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ご訪問、ありがとうございます。
兵庫県姫路市の小学校に勤めていました、藤澤芳昭といいます。
退職後は体操スポーツ少年団の指導をしています。

武道家、南郷継正師範の上達論を逆上がりに適用してみました。
このステップで実践したところ、小学2年生30名中29名が逆上がりをマスターしました。
その実践記録も公開しています。よければご覧ください。
また、南郷継正師範の上達論については、三一書房「武道の理論」をご覧ください。


逆上がりマスターのステップ


第1段階(逆上がりの形を覚える)

 ここでのねらいは、逆上がりのフォームを覚えることと、逆さ感覚や回転感覚を身に付けることです。
 おへその高さの鉄棒を使います。
 補助具は「くるりんベルト」を使います。
 練習生は立位で鉄棒を握って構えます。
 脚は前後に開きます。
 このポーズから1歩助走をして逆上がりをします。
 助走を1歩にしておくと、第3段階がやりやすくなります。
 くるりんベルトが助けてくれますので、初めての子でも簡単に逆上がりができます。
 初心の段階では、左右どちらの足が「振り上げ足」で、どちらが「地面を蹴る足」かが分からない子がいます。
 こういうときは、片方ずつさせてみて、やりやすと思うほうに決めます。
 鉄棒の握り方には「順手(上から握る)」と「逆手(下から握る)」の2つがありますが、これもやりやすいほうでさせます。
 第1段階のステップは6つあります。  

(1) くるりんベルトの黒線の長さで3回逆上がりができたら合格。
(2) くるりんベルトの緑線の長さで3回逆上がりができたら合格。
(3) くるりんベルトの青線の長さで3回逆上がりができたら合格。
(4) くるりんベルトの白線の長さで3回逆上がりができたら合格。
(5) くるりんベルトの赤線の長さで3回逆上がりができたら合格。
(6) くるりんベルトの最長で3回逆上がりができたら、合格。

ここではフォームを覚えることが目的です。
くるりんベルトを外すと、逆上がりができなくてもかまいません。


第2段階(逆上がりを技化する)

 補助具は、跳び箱と踏み板を使います。跳び箱に踏み板を斜めに立てかけて坂を作ります。
 この坂を「地面を蹴る足」で蹴って、逆上がりをします。
 跳び箱の段数が多いほど坂は急になります。すると「蹴る足」の位置が高いため、逆上がりがしやすくなるのです。
 上達していくにしたがって、跳び箱の段数を1段ずつへらしていきます。
 これで、蹴り足の位置を低くして、地面の高さに近づけていくことになります。
 この跳び箱と踏み板を使った練習法は「飯田、根本式段階別台付鉄棒」と呼ばれています。
 逆上がりのテクニカルポイントである「振る」「蹴る」「引く」「巻く」を強烈に意識させ、逆上がりの技化を図る段階です。
 ところで、学校の教員は跳び箱や踏み板の準備ができますが、一般のご家庭では無理でしょう。
 そんなときには、くるりんベルトの特別な使い方がありますので、のちほどご紹介します。
 では、具体的なステップを記します。

ステップ1 跳び箱4段と踏み板1枚を組み合わせての練習

(1)「ぶらしゃがみ」ポーズをとる練習
 跳び箱4段に踏み板1枚を立てかけて坂を作ります。跳び箱の位置は子どもの身長によって異なります。
 適宜、調節をしてください。これで準備OKです。
 ぶらしゃがみポーズを説明します。
 練習生は鉄棒を握ってぶら下がります。そして、斜めになっている踏み板に両足をそろえ、膝を曲げてしゃがみます。
 しゃがんだとき、膝は完全に曲げてしまいます。
 このポーズは5.6回も練習すれば、足の位置が決まってきます。
 常に一定の固定された構えからでないと、「振り上げ足」や「蹴り足」が同じ軌跡を通らないことになります。
 同じ軌跡を通らないと技化しにくいという理由によって、ぶらしゃがみポーズを考えました。

これが「ぶらしゃがみ」ポーズです。


跳び箱4段と踏み板1枚がありませんが、
実際には使用します。



(2)片足を振り上げる練習
 第1段階で振り上げ足が右か左かは決まっています。
 その振り上げ足を、ぶらしゃがみポーズから、振り上げるだけの練習です。
 ここからは、意識も練習に参加させます。
 そのために、次のような指示を出します。
 「私の言葉通りやると、すぐに上手になりますよ。だからよく聞いてください。
  まず、ぶらしゃがみポーズをとります。そして、ぶらしゃがみポーズをとった
  とき、自分に「振れ」と命令しておきます。そして、実際に振り上げ足を振り
  上げるときにも、「振れ」と自分に命令しながら振り上げます。では、やって
  みましょう。ぶらしゃがみポーズをとって。「振れ」と自分に命令しなさい。し
  ましたか。では、心の中で「振れ」と命令しながら、足を振り上げます。せー
  の、振れ!」
 指導者は練習生の動きをよく見ておいて、今まさに振り上げんとしているときに、「振れ」と声をかけます。
 この練習を続けていると、次のような動きが出てきます。
 振り上げ足を振り上げたとき、反対の足が踏み板を蹴るような動きです。体が少し宙に浮くようになります。
 こうなったら、合格です。(3)に進みます。

左足を振り上げたところです。
指導者は「振れ」と声をかけます。


写真では跳び箱が3段ですが、実際には
4段を使います。



(3)もう片足で蹴る練習
 さきほどの振る練習に加えて、もう片方の足で踏み板を蹴る練習です。
 ここでも意識を動員するため、「蹴れ」と自分に命令するように指示します。
 たまに、蹴ることを意識してやっているか確認してください。「何を考えてやっていましたか」と聞けばいいです。
 このステップからは補助をすることも必要になってきます。
 練習生の腰に補助者が手を当て、上に持ち上げるようにします。筋肉痛にならない程度にやってください。
 蹴り足で踏み板を蹴って、体を逆さにし、垂直近くの倒立位になれば、合格です。
 倒立位になれるということは、それだけ蹴り足が強く蹴っているということです。
 たいがいの子は倒立位までいきません。それで、「あと10cm強く蹴れ」とか言って、数字での目標を与えます。
 補助なしでも十分な倒立位になれたら、次の(4)に進みます。

左足で踏み板を蹴ったところです。
この写真のときは、振り足が右足で、蹴り足が左足
になっています。


写真では跳び箱が3段ですが、実際には4段
を使います。



(4)肘を曲げて体を引き上げる練習

 このステップでは、倒立位になったときに、肘を曲げて体を引き上げる練習をします。
 次のような説明をします。
 ・逆さになったときに、肘を曲げて体をぐいっと引き上げます。
 ・引き上げるときに、「引け」と自分に命令します。
 実際に練習生がやっているときには、倒立位になった瞬間、「引け」と声をかけて意識化を図ります。
 なお、このステップでは私は補助をしませんでした。補助をしていると練習生がどれだけ体を引き上げているか見えないからです。
 合格ラインは、はっきりとは分かりません。適当に(5)へ進みました。

この写真では、左足が振り足で、右足が蹴り足です。
(3)の写真よりもわずかに体が上方向に持ち上がっています。
肘を曲げて体を引き上げているからです。



写真では跳び箱は2段ですが、実際には4段を使います。



(5)鉄棒に巻きつく練習
 これまでの動作にプラスして、膝を胸に引きつけるようにして、鉄棒に体を巻きつける動作が加わります。
 キーワードは「巻け」です。でも、今思うと、「膝」というキーワードのほうがよかったかもしれません。
 巻きつくときに、膝を開いてガニ股のようにすると、うまくいった子がいました。
 4段跳び箱と踏み板で、3回巻きつくことができたら、合格です。
 第2段階のAはクリアしました。
 巻きついた後で、背筋を使って上体を起こしますが、なかなか起きられない子もいます。おまけで合格としました。

ステップ2 跳び箱3段と踏み板1枚を組み合わせての練習

 次は、跳び箱の段数を1つ減らして、跳び箱3段と踏み板の組み合わせで練習します。
 跳び箱が1段減ったので、坂の高さが低くなります。
 この設定で
  (1)ぶらしゃがみポーズをとる練習
  (2)片足を振り上げる練習
  (3)もう片足で蹴る練習
  (4)肘を曲げて体を引き上げる練習
  (5)鉄棒に巻きつく練習
を行います。
 注意するのは、さっきと同じです。動作に意識を刷り込みながら練習します。
 3回鉄棒に巻きつくことができたら、合格。第2段階のステップ2はクリアです。

ステップ3 跳び箱2段と踏み板1枚を組み合わせての練習

  方法や手順は同じです。3回逆上がりができたら合格です。

ステップ4 跳び箱1段と踏み板1枚を組み合わせての練習

 ここでも3回逆上がりができたら合格です。

ステップ5 踏み板1枚だけで逆上がりをする練習

 このステップでは、踏み板1枚だけになります。踏み板1枚というのは、子どもたちにとっては大きなカベのようです。
 そこで、ロイター板を使うという方法もあります。
 これは大分の平川先生に教えてもらいました。
 3回できたら合格です。

ステップ6 地面から逆上がりをする練習

 ここでは、1回でも逆上がりができたら、合格です。
 練習途中に、「振る」「蹴る」「引く」「巻く」の4ポイントを意識させたり、「おしい。95点」とか言って点数をつけたりしてやっていました。
 このステップで、たとえまぐれであろうが1回でも逆上がりができると、クラスの子どもたちから強烈な拍手がもらえるという幸福を味わいます。
 ついでに、私から抱きしめられるという不幸も味わいます。
 




第3段階(技化した逆上がりを使いこなす)

 この第3段階では、鉄棒の高さに挑戦していきます。
 第2段階では、ぶらしゃがみポーズからの逆上がりでしたが、第3段階では立位からの逆上がりも練習させます。
 まあ、この段階は自主トレにしていましたので、私はあまり関与していません。
「先生、一番高いとこで、できた」
と報告に来た子には、えらかったねと褒めたぐらいの働きかけです。





(付録)一般ご家庭向けの第2段階
くるりんベルトで逆上がりを技化する

 公園の鉄棒などを使って逆上がりの練習をするときのことを書きます。
 跳び箱と踏み板を使わずに、くるりんベルトだけを使います。
 意識させる点は、第2段階で書きましたので参考にしてください。
 では、どうやってくるりんベルトを使うのかご説明します。

 くるりんベルトは、上達するにつれベルトの長さを調節していきます。逆上がりが3回できたら、ベルトの目盛りを1段階ずらしてベルトを伸ばすわけです。
 そして、ベルト最長で3回できたら、ベルトなしでの逆上がりに挑戦となります。
 この「ベルト最長」と「ベルトなし」とのギャップは、子どもにとってとても大きいです。
 では、どうやって克服するか。
 片方のベルトは、いつも通り鉄棒にかける。もう片方は担任がしっかりと握って持ち、これで逆上がりをさせます。
 ベルトを握った手の位置は、鉄棒付近とし、子どもの体重がかかっても耐えられる姿勢をとります。
 手で持っているぶんベルトが伸びたことになるので、「ベルトなし」までに、もう1段階のスモールステップを設定したことになるのです。
 また、ベルトにかかる体重の増減によって練習生の上達を実感できるというメリットもあります。

 
この写真は、たまたま撮影に行った小学校で遊んでいた青年にモデルをお願いしたものです。

補助者は左手でベルトを持ちます。。
演技者が倒立位になるのを、補助者は右手を腰か脚に添えて、演技者の上体を持ち上げます。
鉄棒を握っている幼児は、私の息子ですが、左手の位置が間違っています。
左手はくるりんベルトの外側にあるのが正しいです。


もし、分かりにくい点がありましたら、メールでお知らせください。 
以上で逆上がりマスターのステップを終わります。
長文を読んでいただき、ありがとうございました。

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