027.
昏き理



「戦い続ける…か」
ムウの声が、やけにマリューの耳に残る。

それは、誰に向けられた言葉?


『明けの砂漠』のアジトで盛大に行われていた祝勝会の合間。
タッシルの長老による死んだ戦士たちへの鎮魂の儀式が始まる。
レジスタンスの者達も、アークエンジェルのクルーも、静かに長老の声を聞く。

「我々が欲しいのは、誰にも従わずに生きる自由。ただそれだけなのだ」

ただそれだけ。
なのに、遠い。
もともとこの地方の資源は豊かで、だから奪い合う、争いが起こる。
簡単な図式。
今、一時の自由を勝ち得ても、また次の支配者がやってくる。
繰り返される歴史。

「この砂漠に…平穏な日々はいつ訪れるのかしら」
「そんな日は来ないかもな。この地に住み続ける限り」
小さくつぶやいただけつもりだったのに、慌てて振り返るとすぐ後ろにムウがいる。
「どうして…そんな否定を?それでは死んでいった人達は救われないわね」
「肯定が欲しいのか?いつか必ず平和がやってくるって?」

いつもの、高い場所から下界を見下ろすような笑みを浮かべた顔。

「あんたが救われたいワケだ」
「そうよ。その通り。いけない?」

いやおうなく戦渦に巻き込まれてゆく人達。巻き込んでしまった子供達。
心には深い傷痕が残る。
そして、自分も、「敵という人間」に、傷を与え続けているというのに。

「彼らは戦い続けるんだ。自由を勝ち得るために。勝ち得た自由を失わないために」
「あなたは?どうして戦い続けるの?」
「俺ぇ?」

世界を二分する戦いに。
劣勢の側に。
いつも最前線に。

「戦争なんて…一番平和から遠い行為だよな。殺し合いの先に平和なんてあるものかな」

鷹が舞い降りてくる。
振り返ったその顔には、さっきの遠い笑みではなく、とても近い…私や他のクルーたち、そして幼い子供達と同じ、意志の色がある。

「それでも、俺は守りたい。誰かのためじゃなくて自分のために」


蒼い瞳に、ほんの一瞬見とれて。


そして、またいつもの飄々とした態度に変わる。
鷹が飛び立っていく。

「そんな感じですが、よろしいでしょうか?酔っ払い艦長殿?」
「酔っ払ってません!少佐だって酔っ払ってるんじゃないですか!?」

ムウは笑いながら、カップを置いて、また始まった宴の中へ歩いてゆく。
見ると、カップに入っている酒は殆ど減っていない。

「こう見えても、下戸なんで!」


戦いの、その先にあるもの、その意味を。
昏き未来しかないのかもしれない。
それでも、守りたいものがあれば…私もきっと。

「戦い続ける…か」

今度は自分で呟いて。







PHASE 22 冒頭より。 結局このカプにのめりこんでゆくのかぁ?>自分
書いておきながらナンですが、フラガ少佐は下戸ではなく、戦場に近いと飲めないの〜というコトにして。職業軍人だから。
あーあ。また激重な話を書いてしまった。でもシード話は絶対重くなるんで、仕方が無いと…。
付き合える人は付き合ってください。(苦笑)

2003.04.01


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