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授業教科等/体育/小学校/全学年  TOSSランドナンバー1214017


第10回日本体育教育技術学会 自由発表資料
                                    2002.2.10
    二重跳び
  −太田、藤澤式スモールステップでみるみる上達−
                    兵庫県姫路市立四郷小学校   
                     TOSS体育縄跳び研究会
                              藤澤 芳昭

 
 短縄跳びに必要な基礎感覚は、次の4点である。
 1 リズム感覚
 2 手首回旋覚
 3 跳感覚
 4 手足協応感覚     
  (『「縄とび運動」の教え方』ビデオ 明治図書より) 
 これを元にして、二重跳びのテクニカルポイントを考えた。
 1 速いロープ回旋力
 2 高い跳躍力
 3 これらを協応させる調整力 
 
 
1.指導計画(全7時間)
 1単位時間全てを縄跳び運動に当てるのではなく、なわとびは主運動の前の準備運動的な位置づけとし、基礎感覚を養いながら基礎技能が身に付き、二重跳びへスムーズに入っていけるような計画を立てた。
 

 第1次(第1時)

第2次(第1時〜3時)

 第3次(第1時〜3時)

・基礎的事項の確認
・実態調査


 

 ・手首回旋感覚養成
 ・跳感覚養成
 ・基礎的事項の確認
 ・太田式ステップ1〜9
 

・手足協応感覚養成
・太田式ステップ1〜11


 
 
2.第1次−第1時 (4/17)
(1)基礎的事項の確認1(ロープの長さ)
    適切なロープの長さを知らない子が多い。
    ロープの中央を片足で踏んだとき、ロープの端が胸の高さになるように調節する。
    これは教室でやっておくべきだった。
 
(2)実態調査
  5年1組38人の実態調査を行った。

 地上で何回二重跳びができますか。
 
    ・二重跳びが連続10回以上できる・・20人 
    ・二重跳びが連続9回できる・・・・  1人
    ・二重跳びが連続5回できる・・・・  1人
    ・二重跳びが連続4回できる・・・・  1人
    ・二重跳びが連続3回できる・・・・  2人 
    ・二重跳びが連続2回できる・・・・  3人
    ・二重跳びが1回だけできる・・・・  7人
    ・1回もできない・・・・・・・・・  3人
  ここまでで第1時は終了。
  9回以下の子は18人。連続10回を基準とすると20人がクリアしたので、達成率は52.6%である。
 
 
 
3.第2次−第1時 (7/17)
 1学期早々から運動会の練習が入り、また、運動会が終わったと思ったら水泳が始まり、なわとびの授業の第2次は7月末になった。
 まず、縄を回しながら歩いてトラックを1周し、早くゴールした子から男子2列女子2列の長方形型の隊形に整列した。
 
(1)手首回旋感覚養成
    体側回旋と8の字回旋の2種類の運動を行う。
    肩から大きく回す → 肘から回す → 手首で回す
    動きをこのように3段階のステップで行う。右手、左手ともに行った。
     
(2)跳感覚を養成する動き
    短縄の飛び越しと短縄の連続飛び越しを行った。
 
(3)基礎的事項の確認2(腕の構え方)
 グリップを持ったとき、腕はどのように構えたらいいでしょうか。
  1.脇を広くあけて構える。
  2.脇に肘をつけて構える。 
    子どもたちの予想はこうなった。  
      1.脇を広くあけて構える。・・・・4人
      2.脇に肘をつけて構える。・・・34人
    人数を確認したところで、実際に試してもらう。
      1.脇を広くあけて構える。・・・・0人
      2.脇に肘をつけて構える。・・・38人
    全員が2の意見に変わった。
    「その通りです。脇を締めたほうが跳びやすくなります。
    それには、指の爪が見えるようにします。そして、親指を外に向けます。」と説明をした。
 
(4)太田、藤澤式スモールステップ
    太田、藤澤式スモールステップの元となるステップがある。
    福井教育サークルの辻岡義介氏が体育健康メーリングリスト上で2000年4月2日に公開したものがそれだ。
    考案者はINF国際なわとび競技連盟会長の太田昌秀氏である。
    辻岡氏は次のようなステップを示した。
 
 なわとび2回旋(2重跳び)ボード上で
  @1回旋5回→ 10回→15回→20回
  A1回旋数回と2回旋を繰り返す。
   1回旋数回・2回旋・1回旋数回・2回旋
  B1回旋・2回旋・1回旋・2回旋
  C2回旋連続 3→5→7→10→13→15→20
 いきなり、2回旋を何回もやらせていくよりも、段階表を全部塗りつぶして いった方が結局は早く上達できる。 
 
当時、2年生であった愚息は二重跳びが1回しかできなかった。それもしゃがみ込んでしまうような二重跳び1回だった。
校区の小学校へ愚息と行き、太田式ステップを追試してみた。
すると、わずか30分の練習で、地上での連続11回を達成したのだ。これには驚いた。凄い効果だ。
この愚息の追試を元にし、ABをさらにスモールステップ化したものを考えた。
これを「太田、藤澤式スモールステップ」と呼ぶことにした。

太田、藤澤式スモールステップは全部で11ある。
表記上、記号を使用する。
   ○・・・一回旋一跳躍を1回跳ぶ
   ◎・・・二回旋一跳躍を1回跳ぶ










 
ステップ1   ○-○-○-◎
ステップ2   ○-○-○-◎-○-○-○-◎
ステップ3   ○-○-○-◎-○-○-○-◎-○-○-○-◎
ステップ4   ○-○-◎
ステップ5   ○-○-◎-○-○-◎
ステップ6   ○-○-◎-○-○-◎-○-○-◎
ステップ7   ○-◎
ステップ8   ○-◎-○-◎
ステップ9   ○-◎-○-◎-○-◎
ステップ10  ○-◎-◎   (二重跳び連続2回)
ステップ11  ○-◎-◎-◎  (二重跳び連続3回) 

ステップ1は、1回旋−1回旋−1回旋−2回旋となる。

 イチ・ニ・サン・ドーンだよ。
 イチで1回旋、ニで1回旋、サンで1回旋、ドーンで2回旋跳びます。 
と指示し、見本として上手な子に跳んでもらうと、他の子どもたちには分かりよい。
本時はスモールステップの1〜3までを実施し、その後自分の最高回数にチャレンジしてもらった。
最高回数チャレンジでは、新たに5人が連続10回を達成。65.7%となる。
 
 
4.第2次−第2時 (9/14)
縄を回しながらトラック1周でアップした後、体側回旋と8の字回旋で手首回旋感覚養成の練習をし、短縄の飛び越しで跳感覚養成の練習をした。
そして、発問を一つ。
 
(1)基礎的事項の確認3(足の格好)

 跳んで地面に降りたとき、足はどのような格好になっていたらいいでしょうか。
  1.かかとを地面につける。
  2.かかとは地面につけない。
 

子どもたちの予想と試行後の人数はこう変わった。
  1.かかとを地面につける。・・・・1人 →  3人
  2.かかとは地面につけない。・・38人 → 36人

1が増えた。ちょっと驚いた。3人は縄跳びの初心の子どもたちである。 
「かかとを地面につけないほうが筋弾性という筋肉の働きを利用できるので、縄跳びには有利になります。」
と説明した。
 
(2)太田、藤澤式スモールステップ1〜6の練習と最高回数チャレンジ
転入生が1人あり、この子は軽く連続10回を達成した。
新たな達成者はいなかったものの、転入生のおかげで66.6%となる。
 
 
 
5.第2次−第3時 (9/18)
縄を回しながらスキップでトラックの横断をする。スキップは大変むずかしそうだった。
長方形の隊形に整列し、体側回旋、頭上回旋、8の字回旋で手首回旋感覚養成の練習をした。
 
(1)基礎的事項の確認4(跳ぶ位置)
 跳ぶとき、あっちこっちに動きながら跳んだほうがいいでしょうか。それとも、同じ位置で跳んだほうがいいでしょうか。
   1.あっちこっちと動きながら跳ぶ。
   2.同じ位置で跳ぶ。 

予想と試行後はこうなった。
   1.あっちこっちと動きながら跳ぶ。・・・4人 →  3人
   2.同じ位置で跳ぶ。・・・・・・・・・35人 → 36人

「同じ位置で跳んだほうが、リズムよく跳ぶことができます。それに疲れも少ないです。」
と説明した。
 
(2)太田、藤澤式スモールステップ1〜9
地面に円をかいて、その円の中で位置で跳ぶように指示した。
    
(3)30秒間速跳びに挑戦
「楽しい体育の授業」誌 1995年12月号に次の文を見つけた。




 
 一つの技が習熟するには、10回以上できることが望ましい。前筑波大学附属小の林恒明氏は、1回旋1跳躍が70回以上できると二重跳びが1回できるという。
      『楽しい体育の授業』No.63 P9  根本正雄氏 
 
  二重跳びができるには、まず一回旋一跳躍が確実に速く跳べることが必要である。目安は、30秒間 70回以上
       『楽しい体育の授業』No.63 P34 石黒修氏
時計で30秒間を計り、1回旋1跳躍が何回跳べるかを調べてみた。
 
 
 表 30秒間速跳び回数と、二重跳び10回達成者との関係 (9/18)

30秒間速跳び(回)

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

30秒間速跳び(人)

 1

 0

 0

 0

 2

11

11

 6

 5

 3

二重跳び達成(人)
 

 0
 

 0
 

 0
 

 0
 

 1
 

 4
 

 7
 

 6
 

 5
 

 3
 
 
30秒間速跳びが80回以上の子どもは間違いなく二重跳びができている。
なるほど70回という数字は納得できる回数である。
ちなみに、三重跳びができる子は3人いるが、この3人は3人とも100回台であった。
このあと、最高回数にチャレンジ。

新たに2人が連続10回を達成。71.7%となる。速跳びの成果か。 
 
授業中だけではなく休み時間も練習してほしいとの願いから「二重跳びマスターカード」を連続10回未達成の子どもたちに配布した。
この効果があったのか、9月19日(水)の昼休みに一人が達成。次いで9月25日(火)の昼休みに一人が達成し、76.9%となる。
 
(4)第2次の反省
 2001年8月19日(日)、岡山で根本体育直伝講座が開かれた。
 模擬授業を参観された根本正雄先生は、模擬授業を4つの観点から評価された。

 1.感じる(テクニカルポイント)
 2.分かる(発問、指示)
 3.できる(場づくり)
 4.関わる(触れあい)

第2次の授業で特に不足しているのは「できる(場づくり)」と「関わる(触れあい)」である。
場作りには「ジャンピングボード」を活用しよう。ジャンピングボードはテクニカルポイントである高い跳躍力の助けにもなる。
級友との触れあいには野本式練習法を取り入れることにした。

         野本式練習法(野本和世氏考案)

 音を聞かせます。
 二重跳びのとき、ロープが回転するときの音を聞かせます。
 シュシュン、シュシュンという音です。タターン、タターンとも表現できます。
 この音に合わせて二重跳びをさせます。
 させかたです。
 できない子を、できる子が囲むようにして円陣になります。そして、一斉に
二重跳びを始めます。
 すると、できない子も周りのリズムに乗って、やってしまうことがあります。
 二重跳びは、音とリズムです。 

そこで、次のような展開案を考えた。

 ○手足協応感覚の養成は一斉指導で行う。
 ○ジャンピングボードを使った太田、藤澤式スモールステップの練習は各班で行う。

全員に「二重跳びマスターカード」を配布し、練習メニューを提示しておき、次に何をすればいいのかを明確にする。
 
 
6.第3次−第1時 (10/5)
(1)二重跳びマスターカードの説明
まず、授業の導入部で「二重跳びマスターカード」の説明を行った。
班で練習をしたときに自分ができたステップの欄には○をつけていくこと、できなくても次のステップに進むこと、連続10回をクリアしている子は後ろ回しの二重跳びをしてもいいということを伝えた。

(2)手足協応感覚養成(一斉指導)
 @1回旋1跳躍のリズム(トン、パン、トン、パンのリズム)
  ・リズム打ち  ・もも打ち
 A二重跳びのリズム(トン、パ、パ、トン、パ、パのリズム)
  ・リズム打ち  ・もも打ち
 B手ぶら跳び
  ・回すふりをして二重跳びのリズムで跳ぶ
 Cから回し跳び
  ・両手に半折のロープを持って二重跳びのリズムで跳ぶ
   これは跳び縄が1人に2本必要なため、2人1組で交代して行った。
 
 
7.第3次−第2時 (10/9)
(1)テクニカルポイント(速いロープ回旋力確保)
 二重跳びや三重跳びのことを「多回旋跳び」といいます。
さて、多回旋跳びの世界チャンピオンは何重跳びができるでしょうか。 

「五重跳び」「七重跳び」「八重跳び」
子どもたちは好きな数を言っている。

 世界チャンピオンは日本人です。兵庫県に住んでいます。
 木内友也という人です。この人は六重跳びをします。
 世界チャンピオンは、グリップを回すときに秘密があると言っています。
 その秘密とは何だと思いますか。
 ※木内友也 INF国際なわとび連盟世界大会99年世界ランキング1位 

「人差し指を伸ばして持つ」
「軽く回す」
「できるだけ速く回す」
「手首で回す」
子どもたちは自分の経験からの発言をした。
 実は、手首は回さずに上下に振るのです。円をかかずに直線で強く振ります。そうすると、速くなわを回すことができます。 
    



このあと、班別練習に入る。
班別練習では、グリップの振り方を意識させる。
新たに1人が連続10回を達成。39人中32人達成で82.0%となる。
 
 
8.第3次−第3時 (10/12)
本時が縄跳び最後の授業である。
手首回旋感覚養成の頭上回旋、前方回旋、体側回旋、8の字回旋の復習。
班別練習の後、最高回数チャレンジ。
新たに1人が達成し、39人中33人で84.6%となる。
  
 
9.第3次以降、自主トレの成果
  10/23(火)   新たに1人が連続10回を達成。39人中34人で87.1%
  10/25(木)   新たに1人が連続10回を達成。39人中35人で89.7%
  10/26(金)   新たに1人が連続10回を達成。39人中36人で92.3%
  11/19(火)   新たに1人が連続10回を達成。39人中37人で94.8% 
   1/18(金)   新たに1人が連続10回を達成。39人中38人で97.4%
   2/7(木)   最後の1人が連続10回を達成。39人中39人で100%


10.2001年4月と2002年2月の比較
    ・二重跳びが連続10回以上できる・20人→39人
    ・二重跳びが連続9回できる・・・・  1人→ 0人
    ・二重跳びが連続6回できる・・・・  0人→ 0人
    ・二重跳びが連続5回できる・・・・  1人→ 0人
    ・二重跳びが連続4回できる・・・・  1人→ 0人
    ・二重跳びが連続3回できる・・・・  2人→ 0人
    ・二重跳びが連続2回できる・・・・  3人→ 0人
    ・二重跳びが1回だけできる・・・・  7人→ 0人
    ・1回もできない・・・・・・・・・・・・・・  3人→ 0人

 
 7月から授業を始めてから、連続10回全員達成まで8か月かかった。
 レポートのタイトルには「みるみる上達」と書いてはみたが、8か月では「みるみる」と
いうところまではいかない。もっといい方法はないものだろうか。
 特効薬を求めて、これからも試行錯誤していきたい。

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