを適当につっこみ直し、冷凍実験室の前扉に立つ。
「じゃ、いくぜっ!」

2重のドアがゆっくり開き、エヴァンが中に入ると扉は閉まり、カチャリとロックがかかる。
前方からズシズシと歩み寄ってくるゼノス・リー。
エヴァンが剣を構えると、青白い光が精霊の剣からこぼれる。
視線が合う。
一気に緊張が高まり、ゼノス・リーが咆哮を上げるとその周囲にクリスタルが浮かび上がり魔力の気が集まり始める。
エヴァンも精神を集中して、闘気を高める。
先に術が完成したのはゼノス・リーのクリスタル。シャキラ…氷の塊が飛んでくるが、エヴァンの目前で氷の刃が掻き消えたように無くなる。
「何も寄せ付けるな!すべてをはじき返せ!」
エヴァンの周囲に白く輝く闘気の壁、無敵オーラができる。
クリスタルから光の礫が飛んでくるが、それもエヴァンの目の前ではじき返される。
金色に輝く光の輪、ギガヴァニッシュも今のエヴァンには届かない。
「効かねぇんだよ!次行くぜ、Xスラッシュ!!」
そんなエヴァンの状態には全く気付かない…無関心なまま同じ攻撃を続けるゼノス・リー。
普通の状態なら重傷を免れないティターニアカノンも、コツコツと強い雨に当たるような衝撃でしかない。
スキル・修羅の魂を装備しているので、普通の攻撃さえも疲れることなく何度も強く剣を振るえる。
時折大技を繰り出し、少しずつゼノス・リーの生命力を削ってゆく。

special thanks! YUHI ♪

「もう少しだな」
クリスタルを二つ黙らせて、わずかに余裕ができた時。
ふと、入り口の扉の上…ガラス窓の向こう側に人影が見える。
「え?クロイツ!?」
緊張が緩み、闘気の結界が消えてしまう。一瞬の隙。
ゼノス・リーが吼え、クリスタルが復活する。
そして光弾の雨、ティターニアカノン!
「ヤバ…!!くっ…うぅぅ!!」
とっさに防御の姿勢をとったが、重い衝撃を何度も全身に浴びてしまう。
急激に身体が疲労してしまうがそれには構わず、気力を振り絞って立ち上がり全ての力を剣に注ぎ込む。
「消え失せろ!天魔竜陣剣!!」
床面に叩き付けた剣先から地脈の力を増幅させる陣が浮かび上がり、大地から弾き出された精霊力が灼熱と化してゼノス・リーに襲い掛かる。
『キィィィィィー!!!』
金属的な悲鳴を最期に残して、崩れ消滅するゼノス・リー。
「…ふぅ。終わった終わった…」
気が抜けて、地面に座り込むエヴァン。
…何か忘れてないか?

冷凍実験室入り口の扉が開く。
カツカツと響く靴音。
ふと、さっきの戦闘中に集中が途切れた原因を思い出して、機嫌が急降下するエヴァン。
「なにしに来やがった!」
「そんな状態で、口だけは減らないな」
目立つ外傷はなさそうで疲労がひどいだけか、とクロイツは回復薬をエヴァンに手渡そうとして…
やめる。
整わない息、薄く汗ばんだ肌、極度の疲労…。
この方が都合がいい。
「エヴァン、オレのモノになれ!」
「はぁ?…何言ってんだ、おまえ…」
唐突な言いように一瞬なにがなにやらわからないエヴァン。
「一人でゼノス・リーを片付けるようなヤンチャっぷりはオレのモノにふさわしい!」
「あのなぁー。それじゃクァン・リーの代わりじゃねーか!」
「フッ。そのような格好でオレを誘惑しておきながら何を言う?」
ハッと自分の服装をかえりみるエヴァン。
光沢を放つ純白のドレスを着たまんま…。えらいこっちゃ。
「これには事情が…って、ヒトの話を聞けー!」
欲情の色をたたえた瞳でせまるクロイツに、エヴァンは思わず後ずさる。
「ちょ、タンマ!待て!!おれは男だってーの!!」
「それが?」
表情を変えないクロイツに、逆にエヴァンの顔色がさーっと引く。
マジでヤバイかもしんない。
後ろを向いて大急ぎで逃げ出すが、方向を激しく間違える。
「奥へ逃げるというのか?…ククク。ますます好都合ではないか」

走って走って、エボルの部屋へ逃げ込むエヴァン。
クロイツの姿が見えない所で、小さく安堵してへたり込んで…自分の大失敗に気付く。
道具袋を持ってくるのを忘れてしまった。
着替えが無い。回復アイテムが無い。回復呪文のあるマナエッグは身に着けてはいるものの、ドレスを脱がなくては使えない。
体力を回復させずに、クロイツを蹴倒して逃げ切れる自信は無い…。
万事休すってると。
「愉快なヤツだな。そんなに早く二人きりになりたいか?」
楽しそうなクロイツの声に、これから自分の身に降り掛かりそうな災厄を思わずにはいられない。
「そんなワケねーだろぉ!!」
そう叫んでドレスの裾を引きずってさらに奥へ這いずって逃げる。
クロイツは冷凍実験室の制御ボタンを操作して、内側からロックをかけてしまう。
「これでおまえの望みどおり、誰も入っては来られない。フッ」
軽く制御パネルの上を飛び越えて、逃げるエヴァンのドレスの裾を踏みつける。
「わぁっ!なにをっ…!」
ズベっとすっ転んだエヴァンの腕を捕らえて、そのまま強引に床の上に組み敷く。
焦りまくって暴れようとするが、強く押さえつけられて、もう逃げることもかなわない。
半パニックに陥るエヴァン。
「ク、クロイツ!無理矢理はよくない!」
「オレはこーゆーシチュエーションはキライではない」
「合意の上での方が、おれはいい!!」
「後からの合意でも構わないぞ」
「おれは構う!ってーか、頼むからヒトの話を聞けーーー!!」


プロバイダ規約の為、自主規制…。

約3時間ほど経過〜〜


すっかり夕方。
ロッカのジオゲート前に、みんなが勢ぞろい。
「遅いわねぇ。ホントにクロイツ中佐も一緒なの?」
「ああ、確かに星辰の門の中に…」
「軍法会議の前にヤルことがあるとか言って…いったい何なのかしら?」
ディーネも待ってたりして。
「あら。戻ってきたようですね。お二人のようですよ」
地導師のおばちゃんがジオゲートを開いて、半人前地導師を地脈から引っ張り上げる。
水色の光が溢れて消える。
ジオゲートの中央に立っているのはクロイツ。
小脇に抱えられて、ぐったりしてる白いドレス姿のエヴァン。
「大丈夫なのか…?ってその格好は何だ?」
ルティナもあまりのことに平静を装えない。
全員呆気にとられていると、クロイツが高らかに宣言する。
「皆、聞けぃ!オレはコイツとケッコンするぞ!」
『ええええ〜〜〜〜!!!』
「ほ、本当ですか?中佐?」
「おお、ディーネ少尉も来ていたか。先ほどエヴァンがオレのプロポーズを受けれたのだ」
「おれの話も聞けぇ…」
小さな声で抵抗するエヴァン。
「遠くにいるよりは近くで監視できる方がマシとは言ったが、そーゆー意味じゃなく…」
「ケッコンするの、イヤなの?」
お目々キラキラ夢見がち乙女モード全開のミャムがエヴァンとクロイツに問いかける。
「ハズマの少女よ。イヤよイヤよもなんとやらと言うではないか」
「そーよねっ!ひょっとして大恋愛!?いいなぁいいなぁ!王子サマとお姫サマなのね!ケッコンシキはどうするの??」
「今からならば人前式でもよかろう。最年長者はハズマのウルクとやらか。承認役を頼むぞ」
「わしは構わぬが…。ノーチスの人間は細かいことにこだわらぬのだな!」
やけに上機嫌なミャムとウルクの雰囲気に全員が呑まれてゆく。
「ええっ!今すぐケッコンシキなの!?ぼく、道具屋さんも呼んでくるよ!」
「じゃあ〜今夜はエンカイですねぇ〜!食堂の準備をしてきますね〜〜」
「オ、オレもお手伝いしますよ!ウェンディさん」
「じゃあ他の女連中はエヴァンをキレイにしてアゲルってのはどう?」
「賛成さんせーい!」
皆が口々に何かを言っている。
疲れきって遠のく意識の中、エヴァンは今日何度言ったかわからないセリフをつぶやいた。
「ヒトの話を聞け…」


その夜はクロイツとエヴァンの人前結婚式&大宴会となりましたとサ!


オワリ

2002.08.28





エヴァンに幸せ訪れろ!(笑)
わぁいっ!初やおいがクロエヴァで嬉しいよ!!>自分
話に脈絡が無いのは気にしないでいただけるとありがたいデス。
中佐殿、何しに闇遺跡へ?それは永遠のナゾ。ふふ。考えてねぇのさ。
元ネタは日記。20020805〜06あたりです。
妄想の果てにこんなのができるとは…。
みんな、オラにモエをありがとう!!



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