睦月
 どこにいっちゃったの?



049.
迷子


「ああ、ずぶ濡れで駆け込んできた熱血くんね?」
「あんなに女を待たせるんだから、とっくに振られたと・・いっ!!」

あのときのことを思い出して、少しだけ、笑うことを思い出した。

あのとき、睦月は気が付いたら全然知らない場所で、知らない人たちと倒れててとかなんとか、説明してた。
私、怒ったのよ。
もっとマシな嘘つけないの?って。

本当だったのかもしれない。
もっと信じてあげればよかった。

もっと優しくしてあげればよかった。

「・・・お姉さんのことそんなに心配させるような男なら、振っちゃえばいいじゃない」
「こら、天音!」
「だって!こんなに悲しそうなのに、放っておく男なんて許せない」

違うの。
睦月はいつだって優しかったの。
少し頼もしくなって、もっと好きになりそうで。

「あまね、ちゃん。もしね、あまねちゃんが好きな人が帰ってこなかったら、すぐに振っちゃう?」
「ううん。待ってる。探しに行く。・・・ごめんなさい」

「望美ちゃん!?」

階下から、いきなり現れた人は橘さんだった。

「そうか。睦月を探して・・・。すまない」

橘さんは私には詳しいことは何も教えてくれない。
それでも、睦月のことを心配しているのは私と同じくらい・・・よくわかる。

「あのときの怪我も、睦月、ですよね?」
「違う。本当に違うんだ。睦月じゃない」
「じゃあ、どうして?」

睦月は本当に橘さんのことを心配していた。
なのにお見舞いに行けなかった。
とっても、辛そうだった。


あのとき、強引にでも一緒にお見舞いに行ってたら?

あのとき、嶋さんって人と会わなかったら?

あのとき、


私はどうすればよかったの?


「睦月、帰ってきますよね?」

橘さんの答えは無かった。



end



だって。望美ちゃん・・・かわいそうなんだもん。

2004.09.11


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