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      1998年度2年3組 逆上がりの記録

 この記録は、ニフティサーブのパティオにアップしたものを載せてあります。 
 人名などは、仮名に変えてあります。

98/03/04 23:25

 うれしいニュースです。 今日、うちのクラスの女の子が一人、逆上がりができるようになりました。
 ベルトも踏み板もなしで、自力でやりました。 さっそく連絡帳で、おうちに人に報告を書きました。 
 これで我が2年3組は、あと9人になりました。少しだけですが、前進しました。 もう残り時間が少ないですから、9人全員達成というのは無理でしょうが、最後まであがいてみます。 
 小学生高学年と低学年を比べると、同じようにくるりんベルトを使っているのに、なぜに低学年は上達が遅いのだろうか。 こういう疑問をずっと持っていました。 
 今、何となくこれが原因ではないか、という仮説です。

1.逆さ感覚の不足  
  高学年では体育授業での積み重ねで、ある程度の逆さ感覚ができあがっているので上達が早いのではないか。 
2.手足の協応動作の未完成  
  これも高学年では、体育で縄跳びをしたり跳び箱をしたりして、ある程度の 協応動作ができるようになっている。
3.筋力の不足  
  今、特訓をやっている2年生の何人かに、斜め懸垂をやってもらいました。最低の子どもで5回です。高学年を担任しているときは、5回というような少ない回数のこどもは  いなかったように記憶しています。

 こんなことが原因ではないかと思っています。 
 それからくるりんベルトですが、一番長さを伸ばしたのではできるのに、ベルトなしではなかなかできるようにはなりません。 
 これはベルトありと、なしとでは、子どもにとっては大きなギャップだと思うのです。
 このギャップを克服するためには、さらなるスモールステップを設けなければなりません。 
 この件につきましては、いつぞや教育雑誌の「ツーウェイ」で書いたことがあります。 
 その方法をクラスの子どもは「スペシャル」と言っています。 
 今、その「スペシャル」よりも有効ではないかというのを試しているところです。もし、あと9人のうち、4人が年度内に達成したときには、このパティオで報告したいと思っています。
                                                      

98/03/05 21:15

  やりました。 天気予報では雨とのことだったので、朝の休み時間に逆上がり特訓をしました。
 そこで見事、S君がやってのけました。 
 彼の感想は、「簡単やった。」とのこと。 
 そして2時間目の体育の時間にもやりました。逆上がりのできる子たちはハードルをゴールにしたミニサッカーでゲームをしてもらっている間に、特訓をしました。 
 そこで見事、Mさんが達成したのです。飛び上がって喜んでいました。 
 このMさんは9月10月と不登校だった女の子です。11月からはお母さんといっしょに登校してきています。母子分離不安というやつです。お母さんは授業中も教室にいらっしゃいます。1才のよちよち歩きのお子さんも同伴されていて、この子がかわいいんですよね。クラスの人気者です。 
 はじめは、毎日参観日のような気がして、授業がやりにくかったのですが、慣れました。 
 2月からは、お母さんの送り迎えだけで、Mさん一人で学級生活を送れるようになっています。 たくましくなったものです。 
 あと7人です。残り日数で特訓ができるのも12日となりました。 はたしてどこまでいけるでしょうか。とことん頑張ります。 
                                                      

98/03/07 17:50

> おめでとうございます。
> 次々に逆上がりができてくる子どもたちをみるのは、感動しますね。 

 ありがとうございます。もう初めて子どもがやったときは、私のほうが子どもより喜んでいます。この喜びを味わうために特訓をやっている部分がありますね。 

> つまり、逆さになった経験がない。逆さ感覚が0です。 

 逆さ感覚のない子は難しいですね。幼児のときから親が心がけていないといけませんね。

> それには鉄棒の高さが大切です。
> 鉄棒の高さは、「ヘソの高さ以下」がいいのです。 

 やっぱり高さが関係するんですね。2年生ですので、身長の低い子は、一番低い鉄棒でもみぞおちあたりになってしまいます。適当な台を探してみようかな。

> 低い鉄棒はなかなかなくて、本のための撮影をするために娘を連れてクルマで公
>園めぐりをしました。(真冬に半袖シャツにさせて撮影をしたひどい親です) 

 わちゃーこりゃひでー親だなー。しかし、それが世の中の役に立っているんだから、風邪さえひかなけりゃいいか。 
 そういう私も、冷たい鉄棒を無理矢理握らせてるんだから、同類みたいなもんです。失礼しました。 
 練習に来ている女の子が言いました。「逆上がりできて、お母さんを喜ばしてあげたいんや」 7人の子たちとともにがんばります。
                                                     

98/03/10 23:32

 やりました。今日、2人の女の子が逆上がり達成しました。 
 もう、感動ですね。なんて子どもは素晴らしいんだ。 
 1人はSさんというんですが、肥満度50パーセントの子です。5月から特訓を始めてから、全然練習をサボらなかった努力家です。「逆上がりできて、お母さんよろこばしてあげたいんや」と言った子です。 
 もう一人の子はTさんです。この子練習ぶりから、新しい知見を学びました。逆さ感覚についてのことです。 
 ベルトありとベルトなしのギャップをどうするか、ということについては後日アップをします。 
 なんせ、成績をせにゃならんもんで、すいません。 あと5人になりました。残り練習日数は8日。 
 マラソンでいうなら、競技場へもどってきてのラスト100メートルというところ。
 かつての瀬古のように13秒台でテープを切れるでしょうか。
                                                      

98/03/11 20:11

 昨日に引き続いて、今日11日にも、男子が2人、達成しました。 
 朝からあいにくの雨だったんですが、今思うと、これがよかったんです。
 私は教室で、逆上がりの練習ができないか、と考えました。 
 そして、教室に次のブツを持ち込みました。
1.マット1枚
2.跳び箱4段
3.踏み板1枚
4.体操用棒(長さ1.15m 直径3cm)1本 
 この棒は鉄棒よりも、やや太めになっています。子どもにとっては握りやすいんです。木目が滑り止めにもなります。 
 どんな使い方をしたかといいますと、棒の片方をランドセルとかを入れる棚にひっかけます。もう片方は担任が両手でしっかりと持ちます。もう1人の助手の女の子に棚にくっついて立ってもらい、棚の中を棒が横滑りしないように、両手で持ってもらいます。 下には、安全のためにマットを敷きます。
 あとは子どもの実力に合わせて、跳び箱と踏み板を使います。
 今日の放課後の特訓に残ったのは、男子2人でした。 
 1人の子は、踏み板1枚で逆上がりができるT君です。 
 もう1人は、跳び箱のヘッド+踏み板で、できるO君です。 
 私は跳び箱をセットするのが、おっくうだったので、2人とも踏み板1枚から始めました。 
 すると、2人が「やりやすい」と言うじゃありませんか。 
 T君は、踏み板なしでも、やってしまいました。これは逆上がりを達成したのと同じです。 
 マットがいいらしいのです。上靴が滑らないので、キックがやりやすいのだそうです。 
 かたやO君は、踏み板1枚ではできるんですが、板がなくなるとダメだったんです。
  雨は小雨だったので、鉄棒のところに2人と応援の女子とで行きました。 
 やっぱり鉄棒でできなければ、納得しがたいところが、私にありました。 
 乾いた雑巾で鉄棒を拭いて、させました。しかし、できません。 
 さきほどの棚の高さと、鉄棒の高さはほぼ同じなのです。 
 しかし、地面がすべります。 
 キックを効かせるために、体育倉庫から古いマットを1枚引っ張ってきました。鉄棒の下に敷くためです。 
 おまけマットをおいたせいで、何cmかは地面より高くなっています。 
 まずT君がこれでできました。 
 そして、マットのない地面からの挑戦で、とうとうT君はやりとげました。
「やったーやったーやっとできたーやったー」と、異常なほどの喜びようです。よほど嬉しかったのでしょう。  
 驚いたのは、O君です。すごい顔つきになっています。これまでにはない厳しい顔です。日頃にこにこしているとの全然ちがいます。あせったのでしょうね、きっと。 
 人間の力というのは分からないものです。火事場の馬鹿力といいますか、カエルの面にションベンといいますか。 
 それからのO君はすざまじい勢いでした。マット上での逆上がりは、「根性あがり」とでも名付けたいような鬼気せまるものでした。
 あれは落ちるまいとしてかなりの腹筋を使ったでしょうな。 
 そしていよいよ地面からの逆上がりです。 
 T君は余裕で応援しています。 
 奇跡はおきました。 
 O君もやってしまったのです。 
 あと、3人というとことまできました。 
 もう嬉しくて嬉しくてたまらない私は、今夜は仕事を止めて、ビールを1.5リットルほど飲むことにいたします。 
 応援、ありがとうございました。 また明日からがんばります。 
                                                       

98/03/12 23:51

> 学級経営上,非常にドラマチックな展開になりましたね。
> 読んでいる私もドキドキします。 

 わー、ありがとうございます。先生のような、心臓に剛毛の生えていらっしゃるかたにドキドキしていただくとは、私の筆力もなかなかのものです。(暴言多謝)

> 最後に残ってしまった子がいても,子ども達みんなが「がんばったね」とたたえ
>合うようであったら,これはもう最高ですよね。 

 そうなんです。今はこれが一番の問題なんです。 
 あと3人です。内訳は女・女・男です。 
 2人の女子は、跳び箱のヘッドと踏み板の組み合わせで、なんとか逆上がりができるという段階です。 
 もう一人の男子は、今日(12日)やっと、前回りおりができたレベルです。もう鉄棒が怖くてしかたなかった子です。 
 練習日数はあと6日です。 
 これまで子どもたちの様子を見てきましたので、おおよそですが、あと何日ぐらいで自力で達成しそうだ、という予想ができるようになりました。 
 今正直に言うと、6日では3人とも難しい状況です。 
 今日の学級懇談会でも、逆上がりが話題にあがりました。 
 私は、最後まで頑張ります、とお母さんがたと約束をしました。しかし、もうこれが限界だろうと思っています。 
 懇談が終わったときに、未達成の子を持つ親と個人的に話をしました。小さいときに逆さにされた経験が乏しいのです。その父親も逆上がりができなかったそうです。 
 そういうレディネスの少ない子どもたちです。 
 6日で3人。 
 もし、3人のうちの1人でも達成したら、これはえらいことです。 
 私は逆上がりの指導に自信を持ってもいいでしょう。 
 今日も雨です。教室で練習をしました。クラスの子どもは3人の練習ぶりにすごい声援をおくっています。 
 これまで、なかなかまとまらなかったクラスですが、2年生なりに気持ちがひとつになりつつあるのでしょうか。
                                                      

98/03/12 23:51

>もしかしたら、ロイター板も有効かもしれません。 

 先生、いいヒントをいただきました。踏み板ではなしに、ロイターを使ってみます。 
 これは有効です、きっと。 
 明日試してみます。

>すごいですね。全員達成まであと少しですね。
>遠くから願っています。 

 さきほどもM先生にお返事を書いたのですが、3人全員というのは難しいです。 
 Kさんのお母さんに懇談の後、言いました。「もしできなかったときは、よしよしゆうてなぐさめてやってください」と。  
 成績もしなくちゃいけないんですが、逆上がりのことが頭を離れなくて。何かいい方法がないかと考えています。 
 応援ありがあとうございます。 
                                                      

98/03/14 01:08

 今日13日は、ダメでした。2人の女の子は手の皮をむいてしまいました。2日で回復するのでしょうか。

> この子どもができるようになれば、全員達成の技術つかんだような
>ものですね。 

 まったくそうですね。そうなると私は逆上がり指導の達人です。
 今日は用務員さんも、O君の補助をしてくれていました。

> あせる必要はないと思います。
>どの子も、最初の段階に比べて上手になっていると思います。
>そのことをほめてあげたいと思います。 

 そうですね。結果ではなしに努力の過程が肝心ですね。その過程で学んだことが、子どもの身になっていくんでしょう。

> 別の意味で、全員達成の裏には、ついていけない子どもへの
>フォローが必要だと思っています。 

 このことは、今回の逆上がりで、私が考えておかなければいけないことですね。 
 ありがとうございます。 
 そうそう、ロイター板を試してみました。これ、いいです。しやすいと子どもが言っていました。

>ホームページでその取り組みが公開されるといいなと思っています。 

 あ、これはしたいです。デジカメを期末手当で買おうかなと密かに思っているのです。我が家の大蔵省を接待して、まるめこむ作戦です。 
 先生、手頃なデジカメがありましたら、教えていただけませんか。

>こういうとき、体育館の室内鉄棒があればいいなと思います。 

これは同感です。痛切に思います。
                                                      

98/03/17 17:25

 わおー。みなさん、こんにちは。 
 やりました。 
 今日、17日、3時間目の休み時間、Kさんが逆上がり、達成しました。 
 もう、泣きの涙です。 
 このKさんは、震災で姫路に疎開してきた子です。 
 お父さんも逆上がりができなかったという子です。 
 あと2人になりました。 
 くるりんベルトありと、なしのギャップを克服するための試案があります。 
 通常は立って鉄棒を握って構えますが、試案では「ぶらしゃがみ」というポーズで構えます。 
 今から、エアロビック教室に行って来ます。成績はいつできるのやら。
                                                      

98/03/19 01:01

>ぶらさがって、しゃがむの略語ですか?

 大当たり。その通りです。 このほうが、立位からよりも、成功率が高いような気がします。 今になって、データをとっておけばよかったと後悔しているところです。

>あと2人ですね。がんばって下さい。

 残るは2人なんですが、男子の一人はあきらめてしまいました。特訓は強制ではありませんので、これは仕方ないです。 
 もう一人の女子は、今日18日の特訓で、手のひらにマメを4つ作ってしまいました。一番大きなマメは、針を使って水を抜きました。 
 特訓ができるのは、もう19.20の2日間だけです。 
 私としては、こんなにたくさんマメを作って痛い思いをさせてまで、特訓を続ける気持ちはありません。 
 越えてはならない一線だと思っています。これ以上は、体罰と言われてもしかたないような一線です。 
 明日の練習は、彼女の意思に委ねました。おうちの人にも、連絡帳でその旨をお伝えしました。 
 明日になってみなければ分かりませんが、これでもう特訓は終わりになるかもしれません。 
 私としては、彼女に続けてもらいたのですが、さて、どうなるでしょうか。 
                                                      

逆上がり特訓、最終日 98/03/20 17:52

 みなさん、こんにちは。 
 30人中28人まで逆上がりを達成し、あと2人というところまできました。 
 本日3月20日が、特訓最終日です。 
 ところが、2人のうちの1人、O君は法事で鹿児島へ行ってしまい、事故欠です。 はたして、結果はいかに。

 朝起きると、雨だった。運動場での特訓はできない。教室に持ち込んでいたマットやロイター板は体育館に片づけてしまった。 
 雨のせいにして、未達成2人で終わったほうが、誰も傷つかないしキレイだと思った。 
 出勤して一服しながら考えた。もう一度、道具を教室に持ち込むか。それとも終わるか。
「すごくやる気になっていますので、思う存分やらせて下さい。」 
 Yさんのお母さんからのメッセージが頭に浮かんだ瞬間、決心した。
 道具を教室に持ち込もう。最後の最後まであきらめてはいけない。結果として出なくても、過程に意味がある。

 1時間目の休み時間。Yさんは踏み板1枚の設定で、10回のうち1回ができる程度の成功率。このところあまり上達していない。 
 2時間目の休み時間。もう時間がないので、踏み板をはずしての練習に切り替える。あと1センチ、左手を曲げて体を持ち上げればできるところまできた。 
 彼女の体が浮き、逆さになったときに、わずかに体操棒をさげてみた。するとできたのだ。やった。 
 しかし、できたとはいえ、これは鉄棒ではない。教室の仮の施設である。 
 雨は止んでいる。 
 ほかの子どもたちには、人形劇の発表会を続けるように指示し、Yさんと運動場へ出た。 
 鉄棒の下の水たまりをスコップですくい、足場をつくる。
「よし。いけ。ええぞ。」 
 うんと強くうなずいた。  
 たった1回で、彼女は重めの体重を自力で引き上げ、逆上がりをなしとげたではないか。 
 成功だ。達成だ。 
 私は、声がでなかった。あまりにも嬉しいと、人間は声が出なくなるらしい。 
 彼女の顔はゆがんでいた。そしてやっぱり、黙っていた。 
 8歳の少女と42歳の中年は、しっかと抱き合ったのである。

 というわけで、30人中29人が達成しました。 
 O君は、最初つばめや布団干しもできなかったのに、前回り降りができるようになりました。ちゃんと上達しています。 
 船場小学校2年3組の逆上がりレポートは、これですべて終了いたします。 
 たくさんの励まし、ありがとうございました。 
 またお目にかかる日を楽しみにしております。
 
                                                      
 

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