好きの気持ち

好きでいるのはとても大変。だから努力しなくちゃね?

「なぁリナ」
「ん〜〜?」
「もしかしてオレに飽きたか?」
ぶ〜〜〜っ
恒例の食事バトルも終わり、のんびりしていたあたしは思いっきりお茶を吹き出していた。
あ、飽きるって・・・
あたしの思い違いじゃ無ければ意味は一つしかないだろう。
周りも同意見のようで視線が痛い。
それなのにこの男は何も感じないのかあたしの顔をひたと見つめて更に口を開こうとする。
「なあ、リナ。もし・・・」
「ちょ、ちょっとガウリイ!
おばちゃん、ごちそうさまーっ」
これ以上要らない事を言う前にガウリイの長い髪をひっつかみその場から逃げ出す。
お金はもちろん置いてきたけど当分あの店には行けないかも知れない。
あ〜安くて美味しい店だったのに。
「お〜〜い、リナ〜〜」
後ろで聞こえる声を無視して、角を二つ曲がり十字路を直進し町を斜めに走る川を渡り人影まばらな路地裏で足を止め握っていたものを離した。
何やら言いたげなガウリイの髪や服にずいぶんとゴミが付き、擦り切れていたけれどそれは気のせいという事で。
それよりも・・・
「ガウリイ、あんたあんな所で一体何を言うのよ!」
「いや、だって・・・」
地面に腰を落として座るガウリイはふて腐れた表情だけれど、上目で見てくる様は拗ねてるように見えなくもない。
・・・あんた一体幾つだ・・・
あたしは痛む頭を押さえて言い訳を聞いてあげる事にした。
「で、なんだって?」
「いやだってリナが・・・」
ボソボソと呟く声は口の中に消える。
ああもう、何が言いたいのか分からないって。
「だから何?」
「だってリナが・・・ばっかり・・・から・・・」
「は?」
「だから!リナがオレ以外の男ばっかり見てるから!」
「・・・はぁっ?!?」
ガウリイはあたしの追求にやけくそのように声を張り上げた。
「オレが気が付かないと思ってたのか?
さっきだって食事が済んだ後窓際に座ってた男の事じっと見てただろ?
それに最近は誘ってもすぐ断るし」
一度口にした事で吹っ切れたのか、ガウリイは途切れることなく滔々と理由とやらを並べ立てる。
「部屋だって最初から別々に取る事多いし、本読んで構ってくれないし、魔法の研究とやらで遊んでくれないし・・・」
「ストーップ!」
まだ続きそうな口上をあたしは遮った。
ガウリイの言いたい事とやらは分かった。
分かったけど・・・
「あのね、読書やら魔法の研究であんたをほっぽっとくのは前からの事じゃない。
さ・・誘いを断るのは体力がもたないからだし、
部屋を別々にするのだって断ってんのにあんたが襲ってくるからでしょうが。
さっき見てたのだって男の人って言うかカップルかな?って二人組を見てたんだけど。
向かいに綺麗な女の人いたでしょう?」
「・・・見てない」
おひ。
ガウリイはあたしのあきれ顔にプイと横を向いてしまった。
それは拗ねてると言うよりも・・・
「・・・ガウリイ、もしかして妬いた?」
「なっ、違・・・」
あたしの言葉にすごい勢いでガウリイが振り向く。
「じゃ今のなーに?」
「っ・・・」
あたしがニンマリと笑うとガウリイは悔しそうに顔を背け立ち上がった。
どうするつもりかと思ったら、一人で表通りに向かって歩き出した。
ハッキリ言ってそんなガウリイは珍しい。
「ね〜ガウリイー?」
「・・・」
あたしはいつもと逆に前を歩くガウリイの背中をのんびりと追いかける。
「嫉妬したんだ〜」
「・・・」
「心配した?」
「・・・・・・」

好きでいるのはとても大変。
だから頑張らなくちゃ。
だからね?

「あ。格好いい人発見」
「リナっっっ」

頑張って目が離せない女でいるからよそ見しないでね?


2003/12


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