福島県 山巡り編
今回のお話は平成24年8月に福島県における山巡りの話である。 大層なことを言うようであるが、東日本大震災とそれに引き続く原発事故のボランティアを意識したものである。もちろん、本来ならボランティアとして骨身を惜しまず現地に赴き復旧活動をするというのが本道ではあるが、微力な我が身としては現地に乗り込んでもはたして役に立つどころかかえって迷惑になるのが関の山なのである。
もっとも、これまでに募金やふるさと納税などで若干のお手伝いはしていたが、ここは一度福島県に旅行して現地で観光、宿泊、現金を落としていくのも福島県のみなさんのためになるのではないかと思い立ったのである。
ところで肝腎の山の話であるが、日本百名山のうち福島県に存在する山は6座ある。このうち他県との県境付近にある会津駒ヶ岳、燧ヶ岳(ひうちがだけ)、那須が岳は栃木県あるいは群馬県の山と見るべきである。 ということは残りの3座、磐梯山(ばんだいさん)、吾妻山(あづまやま)、安達太良山(あだたらやま)が福島県を代表する百名山ということになる。 このうち、磐梯山は会津磐梯山と言うように誰でも知っている山なのであるが、残りの2座ははっきり言ってご存知の無い方も多いと思われ百名山のなかでも失礼ながらちとマイナーな感じというか、渋めの山なのである。 そもそも、福島県という存在であるが、もし関東地方在住なら福島県出身の人が身近にいるであろうが関西に住んでいる人間にとってはなじみが少ない。 また、福島県出身の友人も周囲にはおらず、福島弁を聞いた事もない。地理的に見ても福島県は東北なのか関東なのかも分からない。つまり、非常になじみが薄い地域ということなのである。
今回の災害で福島県は日本中、あるいは世界中にその名を知られるようになったわけであるが、もしこのようなことが発生しなかったとするとあえて福島県に行ってこの3座を山登りするという気にならず、百名山登頂に当たって後回しになっていた可能性が高い。
つまり、今回の山行きは思い切って福島県の山に集中登山しつつ、しかも県民の方々のお役に立てるかもしれないという一石二鳥のプランになる。 今回のお話しは、この福島県集中登山と福島県の現状を報告するといういつもとは違う高度な内容なのである。
というわけで前置きはともかく平成24年8月12日、新幹線にて福島県は郡山駅に到着したのであった。ここで、レンタカーを借り郡山からまっすぐ磐梯山へ。 ありがたいことにこの辺を走っているスカイラインも観光刺激策ですべて無料になっていた。 1日目は裏磐梯の国民宿舎に宿泊となった。
2日目は西吾妻山。 この山は 百名山というのにほんと人がおらずお盆の季節というのにすれ違ったのは数人であった。 その後、岳温泉というところに移動して宿泊した。
3日目は安達太良山(あただらやま)。 この山は「智恵子抄」で有名な山であるが、たおやかな外観とは大違いで頂上付近はガスと強風でえらいことになっていた。 そのまま、強風の稜線を進み、くろがね温泉へ降りようとしたが、なんと火山性ガスが吹き出ており通行禁止。 ふたたび、強風のなかを引き返しヘトヘトになりながら下山。
4日目は、最終日。 この日こそはのんびり山と温泉を楽しもうと思っておったのであるが、やはり、性なのか浄土平から一切経山へピストンした後、東吾妻山へ登山。
結局、4日間にわたりレンタカーを駆使して福島県内の山を登り尽くしたわけであるが、不祥わたくし、ここ20年ほどあちこちの山登りをしているが、今回の山行きが間違いなく一番の美しい光景であった。 また、この自然を維持、保護されたであろう人々のご苦労に頭が下がる思いであった。
とくに、裏磐梯湿原、安達太良高原や浄土平周辺の磐梯朝日国立公園はこの世のものと思えないほどの美しさであった。
問題は先の震災、原発事故のあとにお客さんの数がとても少ないとのことである。 山小屋のおじさんの話では特に震災の年は最悪で今年になってからちょっと持ち直したが今年も例年に比べ全くだめとのこと。 物理的な震災の影響はほとんど見られないにもかかわらず学校関係の林間やキャンプがゼロでこれが大きいとのことである。 とにかく風評による被害が大きいようであった。
結局、福島県内に4日間滞在して宿泊を裏磐梯の国民宿舎と二本松市の岳温泉というところにとったわけであるがどちらの宿の人もとても親切であった。福島の人はぱっと見は愛想ないよう見えるが実はぼくとつなだけでとても親切な人であった。。
岳温泉でもお客さんの数は激減しているようであるが地元の青年団みたいな人ががんばっていて、なんとか町を盛り上げようとお盆の間は温泉街で毎晩アトラクションみたいなものをやっていた。 地元の高校のブラスバンド演奏や本物の消防車がやってきて消防団の人が放水実演したり子供さんに放水体験させたりなんとかお客さんに楽しんでもらおうという意気込みが感じられた。 お客さん自体が少ないのでちょっと寂しい感じであったが、まさに手作りの催しで岳温泉の人の心がこもっておりだんだん泣けてきたのである。また大阪からこっちへ来たというと、お店の人や青年団のみんなに感謝していただき、福島に来てもらってうれしいとのこと。 たしかに震災のせいで少々の物理的な影響は見受けられるが、基本的には旅行しても問題はないし、自然はおおらかですばらしい。 なにより、お食事がおいしいし、人々は優しくてあったかい印象をもった。
結論であるが、福島県はほんといいところであった。 観光に関してはまったく震災の影響はない。 福島県の人は日本中世界中からみんなに来て欲しがっているようである。
以上、福島県山巡りの報告であった。 皆様も一度機会があれば訪れるのもいいと思われる。