黎月梨さんより頂きました

直/感/的/


 いつも人生に真剣だった。
 運任せとか、行き当たりばったりとか、ひらめきとか、後先考えて行動する事は己を終わりへと導くと幼い頃から、学んで来た。だというのに……
 今、自分たちをまとめているリーダーの男はどちらかというと本能的で動く人物で、行き当たりばったりで、後先考えなくて、熱くなりやすくて。
 一体、いつになったら彼は師匠たちの言った『己の終わり』へと足を踏み入れるのかとルティナは思う。
 無論、彼に己の終わりへと足を踏み入れろと願っているわけではない。
 彼にしか、この異種族チームはまとめられないと思うから。
 理由は本能的に動いて、行き当たりばったり、良く言えば屈託がないから。
 アルカダが、だとかノーチスが、だとか偏見も持たない。
 こういう時、本能的な事も役に立つ事があるのだとルティナは改めて思う。
 自分には到底、出来ない事なのだが。
 こうやって、本能的リーダーの事を考えると、いつもこうなる。
 最初は彼のあり方の否定的な考えから始まるのに、最終的に肯定的な考えになっている。そして今日も。
 (散歩に行こう)
 鉄製の扉を開けて、ルティナは部屋を出た。
 階段を下りて、すぐ近くの扉から外に出る、すると。
「ぬぉあっ!」
「……ッ!?」
 突然、目の前を青い何かがよぎった。
 反射神経でルティナはファイティングポーズを取ってしまった。
「何だ……」
 その後、すぐに安堵の息をつく。
 目の前にいたのは道具屋の親父たちから、ちょっと風変わりなガンコ者と呼ばれている自称・冒険者のジアステという中年男だった。
 ボロボロのキャップによごれているチョッキ、染みとかついている青と白のシャツ。冒険者と言われれば、いかにも冒険していると言う格好をしているのだが、この狭い村のどこを冒険しているのかは謎である。
「ナイストミーツゥー!ルティナちゃん!!」
「……ッ!!!!」
 おチャメに挨拶するジアステを見て、ルティナの背中に悪寒が走った。
 嫌悪の表情でルティナは鋭くジアステを睨み付ける。
 さすが特殊部隊の隊長をしている事はある、プロの鋭い視線に睨まれジアステは一瞬、たじろく。
「まぁまぁ、ジョークだよ。ジョーク……ところで、だ」
「?」
 苦笑しながら、パタパタと左手を振るジアステにルティナは警戒を解く。
 この村の住人なのだから、警戒する必要はないと判断したからだ。
 だが……
 むずっ!
「ひっ……!!!!」
「ちょっと来たまえ!!」
 ルティナの手を取って、ジアステは走り出した。
 ジアステの予想外の行動にルティナは凍り付き、ジアステに引きずられて行った。
 ピーナッツ型をした巨大で奇妙なお面、巨大魚のレプリカが壁にかけられていて、空っぽの開きっぱなしの緑や赤の大中小の宝箱と空ビンが散乱しているジアステの家の中、ルティナは家の真ん中にある不思議な物体を見つめていた。
 今まで見た事のないポットみたいな入れ物。
「これはラッキーシャッフルじゃ。どうじゃ?やってみんかね?」
「ラッキーシャッフル?」
 ルティナは首をかしげた。
 ラッキーシャッフルと呼ばれるポットのような物体をまじまじと見つめてルティナはため息をつく。
「遊びか」
 以前、エヴァンが今日、ラッキーシャッフルをやって2万Gも使ってしまったと皆に告白したら、カーマインとブランドルに羽交い締めにされた。
 カーマインとブランドルの怒りようからして、そのラッキーシャッフルとやらが良いものではないとルティナも薄々、感じていたが。
 まさかこのポットみたいな物体に2万Gが消えて行ったとは、許せないを通り越して、呆れてしまう。
「まぁ、その、確かに遊びと言われれば、遊びかも知れないが……ごにょごにょ。これは運試しという冒険じゃ!」
「帰る」
 ルティナは見栄えの在る美しい回れ右をして、ジアステに背を向ける。
 そんなルティナの服をジアステが慌てて、つかむ。
「何だ?私は運任せとか本能とか、そういうものに頼って、自分を終わらせるつもりはない!」
「う……ぅーむ。これをやっても人生は終わらぬと思うのじゃが……運も実力のうちだぞ?肩の力を抜いて、リラックスし、1度、やってみぃ、代金はサービスしておくぞ」
「………」
 迷うルティナ。以前、エヴァンたちに肩の力を抜いてみるといいと言われた事があったと内心、思った。
「今日は5万Gのところを、半額の2ま」
「邪魔をした」
「どぁああーーーっ!!分かった、分かった!!ルティナちゃんは可愛いから今回のみタダという事で」
 以前、タダより高いものはないと聞いた事があるのだが、どうもこの男、ラッキーシャッフルをやらないと家から出さないつもりだ。
 本気になれば、こんな家から脱出する事も可能だが、これはちと荒療治となる。
「分かった、1度きりだ」
「よし、ならば、説明をするぞ……」
 ジアステは意気揚々とラッキーシャッフルについて、ルティナに説明し始めた。
 なぜなら、今日は久々にラッキーシャッフルをやってくれるお客さまをゲットしたからだ。以前、2万G払って、エヴァンがラッキーシャッフルに挑戦したが、その日以来、彼は来なくなってしまったからだ。
「で?何色にするんじゃ?」
「………」
「パッ!と決めぃ。悩んでいても正解は浮かびあがって来んぞ。直感じゃ」
 手のひらにある6色の玉をルティナに見せて、ジアステは色決めをルティナに急かす。その言葉に困りつつ、ルティナは顔をあげる。
 ふと、床を転がっている緑色のビンが目に止まった。
「緑で行く」
「よし、始めるぞ!!」
 ジアステが6色の玉をポットの中へと入れた。
「おぉーーーっ!ビンゴだぞ!!」
 なかなかシャッフルが終わらず、キョロキョロと家の中にある奇怪なものに視線を泳がせていたルティナの目の前でジアステは驚きと感激の声をあげた。
「そう……なのか?」
 運や思いつきは宛てにならない、ルティナはそう思っていた。
 だから、今、とても驚いている。
 ポカンとした表情でルティナはジアステを見るとジアステは部屋の奥の箱からガサガサと何かを取り出して来て、ルティナに差し出した。
「これが、景品じゃっ!!!」
 ジアステが差し出した景品を見つめて、それがどういうものなのか悟ったルティナは足早に家の扉まで駆け寄り。
「邪魔をした!」
「ま、待て!景品はいらんのか!?」
「そ、そんなデザインの景品は受け取れない!」
「何故じゃ!?」
「どうしてもっ!!!」
 バタンッ!!!!
 ルティナは赤面しながら、そう答えると家を出て行ってしまった。
「うーむ、やっぱり思いつきの景品じゃダメかの?」
 初めてラッキーシャッフルを行うルティナが色を当てるとはジアステも思っていなかった。だから、景品は慌てて何でもボックスから取り出した女の子なら喜びそうなものだったのだが。
 しかし、これ以外に景品を考えても、女の子には似合わなさそうなものだったり、自分的に 景品として出したくないものだったり。
「仕方ないの、あとで届けるとしよう」
 ジアステはテーブルの上にピンク色の帽子をかぶった猿のぬいぐるみを置いた。
 一方、その頃。
「よし!今日はちゃんと自分のお金で、予算内だから怒られないぞ!!」
 以前、散々、ラッキーシャッフルに出費して、外れまくったエヴァンが懲りずにラッキーシャッフルに挑戦すべく、ジアステの家へ向かっていた。


オワリ。

2003.03.22








【黎月さんのコメント】
ちょろりんさんの50000Hitリクエストです。
ルティナがラッキーシャッフルに初めて挑戦した時のジアステとのお話のリクエストですが……どうでしょうか?
ちゃんと応えられたでしょうか??
ラッキーシャッフル、プラチナコースを挑戦して、時々、当たるのですがアイテムはお目当ての物が貰えない〜!という状態です<私。
皆さんのラッキーシャッフルはどうでしょう??


【ちょろりんより感謝の辞】
うひょー!カワイイッ!ルティナちゃん、かわいい!
ココのイベントは私も大好きで、何度かテキスト化しようとして挫折しちょりました。あまりにギャンブルちっくになりすぎて。(笑)
オチのエヴァンがたまらーんっ!好きじゃー♪
私のラッキーシャッフル運は尽きまくってます。
精霊の指輪をよこせっジアステ!!


ホントにありがとうございました〜!!


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