黎 明

ゆっくりと目を開ければ、空が白み始めていた。

「眠り(スリーピング)」

目の前の男にとどめをさし、その腕から身体を抜いた。

あたしを抱いて安穏としないで。

ちゃんと夜明け前には姿を消してあなたの不安を煽ってあげる。




あたしをその瞳であっさりと捕まえて、自由を奪ったくせに。

あなただけ自由なままなんて許さない。




あたしを焦がれさせ

あたしを溺れさせ

あたしを狂わせて

世界さえも裏切らせた

あたしだけを狂わせたまま、許してなんかやらない。

「愛してる」なんて囁きだけじゃ許してあげない。




どんなにあなたの名前を呼んでも。

どんなにからだを重ねても。

心の内は隠したままに。




余裕なんて無くなるくらい、追いつめてあげる。




あたしを求めて

あたしに焦がれて

あたしに溺れて

身体だけじゃ足りなくなるくらい

あたしだけに、気が狂(ふ)れるほどに。




幸せも

平穏も

何もかも分からなくなるくらい




あたしと共に狂って・・・


2000/9


← 戻る