退職シリーズその参
〜さらし者〜


新しく入った人は、先輩が技術、知識をほぼマンツーマンで
指導してくれるんですけどね。

その病院は付属の学校があるために、その病院独自のやり方というのを
学生時代からみっちりと教えてもらってる同僚に比べて

私はブランクが1年半あり、しかも教育された場所が全然違うために
とまどいっぱなしだし・・・

指導者が、主任さんでして・・・・私もできなかったけど
結構混乱しましたよ

いろんな先輩に教えてもらったけど
先輩ごとに違うことを教えられ、
ある先輩の前で、違う先輩のやり方でやると
その先輩に怒られるということもありました



今回はその新人の頃からだいぶ時間がたってるんだけど
やめる、3ヶ月くらい前に起こったことです

私にはほんとに恐れてる先輩がいました
その人にガンつけられるのと
そのスジの人にガンつけられるのと
選べっていわれるんだったら


そのスジの人に睨まれた方がいいです、マジで

マジで怖かった。

本気で睨まれたら
蛇に睨まれたカエルって感じでしたから

話せなくなるし、思考は止まるし
手は震え、声も震える・・・・


そんな状況になりました

ある日勤のことです

その人に
「V−Pシャントのオペ後の人が何で吐き気とか訴えるんや
いうてみぃ」
といわれまして・・・・私は答えられませんでした
つーか、怖かった。
間違ったらむちゃくちゃ言われるし・・・
頭の中では考えなんてないというよりも
頭が真っ白で考えられないという状況になっていました


黙っていると・・・・
「黙っていたらわからへんやん、ええわ、時間の無駄やから
あとで聞くわ」

そういわれても、死刑執行があとにのびた感じでしたね

頭の中ではどうしようか、どうしようかと考えていました

自分で調べようとしてもどう調べていいかわかんないから
直接、医者に聞いたんですよ

別に悪いとは思ってませんでした
そのときは・・・・こっちの知識として身に付けばいいことだし

もちろん、その先輩がいないことを確認して聞いています

しかし、別の先輩がその先輩に報告したんです
「akkiy君が先輩の質問を先生に聞いている」と・・・・


私はお昼に自信を持ってその先輩にその質問の答えをいった・・・・

「ふーん、あんたそれ先生に聞いたんやろ」

え、って感じでしたよ

だって、そのことがその先輩に伝わっているなんて
知らなかったんですから

そしたら、先輩はいいました
「何で先生に聞いたん、
自分で調べたらいいやろっ!」


私は言いました
「わからなかったから先生に聞いたんです」と
震えながら・・・

「あんたCTの写真とか見たん?
本気で調べようとしたんか?」

と怒られました

何で先生に聞いたらだめなのか、僕には理解できなかった。

そんなの知っていて当然とあいては思っているけど
僕は知らない、調べようとしても教科書や参考書を調べる
時間はくそ忙しい日勤帯でそんな時間はない
一番知識のある医者に聞いて何で悪いのかわからなかったけど

たぶん、安易に先生に聞くという僕の姿勢が
先輩は気に入らないということはわかった。

先輩は、CTの写真をつかって説明しだした・・・
「じゃぁ、ここはどういう部位なの?」

脳室ということはわかるけど
先輩が怖くて、確証がもてなかった
間違っていたらどうしようという
恐怖がつきまとっていた


勇気を振り絞って「の、脳室です」と答えた

それから、いろいろといわれた・・・
最後に
「あんたほんとに看護師やる気あるの?」

それを聞かれても自分でもわからなかった

「やる気あります」
確証が全くなかった。恐怖でそう答えるしか選択肢はなかった

「そんな風には見えへんねんけどなぁ!
もうちょっとしっかりしなあかんでぇ
これから家族養っていかなあかんし・・・
明日は勤務何や?


「あ、休みです」

「そうか、
それなら次の勤務までに
この仕事続けるかどうか
聞くから、よく考えてきて」


本気で、怖かった。
その時、僕の後ろには後輩や同期、違う先輩、医者までいた

・・・僕は、さらし者だった・・・

恥ずかしくて、帰りたかった
そうもいかないんだけど


もう、疲れてしまっていた・・・続けようと思っても
また同じことを繰り返すだろうと思った

悩んだよ・・・
その夜に実家に帰り、次の日・・・
気分転換にゴルフに行った

でも、頭からそのことがぬけなくて
スコアもスイングもむちゃくちゃだった

とにかく、婦長に電話することにした・・・
でも、婦長は
「あ、そのことなら知ってる
私も一緒に謝ってあげるから、
これからがんばったらいいやん」

婦長に言いたいことは山ほどあった
「で、でもね・・・」
話し出そうとすると婦長は・・・

「男のくせに、ウジウジするんじゃないの!
いいわね。切るわよ」
ガチャン、つー、つー・・・・


切りやがりました・・・・

結局、次の日、不本意ながらも先輩に謝罪
続けることになったんだけどね・・・・