315.あげる。
〜Happy Valentine's Day/side KAZUHA〜





物心ついたころには、もう一緒。高校生になった、今も一緒。
オトナになったら......オトナになっても、一緒におれたらいいなァ。


アタシとアイツは幼馴染み。


行事という行事、イベントというイベントは、家庭・学校カンケイなく、ほとんど一緒に過ごしてきた。
平次ん家の習慣はぜんぶ知ってるし、平次もアタシん家のことは丸ごと分かってる。
そういうのって、良いけど良くないこともある。


たとえば、バレンタイン。やって、もう何回目?


行事という行事、イベントというイベント。
家族ぐるみなら問題ナシ。学校もクリア。皆でわいわい、楽しいもん。
誕生日は...まあ、お互い欲しいモン、リクエストしてるから、需要と供給は一致してる?


けど、バレンタインはちゃうやんか。

「好き」な気持ちを贈る日やん。「トクベツ」を意識してしまうから。他の行事やイベントとは違うもん。


それに、平次は甘いモンが苦手やし、ちっともデリカシくないから。

『オンナは好っきゃのお。バレンタインなん、洋菓子産業に踊らされてるだけやんけ』

思い返せば、たぶん。中学に入ったころから、そう言うようなった。
ぜんっぜん可愛げない発言にカッチン☆


2月になると、なんとなくソワソワすんのは、アタシだけなん?


恵方巻にかぶりついても、頭ン中ではチョコのコト考えてる自分がいる。
雑誌や、テレビで。特集組まれてたら、ついチェック。色黒顔に似合うチョコを見付けたなる。


平次は、どうなん?ソワソワせーへん?
本命とか、義理とか、友チョコやとか。
いろんなコからのチョコ断ってるって、ぶっきらぼうに言ってた。

少し、耳が赤かった。

アタシのチョコも...いらんもん?
ひょっとせんでも、欲しないん?
“幼馴染みのよしみ”とかいうヤツ?


せやから...アタシのんだけ、食べてくれんの?


聞くのはコワいけど。聞けたら、どんなにいいか知れん。
アタシはアタシで、用意したとっておきチョコを平次がホンマに受け取るのかすら分からずに。
ひとり、ドキドキしながらその日を迎える。

ちっちゃい頃は、お父ちゃんと、オッチャンにあげるついでやったかも。
せやけど、好きやって気づいてからは、受け取ってくれるか分からへんくても、せめて、好みのモノをあげたいと。
アホな発言からヒントを拾って、ちゃんとリサーチ!和葉ちゃんは、バレンタインの即席探偵やねんで。



今年はな。
アンタが良く飲むコーヒー牛乳味です。
カフェ・オレちゃうくて、コーヒー牛乳やねんよね、子供みたい。

そんで「なんや冬は腹減る」いうてたから、ひとつひとつのハートに文字を書いて、ぎょーさん箱に詰めてみた。

「遅刻厳禁」「剣道日本一」「無事故無違反」。ちょお画数多くて失敗☆
受け狙いで「UVカット」も書いてみた。
いちおう真剣に「工藤くんが帰ってきますように」って、願掛けみたいや。

でな。一番伝えたくて伝えられない単語を、ハートの山に埋めてみてん。

気づくかな、浪花の高校生探偵サン?

ビター味のチョコは好きや、旨い、言うてたから。
その一粒だけが、ビターチョコ。



「LOVE」



いつか。
伝えたいよ、ちゃんと。

ハッピーバレンタイン。

ホンマにあげたいのは、チョコやなく。
好きやという、たったひとつの、この気持ち。





315.あげる/rewrite20070214
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