〜after the Sanctuary〜


薄れていく意識の中、誰かが俺の身体を抱きあげた。
その手を俺は知っていて。
抱きとめる胸の厚さも腕の強さも指の長ささえ知っていて。

くやしいけど、軽々と抱えらてしまうことよりも、どこかで甘い気持ちが生まれることに逆らえない。

戦いに傷ついた身体から痛みが消え、極限まで消耗した体力が癒される。
不思議な、やすらぎに満ちた感覚。
ほのかに香るのは、あの名もない花と同じもの。


だから心によみがえるデジャビュ。


ジャミールで過ごした7日間に、俺たちは互いをよく知った。
なにを持ち、なにを持たないか。
あるいは多くを失い、あるいは欠けた自分を埋めることの必要性。
そういったすべてを。

あなたになにも出来ない俺だけど。
あなたは俺が俺であることを慈しんでいるという。


いっか、このまま甘えてしまおう。

他の誰でもない、あなただから。

いつも側にいてくれる、大切な人だから。





『もう少しだけ、このままで。
あなたの温もりを感じていたい。
いつでもそれが思い出せるほど、熱く---』











the end of "after the Sanctuary"
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