078.
異国の歌



 いつかどこかできいたことのあるメロディ
 知らない言葉なのに 知ってる
 遠い昔 誰かが歌ってた…


 エスカーレの音楽屋敷で久しぶりにクラッシュヘッズのコンサート。
 地導師の仕事が終わって、下町で食事ついでにと寄ってみたら、いつもの3人の音楽家に加えて金髪美人が歌ってた。
 このあたりの流行り歌を何曲か歌って、それからロッカの村で音のカケラから作られた楽しい音楽…
「LIVE!LIVE!!LIVE!!!」だったっけ、最後まで演奏したところで彼女が3人に何かを告げて、一人で歌い出す。

 同じ曲なのに、まったく違う歌。
 賑やかな歌じゃなくて、静かな、優しい歌。
 知らない言葉だった。
 意味がよく解らない。
 あの曲は異国の歌だったのか。
 でも、どうして音のカケラになって、遺跡にあったんだろう?

「ハーラン、久しぶり!盛況だな!」
「エヴァンさん、こんばんは。コンサートどうだったかな?」
「歌がよかった。あ、演奏ももちろん!」
「はっはっは。彼女は旅人なんだ。セッションできるのは一時期のことだろう。紹介してあげよう」
 舞台袖でキャロと遊んでいたその金髪美女をハーランが手招きしてくれる。

「前に話しただろう?彼はロッカの村で私たちを助けてくれたんだよ」
「あなたがエヴァンさん?音のカケラを集めた人ですね」
「ああ、そうだよ。ええと、あの歌だけど、どこの国の言葉なの?」
「Povoのことですか?」
「Povo…Cancao Do Povo?」
「わぁ、タイトルを知ってる人にあったのは初めてです!」
「え…?おれ、どうして知ってるんだろう?」

 不思議な感覚。
 見たことの無い街が見えたような。

「あの歌はここよりもずっと遠い国で遠い昔に歌われた、人と大地を讃える歌です。今ではあまり歌われませんが、私もここに来てクラッシュヘッズの皆さんが演奏している曲を聴いて…不思議な繋がりを感じたんです」
「音のカケラは遺跡にあったんだ…あの遺跡がその遠い国に関係してるのかな?」
「関係が…あったらいいな…」
「どうして?」
「会いたい人がいるんです。その人もその歌を知ってるから…また会いたいな」

 少し寂しそうに笑う彼女。

「その人を探して旅をしてんだな。じゃあ、見つかったらまたこの街に歌いに来てくれよ。その人も一緒に」
「…ええ。必ず」

 二人、今度は柔らかく笑って、握手を交わした。

 コンサート会場の音楽屋敷を出て、月明かりで白く輝く夜の海の前に立つエヴァン。
「あ、名前聞くの忘れちまった」
 戻ろうとして、やめる。
「…次に会ったときでいいかな」
 頭をかきながら、食事をする為にタル酒屋の方へ足を向け歩き出す。


 いつかどこかできいたことのあるメロディ
 知らない言葉なのに 知ってる
 遠い昔 誰かが歌ってた…



おわり。



グランディア2の歌姫・エレナちゃん、とうとうグランディアX話に出てしまいました。
前々からグラ2のキャラが脳内をウロウロしてたんです。早く再プレイしよう。(汗)

お題モトネタは「Mermaid in Blue(種ともこ)」の歌。

2003.03.01


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