■LOVE TRIANGLE@JAPAN■
〜side Usagi.Ami.Rei.Makoto+Minako〜





「ねえねえ、みんな。コレ見て、コレ!」
「なによ、はしゃいじゃって。また新しいアイドル?好きねぇ、美奈も」

 いつもの喫茶店。いつもの放課後。
 5人娘がそろえば、場所も時間も関係ない。
 いつでもどこでも明るくにぎやか楽しいひととき。話題に事欠くことはない。

 アイドル話になるとテンションの行き着くところを知らない美奈子の1オクターブうわずった声に、呆れたといわんばかりのクールな顔でレイが水をさすのは、いつものこと。

「まあまあ、レイちゃん。美奈子ちゃんのアイドル眼にかなった人なら、ちゃんと見る価値はあるさ」
「そーだよ、まこちゃんの言う通り!ほんっと、レイちゃんは男の人に興味もたなきゃだめでしょうが。TA女学院の制服が泣いちゃうよぉ」
「だめよ、うさぎちゃん。こういう場合、男の人と学校の制服とは関係ないと思うのよ」

 フォローするまことに、調子にのるうさぎが続き、真面目な(ピントは合っていない)亜美のつっこみで不毛な話題に終止符が打たれるのも、いつものこと。

 しかし、今日の美奈子の勢いは違った。
 すっくと立ち上がり雑誌を高々と頭上にかざし、ほかのメンバーの注目を集めて、一言。

「みんな、分かっちゃないわね、この愛野美奈子の目の輝きが。コレよ、コレ!みちるさんが載ってるの!
 し、か、も。外国の超リッチ!ものすっごい一流ホテルの御曹子からプロポーズされてるって記事よ〜っ」
「えええええぇぇええぇぇっ!!??」

 さっきまでの傍観のんびり我関せずムードはどこへやら。
 美奈子を押し倒して雑誌を奪い、ひさびさに目にするみちるの美貌と容姿にありったけの褒め言葉を贈ってはしゃいだ後。
 亜美が代表で、写真の横に添えられた記事を読み始めた。

「『ヨーロッパ演奏旅行中のヴァイオリニスト海王みちるさん、カッコ15歳カッコ閉じる。
 が、ヨーロッパ屈指の一流名門ホテルのプリンスにプロポーズされていたことが、関係者により明らかになった』
 さすが、みちるさんね。相手のスケールが違うわ」
「すっごいすっご〜い!そのホテル、あたしも知ってる!まもちゃんとぉ、いつか泊まってみたいな〜って思ってたもん」
「あそこのケーキ、一度は食べなきゃ死ねない!ってくらい美味しくて有名なんだよな。レシピ欲しいな〜。あ、それで?続きはなんて書いてあるんだい、亜美ちゃん」
「ええっと…『早々に婚約披露をしたいとするプリンスとは対照的に、海王さんは年齢を理由に態度を保留。かねてからF1テストドライバーの天王はるかさんとの交際が噂されている…』」
「ど〜せだったらさぁ、とびっきりカッコイイはるかさんの写真も、載っけてもらいたいわよね」
「美奈は黙る」

 人さし指を唇にあてて、恐い顔をしてみせるレイにウインクして、亜美から雑誌を奪い返した美奈子は、最後まで記事を読み上げてみせた。

「コホン。『…天王はるかさんとの交際が噂されている彼女には、こちらが本命といったところか。近々正式にプロポーズを拒否する見方が強まっている。
 しかし海王さんの人気は各国セレブ間で非常に高く、上流階級の独身男性に狙われていることはあまりにも有名。
 今後もホットでビッグな話題で紙面を騒がし続けることは間違いないだろう。どうやら彼女の魅力の虜になるのは音楽だけではなさそうだ』…だって〜〜〜!!」

 全員で『きゃあああぁぁぁっ』と歓喜の叫びをあげて、ためいき。

「はああ、やっぱスゴイね、みちるさん」

 みんなの前で口にしたことはないが、まことの憧れの女性はみちるなのだ。みちるのように女らしくて美人だったら、なんて。
 そして、もうひとりの憧れの人、はるかのことを思う。はるかのように強くなりたいと、ずっと願ってた。

「でも、はるかさんもみちるさんと一緒にいるんだろ?そのプリンスも、すごいことするよな」
「ホントよね。あの、ふたりの仲、わからないってこと、ないと思うんだけど」

 神秘なオリエンタル美人で名高いレイも、エレガントな容姿とミステリアスな雰囲気、美麗で妖艶な微笑みをたたえたみちるには適わない。
 それを快く思えるのもみちるの魅力だろうが、はるかとの仲(いちゃつき具合?)を考えると、プロポーズする男性がどんな人物であれ、
 身のほど知らずと思わざるをえないというのが正直なところで。

「あのふたりっ。そういう仲だって一目瞭然なのに…どうして分かってあげないのかしら」
「はいぃっ?亜美ちゅわ〜ん?質問!『そういう仲』って、どーいう仲なんですか!?『恋人同士以上だ』っていう、バ〜イはるかさんの、あれですかっ!?」

 冷静なようで興奮してるのか、本日初めてのピントが合ってない亜美のセリフに、喜んだうさぎが大はしゃぎで突っ込む。

「『そういう仲』っていうのは、女の子同士でも…!。あの、わたし、そういう意味じゃないのよ、その」

 耳まで真っ赤にして紅茶を飲み始める亜美の背中をたたいて、ノリノリの調子で美奈子が言う。

「でもさ、はるかさんもみちるさんも、ふたりの世界満喫って感じだったじゃない?誰も入れないし壊せないというかさぁ。ふたりとも強いし。
 な〜んか、良く考えたら相手の人!みちるさんに手、出すなんて。はるかさんにボッコボコにされてたりして!」
「ははっ、言えてるぅ」
「じゃあ、次の記事は…」
「そのプリンスくんの入院と、ふたりのアツアツの写真の豪華ダブル2本立てだったりして〜〜〜!!」

 全員で『きゃあああぁぁぁっ』と狂喜の叫びをあげて、ためいき。

「シャレ、なんない。おおいに………ありうる、かも」
「はるかさん、そういうの容赦なさそうだし」
「みちるさんも止めるとは思えないわよね」
「せめて入院費の払える相手で良かったわ」
「あ〜みちゅわ〜ん」
 

 いつもの喫茶店。いつもの放課後。
 5人娘がそろえば、場所も時間も関係ない。
 いつでもどこでも明るくにぎやかで楽しいひととき。今日も話題に事欠くことはなかった。

 平和な素晴らしいひととき。話の内容だけが、ハードであった。
 だが、真相はもっとハードだったことを、5人娘はまだ知らず。

 おいしくお茶を飲みながら、他愛もない話に花を咲かせつづけるのだった。




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