光と愛はとても似ている。

失うことをおそれて何もしない。

そんなわけにはいかないところ。

だから“Our love is blind.”。

光がささない瞳でも。

絶えずあなたを感じてる。



blinded/side Shiryu





■blinded/side Shiryu■





「紫龍、わたしをあまり心配させないでくださいね」
「はい、ムウ」
「返事が早すぎます。あなたは本当に無茶ばかり」
「…それは、その」
「聖闘士ならば当然の行為だとは言わせませんよ」
「………」
「ほら、顔は下げないで。包帯が取り替えにくいでしょう」


紫龍の傷付いた身体や閉ざされた瞳に包帯を巻くことなどムウにとっては慣れに慣れ過ぎた簡単な作業だ。
が、説教ついででわざとゆっくり手を動かしてみる。

それは紫龍と過ごす時間を慈しんでいる証拠。

自分の考えなどすべて見透かされてることに赤面しながら、それでも。
紫龍は大きく優しい小宇宙が心地よくって、行儀よくベッドに座り、されるがままになっていた。


---どうしても勝てないな、この人には。
---経験や実力や、そういうものとは異なるところで。
---出会ったときから、ずっと。


ぼんやりと思っていると。
 指先の温度がやんわりと離れて、治療が終わったことが分かった。
 ただ、なにやらジッと見つめられてる気配を感じる。

「どうかしましたか?」
「あなたの瞳の色を忘れそうになるのがこわくて」
「昨日は忘れることはできないって言ってたでしょう?」

 くすりと笑う。

「そうでしたね。ついつい、あなたをいじめてしまいたくなるのはどうしてでしょう」
「じゃあ俺は。そんな意地悪なあなたを見たくないから。だから、このままでいいんです」
 
いたずらな微笑と思いがけない言葉。

ふわりと紫龍の髪を梳くようにして優しく寝かしつけさせる、いつもと変わらぬムウの動作、けれども。


もしも瞳を閉ざしていなければ。
紫龍ははじめてムウが驚く顔を見ることができたかもしれなかった。










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